Jan,10,2013

エベレスト街道トレッキング上の一番大きな町、ナムチェバザールに着いたのはトレッキングを始めて7日目だった。7日ぶりのホットシャワー、7日ぶりの肉、美味しいパンやコーヒーに興奮したのは言うまでもない。宿にすらWiFiが飛んでいたのには驚いたけど、1分10円というネパールでは破格の値段設定のお陰で手をつけようとする意欲がわかなかったのは助かった。山に来てまでネットサーフィンっていうのは何だか悲しいものね。
とはいってももしFree WiFiだったら、美しい山を前に意味無くネットサーフィンしちゃいそうなわけで、危うく平穏なオフライン生活が過ごせないところだった。


真っ蒼な空、澄み切った空気、透明感のある高地特有の空気が好きでたまらない。

つい2ヶ月前まで標高4,5000mのところを自転車で走っていたとはいえ、今回のトレッキングは緊張していた。
ナムチェバザールは標高約3500mで、それ以降は約2週間も4000m以上の場所で泊まる日々が続く。しかも今回は人生初の5000m以上の土地で寝る日もある。
ひろはケニアのケニア山、北インドのラダック地方と2回も高山病で死にそうになっているし、私もこの夏に人生初、ダイアモックス頼りで過ごした日々があった。
この夏は二人して高山病にはすっかりと惨敗してしまっただけに恐怖感が強い。


ナムチェバザールから真っ赤に燃えるエベレストを望む。近づいてその大きさを体で感じたい!!

慎重に慎重を重ね、ナムチェバザール以降は一日に標高を300m以上あげたところで寝ないようにプランニングをした
そんなに気をつけていたのに、ナムチェバザールで1週間ぶりに食べた肉に当たって、まさかの下痢になってしまった。ただでさえ脱水症状に気をつけなくてはならない高山で、脱水症状になりやすい下痢になってしまったのは致命的だ。
しかもこの4年間でひろは何回か酷い細菌性の下痢になったことがあるのに、私は1回もかからなかった。それなのに何でこの大事なトレッキングでなる?
緊張しすぎたための下痢だったのではないだろうかと疑いたくなるくらいのタイミング。
結局5日間ひどい下痢が続き、最後の一日はパワーがまったく出なくて歩けない状態になって休憩日を設けた。下痢で体が弱ってしまったために高山病の軽い症状も出てきてしまった。これはまずいとダイアモックスのお世話になることを決めて飲み始めたら、これまたびっくり下痢がよくなった。
やっぱり精神的な下痢だったのか??


標高3500mの山の中ででwifi zoneですよ!ってビックリしたけど、5160mの村にもインターネットが繋がっていました。時代です。

今回私たちの行ったエベレスト街道トレッキングは最高地点で標高5545mまで行くものの、登山ではなく素人でも行けるトレッキングルート。
決して誰でもが行ける楽チンルートとは言わないけれども、体力があってそれなりの根性さえあれば誰でも幾つでもトライできるルートだ。
実際、驚くほど年配の方々が多かった。60代は当たり前、70代もざらにいた。
とはいえ、体力に自信があるまだまだ若い私たちでさえ大変だなぁと感じる上りもいくつもあって、感心したし勇気付けられた。

ただ今まで歩いてきたようなトレッキングルートと大きく違う点は、このトレッキングでは死ぬ人もいるということを肌で感じずにはいられなかったところだ。
標高を4000m越えてくると、毎日のように今にも死んでしまいそうなくらい真っ青な顔をした具合の悪い人たちに出会った。
緊急救助のヘリコプターは毎日のように飛んでいたし、目の前で救助要請の電話をかけているのも何度も聞いた。残念なことに私たちのいた間にも日本人トレッカー1人が高山病のために亡くなった。
高山病は怖いと体感して知っていた私たちだったけれども、ここほど高山病が死に近い病気だということに気づかされることはなかった。
気をつけさえすれば死ぬことはない病気だけに、予防をする知識とかかってしまったときに下山する勇気が最重要となる。
予防する知識は知ればいいだけだけれども、下山する勇気は一言では片付けられない難しさがある。


時間に余裕があって、全て自分の都合に合わせて行動できる私たちのタイプのトレッカーですら、
高山病の症状が少し出てきたときに、症状がなかったところまで下ろうかどうか決断するのには勇気がいる。時間も十分にあって、一日低いところで様子を見て上がってくればいいだけ、なのにだ。
言い訳第一としては何を差し置いても面倒くさい。第二としてはひろに悪いな。第三としては明日になればここに居ても良くなるんじゃない?だ。

これが時間に余裕がない人であれば、進まない決断をするイコール諦めることになる。
何年も憧れ続けてはるばるやってきたエベレスト街道トレッキングで、あと1日我慢すれば素晴らしい景色が見れるのだと思った時に、進まない決断を取れるかどうか。
さらにはツアーなどのグループで行動している人が自分の不調だけのために他の人も諦めざるを得なくなってしまったりする場合には更に、進まない決断をするのは難しくなる。
今回はその難題を乗り越えて下山をしてくる勇気ある人たちにも何人か出会った。


目的のゴールに辿り着いたときに、素晴らしい景色に感動したとともに、勇気ある下山した人たちのことを思い出して涙が出た。色々な人々の思いがこの山頂には詰まっている。辿り着いた人、辿り着けなかった人。
目の前に輝くエベレストの頂上を望みながら、そんなセンチメンタルな気持ちになった。
辛いときに踏ん張って頑張りぬくのも強さ。
でも、人生諦めて得る強さもある。
山はいつも大切なことを教えてくれる。



日が当たるとポカポカと温かいけど、この陽気でも洗濯物は一瞬で凍る。


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