Nov,18,2012

私たちの赤裸々な日常をつづったチャリダー日記、スピティ&キヌアールバレー編Vol.2。
今回は、カザ出発から、ピンバレー、ダンカルのゴンパ、タボのゴンパ、ナコ、レコンペオを経てカルパに至るまでの日記です。
なお、GoogleMap、標高プロファイル、距離一覧表、簡単なホテル情報をNotesにまとめてありますので、そちらも参照して下さい。
Click Here!

2012.09.15 Kaza – Gulling – Mudh – Gulling 63km Hotel

アムチ(チベット伝統医学)で処方された薬を飲み始めたらぼこぼこに腫れあがっていた虫さされ跡がすっかり平らに戻ってきた。こんなによく効くのかな?。今日はメインロードを少し外れてピンバレーのMudhに向かう。ピンバレーに入ったところでハンガリアン3人組サイクリストたちと再会。彼らは昨日Mudhの20kmほど手前Gullingに泊って、荷物を置いてMudhまで行ってきたらしい。Gullingの宿がいいと彼らはお勧めしてくれたし、空荷でMudhまで走ったほうが楽だし、Gullingに泊る案に傾いてきた。いざGullingへ行ってみると彼らお勧めの宿はそれほど良さそうな宿ではなかったのだけど、意外とGullingまでの道で疲れてしまってMudhまで荷物をつけて行く気が湧かなくなってしまった。そんなネガティブな理由でGulling泊が決定。さっそく部屋を取り、荷物を置いてMudhへ向かう。あまり天気も良くなかったのもあってMudhへの道はパッとしなかった。Mudhも天気が悪くていまいち。せっかくGullingから往復40kmもかけてやってきたのに残念だったなという気持ちになっていたら、帰りは少しずつ晴れてきてダイナミックな景色を楽しむことができた。同じ道を走って戻っているのに、見える景色がぜんぜん違う。やっぱりアウトドアは天気が命だなぁ。帰る途中に私たちの自転車をヒッチハイクしてきた学生がいた。冗談かと思っていたら本気で「乗せてくれ」という。いやいや荷台の耐重量をオーバーしているから無理なんだけど、ガタガタの未舗装悪路で自転車の荷台に乗ったら君が壊れちゃうよ。丁重に断ったらものすごく残念そうにしていてちょっぴり心が痛んだ。めったに車が通らないのだろうな。
夜ごはんのターリー(インドの定食)はハンガリーボーイズから聞いていたとおり美味しくてボリュームもあって、それでいていつも食べるターリーとちょっと違ったテイストで満足。ちょうど停電でキャンドルディナーになったのもあって、ごちゃごちゃした汚いものも見えず、なんだかちょっとしたレストランで食べている気分になれたのもよかった。(ようこ)
2012.09.16 Gulling – Dhankar 25km Hotel

ピンバレーからメインロードに戻ったところで、インド軍人の自転車エクスペディション軍団に遭遇した。UKサイクリストのニール&ハリエットから聞いていた噂の軍団だ。噂通りちんちくりんなチャリに工事用ヘルメットをかぶり、大勢のサポートメンバーを引き連れ、タックインしたポロシャツ姿の妙な集団だった。ちょうど休憩中だったようで僕らにもチャイやスナックを御馳走してくれた。調子に乗ってブレーキシューの予備を売ってくれないか頼んでみたのだけど、さすがに断られてしまった。
メインルートを数キロ走ると、すぐにダンカル・ゴンパへのショートカットと合流。ダンカル・ゴンパは500mほど登った山の中にあるので、最初は麓の村に泊ってダンカルには空荷で日帰り往復しようと思っていたのだけど、このショートカットの存在をハンガリー人サイクリストたちに教えてもらったこともあって、フルパックのままダンカルまで登ってしまうことにしたのだ。このショートカットの登り道、未舗装路ながら途中までは快適に進めたのだけど、途中で分岐を過ぎてからは岩だらけの道になってしまい2,3kmほど押して歩く羽目になった。でも途中の景色はすばらしくて、やりがいのあるお勧めの道だ。ダンカル・ゴンパは内部こそ大したことがないけど、断崖絶壁のすごいロケーションにある素敵なゴンパだ。よくもまあこんなところに寺を作ったよなあとも思うし、こんなところだからこそ寺を作ったんだろうなと納得もできる。
ダンカルにはもう一つ新しいゴンパがあって、そこに併設されたゲストハウスに泊ることにした。カザでパーミットを取る時に一緒だったオランダ人のミヒルと再会。彼はこの場所が気に入ってもう数日滞在しているという。へ、こんなところで何してるの?と思ったけど、確かにこのダンカル村は落ち着いた空気の流れている気持ちの良い場所だ。近くのお勧めハイキングスポットも教えてもらったので、明日の朝行ってみることにしよう。
今日はイスラエルのニューイヤーだったようで、同宿のイスラエル人からリンゴに蜂蜜をかけたものをおすそ分けしてもらう。ここスピティ&キナールでは出会う旅人の半分以上がイスラエル人なのだけど、スピティで会うイスラエル人はことごとく礼儀正しくてフレンドリーな気持ちの良い人たちが多い。類は友を呼ぶとはよく言ったものだ。(ひろ)
2012.09.17 Dhankar 0km Hotel

今日はダンカル。ツォ(ダンカル湖)で朝日を見るために日の出一時間前に宿を出る。久々の早起きは辛くて、もうあと少しで日の出は諦めて二度寝するところだった。夜は犬たちが騒がしくて、日の出前のハイキングはちょっぴり怖かったのだけど、犬たちはたいして吠えることなく大人しくしてくれてホッ。村人たちは電気をつけっぱなしで寝るのが習慣なのか5時前なのに電気がかなり付いている。夜中はいっそのこと毎晩停電にしちゃったほうが無駄な電気を使わなくて済むのかもしれない。空がだいぶ明るくなってきて、いよいよ朝日という時間ばっちりにダンカル湖に着いた。だけど、残念ながら雲がどっしりと東の空を覆っていて、東の方向に見えるはずの雪山たちもすっぽり隠れてしまっていた。それでもダンカル湖は美しかった。晴れていたらきっと素晴らしい景色に違いないと思うと、今日は延泊して明日もまた見に来たい衝動に駆られる。それだけではなくてこのダンカル湖にはいい気が流れている気がする。ものすごく心地がいい。「もう一泊しちゃおうかね。」と二人でニンマリと頷いた。帰り道、山の上から見えたダンカル村は、まるで周りの山々や谷とトータルコーディネートで設計されたかにみえるくらいかわいらしくパーフェクトに存在していて、見ていて飽きなかった。村の中からの景色よし、雰囲気&居心地よし、俯瞰してよし、と大好きな村になった。
宿に戻るなり雨になり、昼過ぎまで寒い雨が降り続いた。せっかくダンカルを楽しもうと休憩日を設けたのに、寒くて寝袋にもぐりっぱなしの午前中になってしまった。夕方からは徐々に天気も回復してきたので、ゴンパ近くの岩に登って周りの景色や村の景色を楽しむ。やっぱりここにはいい気が流れている。幸せな気持ちでいっぱいになった。明日の朝は晴れてくれますように!!(ようこ)
2012.09.18 Dhankar – Tabo 29km Hotel

今日も夜明け前に起きてダンカル・ツォへ。昨日よりは天気は良かったけど今朝は風が強くて湖面が波だってしまったのが残念だ。でも今朝は湖からさらに登った高台から見るダンカル村とその先に広がるピンバレーの風景が、朝の優しい光に照らされて際立って美しかった。ダンカル、やっぱりいいところだ。ゆっくり朝食を食べてから出発。下り道のダンカルの風景も素晴らしかった。ここまで頑張って荷物を持って登ってきてよかった。
今日はタボのゴンパまで30km弱の楽な道のりだ。朝は天気が良かったのに午後からまた天気が悪くなってきて、夕方には強風が吹き荒れてプチ嵐が到来した。なんか本当に変な天気だ。タボのゴンパは、見かけこそ黄土色の土の塊でできた貧しい家みたいでぱっとしないのだけど、内部は息をのむほど素晴らしいスペシャルな空間だった。お坊さん同伴で少しせかされるように見て回らないといけないのが残念だけど、これは万難を排して訪れてほしい超絶空間の一つだ。ちなみに写真撮影禁止なので内部の写真はありません。(ひろ)
2012.09.19 Tabo – Nako 59km Hotel

昨日のプチ嵐で山に雪が積もった。村の入り口の食堂で朝食を食べていたらカザで出会ったスペイン人サイクリストのジョルディ&ジョルディと再会。UKサイクリストのニールとハリエットはもう先に進んでいると教えてもらう。相変わらず速い人たちだなぁ。
タボを出てすぐにロシア人サイクリストに会う。驚くほど英語が通じない人たちだったので、ほとんど覚えていないロシア語を片言でしゃべったら喜ばれた。あんなに喋れなくて旅できるのだろうかと思ったけど、アラブ圏やロシア圏での私たちは彼らの英語よりももっと現地の言葉を喋れなかったけでなんとか旅ができていたので、まあ大丈夫なんだろう。でも他の旅人たちとコミュニケーションがとれないのは寂しいよなぁ。
スムドには入域許可書のチェックポストがある。もうここから数キロでチベットなのだ。チェックポストの壁にescaped tourits listと書いた紙が張ってあって、明らかに観光客っぽい十数人のいろいろな国籍の人たちの名前が書いてあった。いや、まさか脱走した外国人なんてそうそういないでしょ。許可書をチェックし忘れただけとかだと思うのだけど。
ランチ後から登りが始まった。今日の登りは標高約800m分。登りは一日の前半にあるほうが楽でいい。午後はどうしても疲れてくるし、風も強くなることが多い。今日も強い向かい風にあう。ナコへの道は昔はもう少し下の方を通っていたのだけれど、Malling Slideという有名な土砂崩れスポットがあって、度重なる土砂崩れのために道を上の方に作りなおしたらしい。今でも同じところが原因でよく土砂崩れが起きるのだけど、道が上になってからは崩れ方がマシなのだろう。上を通る道ができるまではスムドからナコへの道はインド一危ない道の一つだったようで、確かに上からかすかに見える旧道は道幅も狭く、もちろん未舗装で、崖っぷちに危なっかしく造られてるように見えた。
ナコは可愛らしい村ですっかり気に入ってしまった。宿のベランダからの景色も雪山がどーんと見えて素晴らしいし、村は迷路のように路地が入り組んでいて、50mも歩けばマニ石が積んであって、小さなマニ車がところどころに配置してある。軒先には色とりどりの花の植木鉢が可愛らしく並んでいて、タルチョ(祈り旗)とともに村を素敵に彩っている。観光客には慣れている村人たちも、挨拶をすると元気よく挨拶を返してくれて気持ちがいい。ダンカル村が北インド・チベット圏で一番素敵だ!とつい最近思ったばかりだったけど、ナコ村も素敵でどちらも譲りがたい。さっそく明日もナコに泊っちゃう?と二人で悩みだす。最近なんだか延泊が多いものな。どうしたものだか。(ようこ)
2012.09.20 Nako 0km Hotel

今日は朝から晴天だ。早朝、村の中を散歩していたらますますこの村が気に入ったので、あっさりと延泊決定。散歩の後はスペイン人サイクリストのジョルディ&ジョルディと一緒に村の入り口にあるダーバへ朝食を食べに行く。Wジョルディはすごく明るくてすごく気のいい、想像するスペイン人がそのまま現実世界に飛び出してきたような爽やかナイスガイだった。
Wジョルディの出発を見送った後は、さっそくチョルテン(仏塔)が立ち並ぶ裏山へ。青い空と雪山のコントラストが美しい。こういう景色を見れるのももうすぐ終わりかと思うと無性にさみしくなる。チョルテン付近でのんびりした後は、別の裏山に見えていた峠を目指して再び歩き出す。1時間ほどで到着した峠からは、チベット本土の雪山がずらりと連なる荘厳な風景を見ることができた。チベット難民たちはあんなすさまじいところを越えてインドに亡命してきたのかと思うと、なんだかいろいろと考えてしまう。
午後、宿に戻って休憩していたらにわかに村が騒がしくなってきた。どうやら今日は結婚式があるようで、チベットの伝統衣装を着た人たちが広場に集まってきて、祈りのダンスを捧げ始めた。村人たちも全員がおしゃれして集まって楽しそうにそれを眺めているし、踊り子たちも気さくに写真撮影に応じてくれるし、なんだか幸せに包まれた素敵な空間だ。今晩は20分ほど歩いた隣村でパーティーがあるらしい。花婿がナコ出身で、今日は隣村出身の花嫁を迎えに行って隣村でパーティー、明日は花嫁と一緒に戻ってきてナコでパーティーがあるようだ。ツーリストも大歓迎よと言ってくれたので、お言葉に甘えてパーティーに出席することにした。
パーティー会場には300~400人が集まっていて、その全員にお茶やお酒や食事が振る舞われていた。僕らも早速おこぼれにあずかる。実は30分ほど前にターリーを気持ち悪くなるくらい食べたばかりだったのだけど、みんなが歓待してくれるのでご飯いらないと言える雰囲気じゃなかったし、一口食べてみたらとても美味しかったので、結局丸々一皿を平らげてしまった。我ながら底なしの胃袋に恐ろしくなる。その後、何かイベントが始まるのをじっと待つこと数時間。ようやく伝統衣装を着たお祈り隊が花婿たちとともに登場してきた。そして出席者によるプレゼントの贈呈式があり、お祈り隊が10分ほどお祈りダンスをしたら、あとは無礼講となって音楽に合わせて村人たちが踊り出す、というなんともアバウトなパーティーだった。でも村人たちはこの一大イベントをすごく楽しんでいる様子で、その幸せな様子を感じられただけでもだけでも見れてよかった。夜、ナコへの帰り道は満点の星空だった。(ひろ)
2012.09.21 Nako 0km Hotel

今日はナコでパーティーがある日だ。きっと昨日とさして変わらないパーティーが行われるのだろうけど、昼間の用意なども見てみたいし、せっかくだからもう1泊することに決めた。その分明日は頑張ってレコンペオまで一気に走っちゃえばいいのだ。なんだかんだでナコに3泊目。スピティバレーは全然進まない。
昼は村人総出でパーティー料理の用意をしていた。おばちゃんたちはパタパタと手際よくチャパティを焼いている。ちょっと手伝わせてもらったら、おばちゃんたちはあんなに簡単そうに作っているのにチャパティを上手にまるく仕上げられない。おばちゃんたちも「そんなんじゃぁ嫁に行けんよ」という顔をする。野菜を刻む人、メインのカレーを作る人、スナック菓子を作る人、働く人々のための昼ごはんを作る人と現場はバタバタしている。花婿側としても昨日の花嫁側のパーティーに負けてはならないというメンツもあるのだろう。
夕方、部屋の目の前から聞きなれた声がすると思って部屋を飛び出したら、やっぱりUKガールズたちだった。夜は彼女たちと結婚パーティーへ。彼女たちもヘトヘトだったし、私たちも今日は踊りが始まる前にはおいとましようと決めていたのでご飯をいただいたら退散した。会場が宿の目の前で、しかも野外だったのもあって、夜中絶好調にうるさくてほとんど寝れず。まぁ、お祝い事だものね、仕方がない。(ようこ)
2012.09.22 Nako – Rekong Peo 92km Hotel

さあ今日こそ出発、と荷物を下ろしていたら、自転車にくくりつけていた荷物紐がなくなっていることに気がつく。UKガールズの一人が「私予備があるからあげるわ」と言ってくれたのだけど、しばらくして戻ってきた彼女は「私の紐もないのよね・・・」と困った表情で戻ってきた。北インドは体感的な治安は良いのだけど、こういう細かいコソ泥が多くて困ってしまう。チャリダーの皆さんは気を抜かず、サイクルメーターとか紐とかボトルといった細かいものまでちゃんと管理をしましょう。幸い、近くにいたイスラエル人たちが自分の縄を半分切ってくれたので、それで荷物をくくりつけて出発することができた。
気を取り直して出発。前半は断崖絶壁の下り道を1000mほどガンガン降りていく。スピローの街まで走ったところで遅い昼食休憩をとる。この街には食堂や宿があるので泊ることもできたけど、まだ夕暮れまで時間があるので一気にレコンペオまで走りきることにした。風景は単調でいまいちなのに、午後になると向かい風が強くなってきたし、レコンペオは街道沿いから離れて数百m登ったところにあるのでなかなか大変な一日だったけど、なんとか走りきって夕方までにはレコンペオに到着。この街はキナール地方の中心となる比較的大きな街なのだけど、いかにもインドの街といった風でワサワサというよりゴミゴミしている。デリーを除くとこういうインド風の街は初めてなので何だか別の国に来たような感じがして戸惑ってしまう。夜になると突然体がだるく、頭が重くなってきた。季節の変わり目に加えて、標高や湿度といった環境の変化が激しいので風邪をひいてしまったのだろうか。(ひろ)
2012.09.23 Rekong Peo – Kalpa 5km Hotel

今日はレコンペオから5km先のカルパまで。たった5kmなのだけど460mアップの登り道。香りのいい松の木の間から迫力のあるキナールカイラス・レンジが見えて気持ちがいい道だ。途中りんごが美味しそうにたくさん生っていて、誰かくれないかなぁなんてもの欲しそうに見ながら走っていたら、野良仕事の休憩中のおばちゃんたちがブドウをくれた。ブドウの木なんてどこにもなかったのだけどな。甘酸っぱくて美味しくて、お礼をいっぱい言って去ろうと思ったらさらに両手いっぱいにくれた。ありがとう!!
カルパはペオと5kmしか離れていないのが嘘みたいに静か。山が間近に見えるのもよかったのだけど、日中は逆光でよく見えない。夕方のほうがもっと綺麗だろうと期待していたのだけど、楽しみの夕日タイムにはすっかりと雲の中に隠れてしまって残念。今日もひろの体調が良くないので、八百屋が近くにあったので自炊して野菜をいっぱい取ることにした。こういう時は自炊セットの存在がありがたい。(ようこ)

yokoandhiro | Diary, Spiti & Kinnaur
© yokoandhiro All rights Reserved. | 管理者ページ