Nov,15,2012

私たちの赤裸々な日常をつづったチャリダー日記、スピティ&キヌアールバレー編Vol.1。
今回は、ケーロン出発から、チャンドラタルを経て、カザに至るまでの日記です。
なお、GoogleMap、標高プロファイル、距離一覧表、簡単なホテル情報をNotesにまとめてありますので、そちらも参照して下さい。
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2012.09.07 Keylong – Chhatru 62km Camp

昨晩、ザンスカールで出会ったフランス人のサイモンと再会し、サイモンの友人でダラムシャーラ出身のチベット人プントゥクと4人で酒盛りをする。久しぶりのハードリカーなのに空きっ腹のままウォッカをぐいぐいと飲んでしまい、気付いたら泥酔。自分の部屋に上着を取りに帰ったまま帰らぬ人になってしまった。サイモンにもプントゥクともお別れの挨拶くらいしておきたかったのに。ひろは昨晩は大丈夫だったけど、今朝になると二日酔いでつらそうだ。とはいえケーロンには3泊もしたので出発を延期するわけにもいかず、バファリンを飲んで無理やり出発。可哀そうなひろ。
二人ともどんよりだったけど、今日は天気はやけに爽やか。ケーロンは標高3000mほどしかないのだけど、顎をぐんとあげて見上げるような立派な山々に囲まれている素晴らしいロケーションだ。ケーロンではひたすらダラっとしていただけだったので、そんな事も街を出る日にようやく気がついた。人が穏やかで柔らかくって、緑がモリモリしていて、いい村だったな、ケーロン。
Gramphooからレー・マナリーロードを離れてスピティバレーに入った。分岐に入ってすぐの景色が緑が生き生きしていて眩しかった。緑と水にあふれた美しい谷が目の前に広がってくる。ずっと荒涼とした岩山続きだったので緑の眩しさが新鮮。瑞々しいのも嬉しいのだけど、道路にまで水があふれ出していて、徒渉が面倒くさくってたまらない。次第に天気も悪くなる中、夕方遅くに到着したchhatruには数軒のダーバとキャンプサイトがあった。芝のキャンプサイトはありがたいけどトイレがないのは困る。集落共同でいいからトイレは作って欲しい。夜は雨が結構降った。(ようこ)
2012.09.08 Chhatru – Batal 31km Camp

雨は朝まで降り続いた。出発時間までに雨が上がったものの、相変わらず空はどんよりとしている。晴れていたらどれだけ綺麗な景色が見えるのだろうと想像するとなんだかやるせない。
石ころだらけの未舗装路をちんたら登っていく。途中には何度も川渡りがあって、その度に靴を脱いだりバッグを外したりしないといけないので、全然前に進まないし、いちいち面倒臭くてしょうがない。午前中いっぱいかけてようやく約17kmを走り、Chhota daraに到着。家が数軒あるだけの村とも言えないような場所にぽつんと政府経営のレストハウスがあって、そこでマギー(インスタントヌードル)を作ってもらった。この寒空で温かいものを作ってもらえるのは本当にありがたい。それにしても誰がこんなところに泊るんだろうか?
昼食後はますます道が悪くなり、ますます天気も悪くなる。強い追い風が吹いていたのが不幸中の幸いだ。結局Batalまでの約31kmに5時間半近くかかった。体感的にはそこまでひどい道という感じはしなかったのだけど、こうやって数字を見返すとやっぱり大変な道だったんだなあとしみじみ思ってしまう。Batalにはダーバが数軒あるだけでホテルはないので(政府のレストハウスらしきものを建設中だった)、ダーバの隣(橋のたもと)にテントを張らせてもらうことにした。ダーバのご飯はボチボチだったけど、ホッコリ素敵な家族が経営していて心がなごむ。それにしても最近雨ばかりだ。明日は晴れますように。(ひろ)
2012.09.09 Batal – Chandra Tal 13km Camp

朝から天気が悪い。最初の予定ではChandra Tal(チャンドラタル湖)に寄り道しようと思っていたのだけど、往復26kmの悪路の寄り道は正直面倒臭くて、天気が悪いのを言い訳にして一旦は行くのを止めよういうことになった。でも朝食を食べていると少しずつ青空が見え始めてきた。天気が回復してきているってことは、やっぱり「行け」ということなのだろうと解釈して、今日はチャンドラタルへ行くことに。
チャンドラタルへの道は確かに未舗装ではあったものの、昨日のチャトゥル‐バタル間よりははるかにマシな道だったし、チャンドラ川沿いの道は静かで美しかった。この道はチャンドラタル湖が全く見えない、「え?ここ?」ってところで終っていて、キャンプサイトも道の終点の微妙な場所にあったものだからかなりがっかりしたのだけど、キャンプサイトの管理人に聞いてみると、湖畔はキャンプは禁止だけど湖から離れた高台ならテントを張ってもいいよと言うので、さらに少し奥まで自転車を押していった。奥の高台には素晴らしいキャンプスポットがあって、誰もいない絶景な場所に我が家を建てた。チャンドラタル湖そのものはあまり印象的ではなかったのだけれども、絵から飛び出してきたような氷河と雪山、カラフルな岩山にぐるっと囲まれて静かで幸せな二人の時間を過ごした。日が沈んだら驚くほど寒くなったのは想定外だったけれども。(ようこ)
2012.09.10 Chandra Tal – Kunzun La – Losar 34km Hotel

昨晩はおそろしく寒かった。吹きさらしの高台にテントを張った事もあって、ダウンジャケット、レインジャケット、寝袋カバーと持っているものを全て使ってもなかなか温まらず、かなり寝つきが悪かった。この旅で一、二を争う寒い夜だったんじゃないだろうか。そんな極寒の夜を越えて迎えた朝は見事な快晴。くるりと雪山に囲まれたキャンプ地は見事というしかないくらい美しくて、朝から幸せな気分になる。寒くてもこの高台にキャンプを張ってよかった。
朝食を食べた後、昨日通ってきた同じ道を戻る。同じ道でも晴れていると違った風に見えて気持ちがいい。気持ちよく走っていたのもつかの間、なんだかブレーキの度に異音がするなあと思って見てみると、ブレーキシューがすり減りすぎて金属部分が露出しており、それがリムを傷つけていた。最近の悪天候と川渡り続きで一気にゴムがすり減ってしまったようだ。あわてて2台のブレーキ合計4組をチェックすると全部が瀕死状態。残るスペアは2組、これはなかなかどうして大問題じゃないか。
応急処置をして自転車を再び漕ぎ出す。メインロードに戻った後はKunzun La峠に向けて地味な登りが続く。道中は氷河や雪山が見えて素晴らしい風景の登りだった。峠の頂上は大量のタルチョがたなびき、チョルテンが立ち並んでいて、その背景に雪山&氷河が連なる絶景ポイントだ。これが最後の4000m級の峠になると思うと感慨もひとしお。さあご褒美だ!とレーから大事に持ってきたツナ缶を開けたら、見かけも味も変になっていたので捨てることになってしまった。断腸の思いとはこのことだ。あーずっと重いのを我慢して持ってきたのに。
これから下り道な訳だけど、ブレーキシューがもつのか心配だったので、ブレーキシューを左右上下逆さにして、まだゴムが残っている部分を無理やり使うことにする。チャリ屋に説教されそうなめちゃくちゃなブレーキの付け方だけど緊急事態だからしょうがない。これで何とかもちますように。そして始まった下り坂、この風景もまた素晴らしい。アルゼンチンのプルママルカ周辺をさらにワイルドにしたようなカラフルな岩山が続いていた。ちなみに道は相変わらずデコボコで、下りなのに全然スピードが出せないし、とにかく体中が痛い。首なんてむちうち症の一歩手前なんじゃないかというくらい痛い。この日の夜は腕や首が痛すぎて寝つきが悪かった。(ひろ)
2012.09.11 Losar – Kaza 56km Hotel

朝起きても体中が痛い。昨日は思いのほか疲れていたみたいだ。今日の道も十分に気持ちがいい道なのだけど、昨日ほどの感動はない。こなすようにガンガン飛ばす。今日はスピティバレーで一番の大都会カザに着くのだ。都会といっても村レベルなのだろうけど、それでも今日はいつもと違うものが食べられるかもしれないと思うとテンションがあがる。カザは思いのほか大きな町で、オールドカザの中心はワサワサしたマーケットになっていた。ラダックに比べるとインドテイストが濃くなってきた気がする。久々のホットシャワーを浴びて、洗濯をして、テントを乾かして、冷たいビールを飲んで、「ほー」と都会を満喫していたら停電になってしまった。せっかく街に来たっていうのに、結局夜中電気は戻らず町は真っ暗。星がきれいだったけど、真っ暗の中することもなくて、テント生活のごとく8時にはベッドへ。(ようこ)
2012.09.12 Kaza 0km Hotel

朝、ようこのおなか周りがダニ?に刺されてボコボコに腫れていた。昨晩は日当たりのいいベッドで寝たのに。ひょっとしたら一昨日のロサールでやられたのかもしれない。相変わらず僕は無傷だというのに、ようこは可哀そうな体質だ。朝から宿を移動することにして、ガイドブックに載っていた宿に行ってみたらUKガールズたちと再会。カザフスタンからキルギス、中国、パキスタンを経由してここまで走ってきた4人組のパワフルガールズだ。彼女たちとはケーロンで最初に会ったのだけど、スピティバレー走行中は抜きつ抜かれつを繰り返し、何度も再会することになる(彼女たちのブログはこちら)。部屋もこざっぱりと清潔にしてあったのでさっそく移動して、屋上で天日干し大会を開催する。
午後は町一番(というか唯一)のカフェ、ジャーマンベーカリーでケーキを食べたりコーヒーを飲んだり、停電の合間を縫ってメールをチェックしたり、洗濯したり、とのんびり過ごす。ケーキなんて昨日と今日だけで5つも食べた。ずっとターリー(米&豆の定食)ばかり食べ続けてきただけに、ちょっとバリエーションのあるメニューを発見するとうれしくてしょうがない。しかもこれだけ食べても罪悪感を感じずに済むのが、毎日運動しまくっているチャリダーの特権かもしれない。
夜はUKガールズ4人、僕ら2人、ハンガリー人3名という合計9人のチャリダーが大集合。さらに2人のイタリア人クライマーを加えた合計11人で夕食へ。11人も集まると話が散漫になるし食事は1時間以上出てこないしで、なかなか大変だ。(ひろ)
2012.09.13 Kaza 0km Hotel

Ki Gompaへ自転車で行く。ハンガリー男子3人とUKガールズ4人に一緒に行かないかと誘われたけど、団体行動が苦手な私たちは後で行くと断った。キーゴンパは対岸から見たら素晴らしいロケーションでよい雰囲気だったけれども、実際行ってみると大したことはなかった。古くて素晴らしいタンカ(仏画)がたくさん壁にかかっていたのだけど、なにせ高いところにかかっていてさっぱり見えないのが残念だった。これらをゆっくり見ることができたらよかったのに。ゴンパのティーハウスでハンガリーボーイズ&UKガールズとお茶をして帰る。ヨーロッパ人はみんな日光浴が大好きで、日焼け止めを体中に塗りまくりながら太陽がガンガン照っているところに喜んで座る。暑いったらなんの。すっかりのぼせてしまったよ。
帰りがけにカザから先を走るのに必要になるパーミット(許可証)を取っていく。無料だと聞いていたのだけれど、手数料とかなんとかいって一人20ルピー取られた。たかだか30円なので別にいいのだけど、ちょっとおちょくってみたくなって、ひろが「レシートは出るのか?」などと少し反抗してみると「いやいやこれは私がもらうお金じゃない、用紙代だ。」とか言って大慌てしていた。今日はこのお金でビールでも飲むんでしょう。
太陽にあたりすぎたのか、おなかが空きすぎたたのか、何が原因かよくわからないのだけど、貧血のように目の前が黄色くなってクラクラしてきたので午後は休憩。普段あまり貧血体質ではないのだけれど、チベットやペルーでもときどき今日のような症状が出た。高地にいると貧血になりやすいのかな?夜になっても調子が戻らないので、明日も念のため休憩することにした。(ようこ)
2012.09.14 Kaza 0km Hotel

お昼は宿の屋上でUKガールズたちとピクニック。野菜たっぷりの優しい味のスープをようこが作り、ガールズたちがパンやヤクチーズを買ってきてくれた。ヤクのチーズ、どれだけクセのある味なのかと恐る恐る食べてみたら、意外なことにとっても美味しくてびっくりだ。
今泊っている宿はアムチ(チベットの伝統的医療)も兼ねているので、ようこがオーナー兼医者から虫さされに効く薬をもらってきた。小型の正露丸みたいな不味い薬をバリバリと噛み砕いて食べていた。良薬口に苦しだ。でもこの薬を飲み始めてから急速に虫さされの跡が引いてきた気がする。
夕方、ザンスカールですれ違ったUKサイクリストカップル、ニール&ハリエットと再会して夕食を一緒に食べに行く。彼らはPikes on Bikesという、南米アンデスのチャリルート情報を検索すると必ず引っかかる有名ブログの人たちだ。南米でもかなりハードでマイナーなルートを走っていたけど、ここ北インドではさらに意味不明な超ハード&超マイナールートを走ったりトレッキングしたりしてここまで辿り着いていた。いったいそういうマイナールートはどうやってリサーチするんだろうか。(ひろ)

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