Jul,12,2013

私たちの赤裸々な日常をつづったチャリダー日記の最終回、スペイン巡礼編。
今回は、サラマンカから、巡礼路(Via de la Plata)を経由して、最終目的地サンティアゴ・デ・コンポステーラに到着するまでの日記です。
なお、GoogleMap、標高プロファイル、距離一覧表、簡単なホテル情報をNotesにまとめてありますので、そちらも参照して下さい。→Click Here!

2013.06.05 Salamanca – Zamora 64km Alberge

朝一番で6月16日マドリッド発のトルコ航空関西行きのチケットを購入。これで日本帰国の日が決まった。寂しいような、すっきりしたような。寂しいと言っても実はまだ本帰国ではなくて、一旦関西に降り立っておばあちゃんちを訪れた後、最後のバケーションとしてタイのビーチに行くつもりなので、まだ本当の終わりではないのだけど。それにしても私たちの旅はトルコに始まりトルコに終わる。今回はイスタンブールでは乗換えだけで滞在はしないのだけれども、それでも数ある航空会社の中でまさかトルコ航空を利用して帰国することになるとは思ってもみなかった。きっと私たちに縁のある国なのだろう。
今日からは巡礼路をたどる。巡礼路には貝殻と黄色の矢印がついていて、マークを探しながら走ることになる。なんと最初からそのマークを見落としてしまったようで結局普通の道路から次の村に入り、通りすがりのおばちゃんに訪ねて巡礼路にやっと導かれた。未舗装の巡礼路は道路のすぐ傍を通っているものの、道路からの景色とはだいぶ違って気持ちがいい。ところどころにある黄色い矢印を探しながらの走行はオリエンテーリングみたいで楽しい。でもちょっと気を抜いてしゃべっていたりするとマークを見逃してしまうから集中して回りを見ておかなきゃいけないのは結構大変だった。
サモラのインフォメーションで地図をもらったり近隣のキャンプ場を調べてもらっていたら、スペイン人とフランス人のカップル、ヨナタン&モニックが話しかけてくれて、インフォの前に座り込んでしばらく話し込む。彼らも自転車旅が好きなようで、私たちの自転車Surlyを見て嬉しくなって話しかけたんだと言っていた。ヨナタンたちはここ100kmほど離れた街に住んでいるのだけど彼の実家はサモラで、すぐそこにお父さん経営の本屋さんがあるからと連れて行ってもらう。150年続く小さな本屋さんは、画集や写真集から小説、地図やガイドブックまでが歴史ある本棚に並んでいて素敵な雰囲気。お客さんが入れ替わり立ち替わり入ってくる人気のお店のようで、ヨナタンのパパは忙しそうだった。
ヨナタンとモニックに美味しそうな生ハムの塊と窯焼きパン、チーズをプレゼントにいただいたので、美味しいとお勧めされたワインを自分たちに買うついでに彼らにもプレゼント。このワインは製造者が毎日バイオリンを弾いて聞かせて寝かせているとのことで、飲むのが楽しみだ。
色々と話し込んでいたらすっかりと夕方になってしまったので、今日はもう少し先に進むつもりだったけどこの町のアルベルゲ(巡礼宿)に泊まることに。初の巡礼宿は寄付制で、6人ドミトリーの部屋にバストイレが付いている綺麗な宿だった。宿に入ってすぐヨナタンとモニックが宿を訪れてきて、やっぱり夕食も一緒に食べようということに。巡礼宿は門限が22時と高校生もびっくりの早さなので時計を気にしながらのバル巡り。地元の人に連れて行ってもらうバル巡りは楽しい。いっぱいお喋りして食べて飲んで、駆け足でぎりぎり1分前に宿に戻った。素敵な出会いに感謝。(ようこ)
2013.06.06 Zamora – Near Mahide 75km Bushcamp

アルベルゲ(巡礼宿)は朝6時半朝食、朝8時チェックアウトという健康的なスケジュールで、原則として連泊はできない。今日は街を出る前に数日分の食事を買い出ししないといけないので、朝8時に宿を出た後は近くのカフェでスーパーマーケットが開くまで時間を潰す。アルベルゲはありがたい存在なのだけど、今の僕らは巡礼者みんなでワイワイ合宿的な旅はしたくないし、なにかと制約があるのが難点で(そもそもホテルじゃないのだから当然なのだけど)、やっぱりテント泊のほうが断然気楽だ。
巡礼スタート2日目にしてさっそく決められた巡礼路を離れ、昨日モニクたちにお勧めされたマイナールートを通る。景色は期待していたほどでもなかったけれど、車が少ない快適な舗装路なので気持ち良く走ることができた。途中通過する村々は人の気配が全くしなくて廃村みたい。一応雑貨店、バル、薬局が存在しているのだけど、開店休業(または本当に休業)状態。スペインの過疎問題も深刻そうだ。
今日はもう少し進むとキャンプ場があるという事前情報があったのだけど、せっかく人もまばらでのどかなエリアだからと、久しぶりに野宿をすることにした。何箇所か野宿地を見て回っていたら、道路から見えなくて、しかも小川のほとりの牧草地という最高のブッシュキャンプ地を発見。しばらくゴロゴロしていたら土地のオーナーと思しきおばちゃんが羊を引き連れて登場したけど、少し世間話をしたら「ここで寝るの?物好きね、全然構わないわよ」と言ってくれたので一安心。
夕食はモニクたちお勧めのワインに、二人からプレゼントされたパン&チーズ&生ハム。草原にマットを引いて広い空の下で食べる食事は、言葉にならない。こんな時間が永遠に続けばいいと思うくらい幸せな夕食だった。(ひろ)
2013.06.07 Near Mahide – Puebla de Sanabria 47km Campsite

昨日の夜は犬の鳴き声のような遠吠えがよく聞こえた。この辺はオオカミが多いということだし、オオカミだったのかな。心地のよい夜だった。今日もモニックたちのお勧めの道を辿る。ミシュラン地図にも載っていないようなマイナーな道なのだけど、かろうじて舗装路。車は1,2台くらいしか通らなくて走りやすくていい。今日もまた小さな村々を通り、結構登って下って、また登る。気持ちがいい山道なのだけど絶景とまではいかない。やっぱりヨーロッパにはヒマラヤのような、アンデスのような、心が震える景色はないのかなとがっかりするとともに、すっかりと贅沢になってしまったなと反省もする。風が冷たくて寒い。
到着したサナブリアの町はシエスタの最中で街が死んだように静か。かろうじて時間外でも開いていた商店でビールを買いグビリと喉をうるおしてからキャンプ場へ。この街にも巡礼宿があって、料金もキャンプ場と同じくらいなのだけど、私たちはより自由なキャンプ場の方を選ぶ。キャンプ場は無駄に下った川のほとりにあった。後で買い出しに行くのにまた登らないといけないのかとブルーになる。キャンプ場から街まで登って、また街を下ったところにスーパーとガススタンドがある。川に小さな橋でもあればすぐなんだけどなぁ。ヨナタン&モニックがこのあたりのアリステ牛は絶品なんだとお勧めしていたので、小さなスーパーの肉売り場で買ってみた。うまーい!!かなり旨くて興奮。(ようこ)
2013.06.08 Puebla de Sanabria 0km Campsite

ゴールのサンティアゴには晴れた日に到着したいので、その天気待ちを兼ねて今日は休憩日。近くにある湖に日帰りで行こうかと思っていたのだけど、朝からの曇天にぐずぐずと躊躇しているうち結局行かずじまいで、スーパーに買い出しへ行った以外は一日中キャンプ場でヨガをしたりブログを書いたりしてのんびり過ごす。キャンプ場で丸一日のんびりと過ごすのはこれが最後になりそうだ。ヨーロッパのキャンプ場生活は楽しかったなあ。(ひろ)
2013.06.09 Puebla de Sanabria – Near A Gudina 42km Bushcamp

ここからはすべて巡礼路を進もうと意気込む。初っ端から結構ドロドロの道や小川があって苦戦したけれども、これはまだまだ序の口だった。途中から巡礼の道表示があえてカミノ(未舗装)とカラテラ(道路)という風に分かれた。初めて見るサインだったのだけど、今日からはカミノで進もうと意気込んだばかりだし、あまり疑問も抱かずカミノに進む。しばらくすると本格的な山道になってきて、自転車を押すどころか引っ張って持ち上げないと進めなくなってきた。自転車は重いし、足元は石やら泥やらで思うように進めない。歩く巡礼者が涼しい顔をして登っていく。歩きでは全然きつい登りではないのだけれども、重荷を積んだ自転車ではかなり地獄。腕も腰も足も痛い。それでも山道に入ってしまったので、もう引き返すこともできない。息を切らしながら、時に息を気合を入れて吐き出しながら進む。腰が痛くて顔が歪む。最近腰が痛いひろにとってはもっと辛かったに違いない。「ファイトー一発!!」とか「フウォー」叫ぶと力が入る。叫ばないと登れないくらいの山道だった。
無事峠1つめをクリア。2つめは絶対にカラテラに入ろうと一つ目の峠を登っているときに誓った、のに何を思ったか2つ目もカミノへ突入。まじで辛い。辛いんだけど、もうこれで最後の峠だと歯を食いしばって登る。ところどころどんなに叫んで力を入れても登れないところもあって、ひろと二人でひとつの自転車を協力し合って持ち上げる。そのうち、なんかこんな共同作業もいいものよねなんて思えてくるんだから人間は変態だ。
頂上からは舗装路で滑るように下る。まるで雪の上を滑っているように快感、最高。疲れすぎていて巡礼宿のドミトリーで寝るのが嫌だったので野宿場を探す。低いブッシュに囲まれた地面が若干ぼこぼこの場所だったけれども、二人ともあまりに疲れ果てていて泥のように眠った。こんなにも疲労困憊したのはいったいいつ以来だろう。もうすぐ旅が終わると思うと、こんなことがあってもいいかなと思ってしまったりもする。(ようこ)
2013.06.10 Near A Gudina – Allariz 93km Campsite

今日は再び貝殻矢印(巡礼路を示すサイン)を無視して舗装路を突き進むことにした。昨日の未舗装峠越えは無駄だったことになるけど、昨日は無意味に満足感で満ち溢れていた一日になったのでまあいいか。
いったん500mほど大きく下って谷間の街VERINへ。ここから巡礼路は二つに分かれるのだけど、僕らは少し遠回りだが舗装路が多いというルートを選択。VERINのインフォでこの辺りの地図と巡礼スタンプをもらった後、再びちんたらと峠を登り始める。この辺りは舗装路を走っている限り、簡単だけど特別印象に残らない風景が多い。やっぱり無理矢理でも巡礼路に従ったほうが楽しいんだろうか。でも巡礼路を全て走りきるには僕らは荷物が多ぎて思った以上に大変だ。単なる未舗装路なら問題ないのだけど、たまに岩だらけの山道とか階段とかがあるのが困る。巡礼路を走破する予定ならとにかく軽量装備で来るべきなのだろう。
今日はオーレンセまで行こうと思っていたのだけど、舗装路でもけっこうアップダウンがあって予想より時間がかかってしまったので、オーレンセの手前Allarizにあったキャンプ場で終了することにした。キャンプ場は僕らを合わせて客が3組だけと相変わらず閑散としていた。着くなり早速昨日の山道でドロドロになった自転車をきれいに掃除してやって大満足。まあ巡礼路を走る限りはすぐに汚れるんだろうけど。(ひろ)
2013.06.11 Allariz – Lalin 85km Alberge

オーレンセは思いのほか大きな街だったので泊らなくてよかった。オーレンセの付近をアップダウンしてくるくる回る。標識どおりに走っているだけなので、いったい自分がどの方向に向かって走っているのか分からなくなる。そこから暑い中かなりのぼる。おとといの未舗装の峠道を越えきったあとは楽チンでサンティアゴ到着の予定だったのだけど、現実は甘くなく、毎日かなりのアップダウンで舗装路とはいえ結構大変。
CEA(セア)で昼ごはん。シンプルなサンドイッチだったのだけどパンが美味しくて満足。そういえばところどころににPan de Ceaという看板があったのだけど、セアはパンで有名なようだ。大満足してお会計をしてみたら相場の倍近くの値段で驚く。こんな田舎でバルセロナ並みの料金を取るなんてぼったくりだ。巡礼ルートはどうも商売気が強い。
今日はキャンプ場は遠そうなので野宿場を探しながら走ったけれども見つからなかったので巡礼宿に泊まることにした。数年前までは一人3ユーロだったところを今は6ユーロということで少し高く感じたけど、ヨーロッパで6ユーロで泊まれるのだもの、文句は言えない。屋内にも屋外にもテントが張れそうなくらい大きな宿で、思わず料金は同じでいいからテントを張りたいなぁと思ってしまう。ドミトリーは苦手。立派なキッチンがあるのだけれども、なべ類がないからか誰も使用していなくて独占状態。
今日はこの旅最後のテント泊かもしれないとちょっぴりいいワインを買っておいたのだけど、結局宿で飲むことになってしまったのが残念。でもおつまみも作って巡礼宿のキッチンでゆっくりとしみじみと飲む。巡礼宿だけに禁酒かと思ったけど、その辺はゆるいようでよかった。いよいよ明日はラストラン。(ようこ)
2013.06.12 Lalin – Santiago de Compostela 49km Alberge

朝8時にアルベルゲを出発。今日は最後なので巡礼路を全てなぞって走ることにする。ゴールが近いだけあって、巡礼路は徒歩・馬・自転車の巡礼者であふれかえっていた。それでも田舎の村々をくねくねとつなぎながら走る気持ちのよいルートだ。50kmほどしかないのだけど、未舗装な上に細かいアップダウンがあったりして意外と時間がかかる。中盤にブレーキを持つ手が痛くなるほど大きな下り。すっかり体が冷え切ってしまう。下りきって橋を越えたところでおばあちゃん経営の小さなパン屋さんを発見し、ランチ休憩にする。おばあちゃんのパンがめっちゃ美味しくて、思わずお代わりを買いに走って戻ったほどだ。美味しいパンはオリーブオイルをつけるだけでパクパク食べられる。
サンティアゴの街が近づくと大聖堂の塔が見えてきた。「ああ、あそこで終わりか」と若干感傷的になりながら進んでいたら、大聖堂まであと1kmというところで見事に巡礼路サインを見失って迷う。大聖堂の近くで「すいません、大聖堂はどこですか?」と何度も尋ねながら大聖堂に到着するのは少し恥ずかしくもあり、僕ららしくもある。
14時、サンティアゴの大聖堂に到着。4年9か月にわたった自転車旅、ここで無事終了。(ひろ)

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