Jul,09,2013

Via de la Plata(銀の道)には標高差400mほどの峠が二つ連続で連なる場所がある。
標高差400mなんて、舗装路を走れば簡単な部類の峠だ。
でもただいま僕らはサンティアゴ巡礼中。巡礼2日目にして早速巡礼路を離れて寄り道をしたばかりので、今から心を入れ替えて全行程を巡礼路で行こうと宣言したところだ。
だから峠の麓に右は道路(舗装路)、左は巡礼路(未舗装路)とわざわざご丁寧に書いてあっても迷うことなく、未舗装の巡礼路に突入した。
これが無意味な修行の始まりだった。


これくらいなら押して歩けるので余裕、余裕。

道と小川と一体化してグチャグチャドロドロの道、いちいち荷物を外さないと通れないほど狭い道、鋭い岩が階段状に連なる登り道。歩く分には難しくない山道なのだけど、重量50kg以上のフル装備自転車で挑んだ身を持つ身には罰ゲームでしかない。

パタゴニアのカレテラ・アウストラル終点(オヒギンス)からフィッツロイの麓(エル・チャルテン)に抜ける国境越えもこんな感じの山道だったのだけど、当時は馬を借りて荷物を持って行ってもらったので、自転車だけのお気軽走行だった。
でも今はフルパッキングなのだ。
泥道をひたすら押し、というより重くて押せないので引き摺って歩き、きつい登り道ではいちいちバッグを外して二人で何往復もしながら少しずつ運ぶのを繰り返す。
峠の手前で颯爽と抜き去った徒歩巡礼者に、憐みの目で見られながらあっという間に抜き返された。


ようやく山の中を抜けた。もう直ぐ頂上だ。


大きな川に行く手を阻まれる。さすがに自転車じゃ通れないので大きく迂回。

でも本人たちはいたって楽しいのだ。
50kgの自転車を引きずって歩くのも、こうやって二人で協力して自転車を持ち上げるのも、
「こんなことするのも最後だし」と思うと、なんだか楽しくてしょうがない。
「もう最後だから」って意外とマジックワードかもしれない。
別に誰も見ちゃいないけど、こういうのも何だかいいんじゃない、最後なんだし。

ヘロヘロになって一つ目の峠の頂上にたどり着き、バッグからオレンジを取り出してかぶり付く。
酸味と甘みが体中を駆け抜けるのが快感だ。
すでに腕は攣りそうだし、腰はもげそうだ。でもなんだか無性に笑顔が止まらない。
「馬鹿だね、俺らって。」と二人で顔を見合せて笑う。



押して歩く時間より引き摺っている時間のほうが長い。

そして迎えた2つ目の峠。
「さすがにやめるよね?舗装路を通るよね?」
「でも見た感じさっきよりマシそうじゃない?」「地図によると一つ目より100mは低いよ。」
「え、ちょっとだけ走っちゃう?」
「疲れたら途中で野宿すれば良くない?途中で舗装路に合流してもいいし。」

結局、1つ目と同じくらい大変な道のりだった2つ目の峠を、同じくらい時間をかけて登りきった。
夕方遅くに頂上に到着し、「これだけ頑張ったらもう満足でしょ」と、下り道は巡礼路を無視して、カーペットのようにスムーズな舗装路を下る。
「いやー、舗装路に感謝だよね」なんて言いながら。


もう勘弁してください・・・

翌朝は、当然ながら足も腰も腕もボロボロで、テントから出るのも大変だった。結局、その日は巡礼路を離れ、舗装路でワープすることに。

「やっぱり馬鹿だよな、俺らって。」
でも、こういうバカって我ながら大好きだ。
ああ、何だかすっきり。これで正々堂々と「巡礼路を通りました。」と言えるかな。


Yeah,We made it!


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