Jul,03,2013

久々にスペインに戻ってきた。
フランスとドイツ、スイスとイタリアは隣合っていても「似ている国」と思う人は少ないはずなのに、なぜかチリとアルゼンチン、スペインとポルトガルは「似ている国」として認識されやすい気がする。
行ってみると結構違う。
そしてそんな小さな違いの数々を肌で感じられる自転車旅はなんて素敵な旅の手段なんだろうと、国境を渡る度に感じる。
今回のポルトガル-スペインの国境越えで、自転車旅での国境越えは最後。
最後の最後まで自転車旅で良かったと思わせてもらえる何だか嬉しい国境越えだった。

国境越えといってもここはヨーロッパ。
手続きもいらないし、止まる必要すらない。
国名が記載された看板と、昔のイミグレーションの建物があるだけ。
それでもスペインに一歩入ると、ガラッと雰囲気が変わった。
まず、建物と道路と街路樹が立派になる。
ポルトガルとスペイン、共にEUのお荷物と呼ばれる国。両国にそんなに国力に差があるんだろうか。


スペインに入った途端、あれれアスファルトが滑らか。そして村と村の間はごらんの通り何にもない。

ポルトガルとスペイン、先に書いたように似ているようで結構違う。
まず同じラテン系の人たちだけれども、ポルトガル人はスペイン人ほど陽気じゃない。
サウダーデ(郷愁、ノスタルジー、切なさといった意味に近いポルトガル語)という言葉を大切にするというポルトガル人はラテン系にしてはシャイで、静かめで、表情もちょっと暗い。
話してみると穏やかで親切丁寧だし、困っているとすぐに助けてくれる。ほんわかと温かい挨拶をくれるポルトガル人は見た目よりもずっと印象がいい。
陽気で楽しいけれど面倒なことにぶち当たると「私それ知らないから」と投げ出してしまう事の多いスペイン人よりも信用できる気がする。
ポルトガル人はスペイン人よりも圧倒的に英語が上手。田舎の年配の人でも英語が喋れることもあって、都市部の若者に関してはかなりの率で綺麗な英語を喋る。
一方スペインは都市部でも、観光業に携わっていても鈍りの強い英語を喋る人が多い。


周りに土地がありあまるほどあるのに、ぎゅっと家々が密集するスペイン

街のつくりも違う。
スペインはどんなに田舎へ行っても、街には家々が密集して建っている。
土地がいっぱいあるのだから何もそんな狭い場所に凝縮させなくてもいいのに、ひしめき合うように建物が並んでいて、まるで要塞都市のようなところが多い。村々の間はひたすらオリーブ畑だったり牧草地だったりで、家がほとんどない。

一方ポルトガルはポツリポツリと家が点在する。
もちろん大きな枠組みとしての村は存在するし、家々が密集しているところもあるのだけれども、村と村の区切りがよく分からないくらいに家が続いていることが多い。
それに村の数も圧倒的にポルトガルのほうが多いのではないだろうか。


スペインの村はこのように川の傍にあったり、丘の上にあったりする。戦いが多かったのか?


ポルトガルは日本のように村と村の間にもぽつぽつと家がある。廃墟も多い。

家のつくりも違う。
スペインはどっしりとしたつくりの家が多く、見栄えのする家、花などで窓際を彩る美しい家が多い。

ポルトガルの特に新しい家はシンプルで味気ない家が多く、庭に花などは植えてあるけれども、窓際にまで植物を置いて飾っているところは少なく、ここは空き家かと思うような全体的に寂しい見かけの家が多い。
農具や遊具なども雑然と置いてあることも多く、家に対する美意識がスペインより低い印象がある。


見事にシンプルなポルトガルの家。何故かクリーム色の家が多い。

料理も違う。
しっかりとした味つけ、どっしりしっかりした味の料理が多いスペイン料理に比べて、ポルトガル料理は素材の味を生かしたあっさりめの味で日本人好み。
ポルトガルはパンや焼き菓子類に凝ったものが多く美味しい。

そして食べる時間帯も違う。
スペインの昼は驚きの14時から16時ごろ、夜ご飯は22時以降。
ポルトガルは普通に12時過ぎからお昼で、19時ごろには晩御飯。お隣同士でこれだけ食べる時間帯が違うのも面白いけど、これだけご飯の時間が遅い国はスペインとアルゼンチンくらいなんじゃないかと思う。
スペインのようなバルはポルトガルには少なく、晩御飯前にバルで一飲み、タパスをつまんでガヤガヤ陽気に騒いでいる(スペイン人的には話しているだけなのだけど、スペイン人はやたら声がでかいので騒いでいるように聞こえる)といった光景もポルトガルでは見かけない。

スペインは14時から少なくても16時まで、長いところでは17時まできっちりとシエスタを取る店が多い。大きな都市でもない限りスーパーマーケットだってしっかりシエスタを取る。
そして日曜日に開いているスーパーはほとんどみかけない。
一方のポルトガルはシエスタを取る店もあるけれども全てではなく、スーパーはシエスタを取らないし、日曜日もほとんどのスーパーは開いている。

スーパーが週末も開いているかどうかは新しい国に入ったら真っ先に確認すること。
食料のプランニングは自転車旅でもっとも大切なことの一つ。
ヨーロッパではコンビニはまったくと言っていいほどないし、日曜日にスーパーが開いていなくても開いているようなガススタの売店は驚くほど高いので。


小さな町にも驚くほど立派な建物があるのがスペイン

スペインはバスクやカタルーニャ、ガリシアなど独立心の強い州が多く、それぞれ違った文化を持っているので一口に「スペイン」とまとめてしまうのは難しい。例えばガリシアなどは言葉も文化もポルトガルに近い。それでも大きくまとめてみると「スペイン」で、ポルトガルとはやっぱり違う。

そんなこんなで勝手にスペインとポルトガルを主観的に比較してみました。
似てるようで似てないお隣さん。
でも、「似てるようで」と前置きをつけるだけあって、広い世界の中で考えると似ているお隣さんではあるのです。


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