Jun,27,2013

リスボンを再出発したときは息が切れすぎてどうなるかと思った重い体も、
数日山道でアップダウンを繰り返しているうちに、だいぶ前のように身軽に漕げるようになってきた。
ポルトガル前半戦では「平地つまんなーい。飽きる!」と文句を言っていたのが懐かしいくらいに、後半戦は毎日ちまちまと登っては下る。
「ああ、太ももが、、」と毎日筋肉痛の太ももをいたわりながらも、顔は笑顔だったりする。
私ってそんなにマゾだったのか?


いや何も太ももが痛いことが嬉しいわけじゃないし、坂道を汗垂らして息切らして登っている自分が好きなわけではない。
でも、道はアップダウンがあるほうが景色に変化があっていいし、たいてい山道というのは幹線の混んでいる道ではなくて、緑がいっぱいの気持ちがいいところが多い。
それに、高いところに登ると景色が開けて、涼しい風がすぅーと汗を冷やしてくれて気持ちがいい。
登りで疲れた足には、足をぶらだんとらりとしたまま重力の赴くまま下っていく感覚が爽快でたまらない。
結果、笑顔になるってもんだ。
そしてまた「人生楽ありゃ苦もあるさ」と笑顔で坂道を登りだす。


ポルトガルの後半戦、そうやってちまちまとアップダウンを繰り返し、やってきたのはSerra da Estrela(エストレラ山脈)。
全く登る必要のない1500mの峠をめがけて、わざわざ遠回りしてきたのだ。
途中一回崩れた天気も、一日休憩日を入れたらすっかり回復してくれて、快晴で迎えた峠越え。
今のところ、スペイン、ポルトガル走行日は見事に晴れが続いてくれてラッキーだ。

峠の麓の街からは初っ端から激坂が続いて眩暈がしたけれども、その分あっと言う間に景色がよくなった。車も少ないから景色を十分に堪能しながら登ることができる。
今日の峠道は一般的な峠道とは一風違っていて、ずっと景色が開けていた。
高い木のない山だったのもあるけど、大きな山をりんごの皮をむくような感じで登っていくから、ずっと下界の景色が見え続ける。まるで鳥になって風に乗って下界を眺めているような、そんな気分にさせてくれる。
上からは昨日までちまちまとアップダウンしてきた土地が平地のようにしか見えない。


「ああ見えても結構アップダウンが大変な土地だったよねぇ」、
とひろと二人で呟きながら、「しっかし、気持ちいーね!!」と叫びながら、バードアイビューを楽しみながら足を進ませる。
約5年間、色々な場所を走ってきたけれども、自転車に乗りながらこんなに素晴らしいバードアイビューが望めるのは初めてだ。

改めて天気が良かったことに感謝。
普段は風が強いのだろう。木々がかわいそうなくらい曲がっている。今日は太陽がさんさんと照っているから温かいけれども、風はピリッと冷たい。冷たい強風が吹き乱れていたら、ゆっくり楽しんでいる余裕もないだろう。雲が張ってしまったりしていたら、この道はどこを走っているのかさっぱり分からなくてつまらないだろう。
ありがとうね、お天気さん。


頂上にて世界を制覇した気分になる。
「下界の皆の者よ、よく聞きたまえ。」と手を広げて指導者ぶって話したくなる気分だ。
世界の素晴らしい景色をこれでもかというほど堪能させてもらった5年間だったとしみじみする。
数々の絶景が走馬灯のように頭の中を回る。
「皆の者よ、よく聞け、地球は美しいぞ、大切にしたまえ。」

こうやって気持ちがいい景色を二人占めする生活はもうしばらくないのかもしれない。いよいよ旅の終わりが近づいてきたんだ。
贅沢な経験をさせてもらってきたのだと、美しい景色を見ることがすっかりと当たり前になっていた自分に喝を入れる。

地球は美しいぞ、
大切にいたします。



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