リスボンからもサンティアゴ巡礼路は整備されているのだけど、平坦な海岸線沿いを走ってもつまらなそうなので、スペインのサラマンカまで戻って、そこから山道を越える巡礼路を走ることにした。
リスボンまで走ったポルトガル前半戦は、ひたすら低地を走ってきたこともあって、あくびを噛み殺しながら走るほど単調な日々だった。
でもサラマンカに向けて走った後半戦は、「うわあ!」と叫びたくなるような絶景ではないものの、緑の深い風景と爽やかな気候と快適な舗装路とで、毎日気持ちのよいサイクリングが続いた。
多少アップダウンが多くなってきたものの、平坦な低地を走って距離を稼ぐだけよりは全然気持ちがいいので、全然苦にならない。やっぱり僕らは平地よりも山が好きなのだと改めて思う。
それに両親とお腹いっぱい観光地巡りをした後なので、もう街を観光する必要はない。
なるべく交通量の少ない田舎道を選びながら、のんびり走ってさっさと終わらせるユルユルな日々。
道端でおもむろにランチを作り出す。
そして気持ちのよいサイクリングには気持ちの良いアフターサイクリングが不可欠だ。
ポルトガルの公共キャンプ場が安くて快適だってことは既に書いたけど、
こうやって再びポルトガルを走り始めてみると、ちょっと度が過ぎるんじゃないの、と心配になるほど、キャンプ場の充実っぷりがすごい。
何よりも数が多い。5,60kmごとに公共キャンプ場が点在する国なんて聞いたことがない。
もちろん設備が古かったり草ボウボウだったりするキャンプ場もあるけど、どこもきちんと掃除されていて、きちんと清潔にしてある、それでいて、ホットシャワーやWiFiまで付いているのに、何よりここはヨーロッパだというのに、二人で3~8ユーロという格安設定なのだ。
そのお得感は素晴らしい。コストパフォーマンス的には世界有数のキャンプ場天国じゃないだろうか。
中でもすさまじかったキャンプ場は、1年前にできたばかりの真新しい施設で、美しく刈られた芝にピカピカのトイレ施設、暖炉がついた共用リビングまでついていて、「あら、サンティアゴ行くの?巡礼者なら半額よ。」と二人で約3ユーロ(400円)にしてくれた。
のんびり休憩出来る場所を探していた僕らとしては渡りに船なのだけど、僕らの他にはもう一組のキャンパーがいただけだという閑散っぷり。
キャンプ場なんて地元の人が頻繁に使う施設じゃないだろうし、人口千人程度の小さな村に観光に来る人も少ないだろう。
このキャンプ場は誰のために存在するのか、ちょっと他人ごとながら心配になる。
ポルトガルの家はぼろい。
そう思って見てみれば、ポルトガルの公共施設は摩訶不思議だ。
天然芝の立派なサッカー場、スタンドまで付いた総合競技場、バスケットコートにスイミングプールにと、とにかくこの国にはスポーツ関連の公共施設が多い。いや、この調子ならきっと図書館とか市役所といった箱モノも充実しているに違いない。
しかも人口数百人という村で、子供なんてほとんど見ないような過疎の村で、「いくらなんでもこれはいらんだろー」と突っ込みたくなるほど、新しくて立派な公共物ばかりだ。
ふるさと創生一億円でも交付されたんだろうか。
ポルトガルってEU経済の足を引っ張っているんじゃなかったっけ?
まあお陰で僕たちは快適ラクシュアリーな旅ができているので、ありがたい限りなのだけど。
その反面、リスボンやポルトといった都会は、いたるところでペンキやタイルが剥げているし、空き家は荒廃し放題、なんだか街全体に廃れた雰囲気が漂っていた。
都会よりも地方が元気なのは良いことかもしれないけど、なんかちぐはぐな感じがしてならない。
余計なお節介だけど、この調子で大丈夫ですか、ポルトガルさん?
ポルトガルの街並みは、一歩路地に入ればこんな感じ。
他方、キャンプ場はこの美しさ。コレでいいか、ポルトガル。