父と母を空港で見送ったら、気が抜けて腰がぬけてしまいそうになった。
これで後は飛行機が責任を持って父母を日本に送り返してくれる。
私の任務は終わったのだと思ったら涙がでてきそうだった。
そんな大層な任務だった訳ではないのだけれども、3週間両親の貴重品を全て預かって、みんなが安全に、そして楽しく旅ができるようにと気を張り続けてきた。
私はあまり要領がよくないタイプなので、手を抜くところはうまく抜いてということができなくて、フル回転で走り続けてしまった。
ひろに「もっと落ち着いて。のんびり行かなくっちゃ体がもたないよ」と何度も忠告をもらっていたのだけど、頭では分かっているんだけど、自分でもどこにブレーキがあるんだかわからないままに発車してしまったようで、どうやって停まっていいんだか分からずに走り続けるしかなくて困った。
両親が帰ってから数日はすっかり腑抜けになって、知恵熱まで出てきてしまった始末。
ああ、なんて情けない。
いつものキャンプ生活に戻り、小さな我が家(テント)でのんびりと数日過ごした。
朝日が眩しくて起き、日が暮れたら寝る。キッチンもない、洗濯機もない、冷蔵庫もない、いつもの生活でリズムを取り戻した。
バケツに水を貯めて洗濯物をしながら、芝生の上に食料を広げ、ガスストーブで食事を作りながら、しみじみと両親との旅を思いだす。
「旅」という分野では私のほうが両親より詳しいし、親もすっかり私に頼り切りになっていて親子の関係が逆転になった。
たくさん心配もしたし、小言も言ったし、イライラもした。
「もー!!」と何度怒ったことか。
それでも本当に心底怒ることはない。
二人のことが大好きで、二人に対する愛に満ちているから怒るし、心配もするのだ。
二人が楽しんでいるのを見ると心底嬉しくなる。
「美味しい、美味しい」と言って食べているのを見たら、私の分もさらに食べたらいいからって、自分の食欲も忘れてあげたくなる。
そんなことを色々と思いだしては、私もこうやって育ててもらってきたんだなと、ほんの少しばかり親の気持ちを感じることができた気がする。
1人で育ってきた訳ではないって分かっているつもりだったけど、それでもすっかり両親への感謝はすっかり忘れてたよ。
改めてありがとう、お父さん、お母さん。
旅は色々なことを気づかせてくれると思いがちだけど、
本当は日々の小さな出来事の中にも気づきがいっぱいあるのだと思うし、気づくべきなのだろう。
ただ、旅は非日常ということで、いつもよりアンテナを張り巡らせているからか、気づかされることは多い。
両親への感謝の気持ちを改めて思い出させてくれた「旅」に感謝。
ひろの両親が来てくれたときもそうだったけれども、
観光地を巡るビッグイベントよりも、久々にべったりと一緒に過ごした時間が印象に残る。
きっと何十年もしたらその時間のことばかりが記憶として残るのだろう。
貴重でかけがえのない、素敵な時間が送れたとしみじみと思う。
こういう時間を取れたことが嬉しい。
そして全力でサポートしてくれたひろにも感謝。
両親と私という関係の中にひろが大きく、でも自然に存在しているということが何だか不思議でもあり、心地よくあったりもする。
家族ってこういうことなんだ。
こういう時間をプライスレスっていうんだ、きっと。
ヨーロッパだけに結構お金はかかったんだけどね。