前にヨーロッパは自転車で回るのが一番だと書いたことがあるけど、
改めて走ってみるとヨーロッパははじめて一人で自転車旅をするのにはお勧めできる場所ではないかもしれない。
いつも二人で走っている僕には想像の世界でしかないのだけど、一人で長い間走っているチャリダーは息の抜き方がうまいのだと思う。
バックパッカーは一人旅といっても何だかんだ他の旅人と一緒にいることが多いし、ましてや日本人宿を転々とすれば同じメンバーと頻繁に再会を繰り返すので一人旅という感じは皆無になる。
でも一人チャリダーはそうはいかない。一度ホテルを出て自転車にまたがってしまうと、次の安息の地を見つけるまでは完全に一人の世界なのだ。
春のイベリア半島はいたるところに野花が咲き乱れている。
とくにヨーロッパのように出会いが少ないエリアではそうだ。
街に入ればフレンドリーな現地人がにっこり笑って話しかけてくれることもたまにはある。でもだからといって積極的に絡んでくれる人はそれほど多くない。なにせここは大都会ヨーロッパなのだ。
街のホステルも少し趣が違っていて、週末を利用してクラブ遊びに来ました的な地元民も多く利用しているし、バックパッカーというより個人旅行者風の小奇麗な旅行者がマジョリティになるから、それほど刺激的な出会いが続くわけではない。
美しい風景も多いし可愛らしい町並みもたくさんあるけど、アンデスやヒマラヤのように誰もが圧倒され感動するような風景と数多く出会える訳でもない。
現に今走っているポルトガルなんて、平和でのどかで単調な風景がどこまでも続いている。
道路の状態はいいし、風景は単調だし、人との絡みは少ないしで、下手すれば毎日朝から晩までかっ飛ばして一気に駆け抜ける、ということになりかねない。
そんな中でうまいこと息を抜きながら楽しく旅を続ける一人チャリダーには、尊敬の念を覚えずにはいられない。
貧弱なソウルで悪あがきしている僕には、一人チャリ旅なんて一生できなさそうだ。
太陽の国のソーラーパネルは規模が違う。遠くから見ると小さな森みたい。
でも幸い僕は二人旅なので息抜きは簡単だ。というよりヨーロッパ旅は息抜きがメインなのだ。
ガツガツと走りまくるのも自転車旅の楽しみだけど、自転車を漕いでいない時間も含めて一日の時間の流れをじっくり楽しむのも自転車旅の魅力なのだ。
ここヨーロッパでは、息を抜きまくったゆるゆるキャンプ生活が楽しくてたまらない。
未舗装の荒野を激走する楽しみは南米や北インドに譲って、野生動物やフレンドリーな現地人との触れ合いはアフリカやイスラム圏に譲って、ここはあせらずゆっくりと、チープなのにラクシュアリーなキャンプ生活を楽しもうじゃないか。
生ハム!
治安のいいヨーロッパなら野宿もしたい放題なのだろうけど、やはり周囲が暗くなるまでじっと待っているのはもったいない。堂々とキャンプ場に泊まってアフターサイクリングを充実させたい。
スーパーで現地の食材を買い込んで、ワインを飲みながらゆっくりと食事を作る。スペインもポルトガルもスーパーで買う食材が安くて、両手いっぱいに野菜や肉を買いこんでも10ユーロくらいで済んでしまう。それに2、3ユーロも出せばおいしいボトルワインが買えてしまうのだから、飲まない手はないのだ。
休憩日なんてもっと幸せだ。朝はテントの中が暑くてたまらなくなる時間までだらだらと眠り、起きぬけにコーヒーを入れ、お気に入りのフライパンで大きなオムレツを作り、たっぷり洗濯をして、メールでもチェックして、スーパーに買い出しに行く。
そんなゆったりとした時間の流れを心行くまで楽しむ。
こんな優雅な暮らしができるのも、ここポルトガルのキャンプ場が驚異的な安さだからだ。
大きめの町に点在している公営キャンプ場、最安値でお二人様ホットシャワー&フリーWiFi付きで3,7ユーロ(約450円)という、たまげてしまう値段設定なのだ。
今いる街エボラには私営キャンプ場しかないので12ユーロ弱(約1500円)するけれど、ホステルのドミトリーでも一人15ユーロはくだらないヨーロッパで、二人12ユーロでシャワーやWiFiはもちろん、くつろげるリビングルームになんとプールまで付いてきてしまうのだから、やっぱり破格なのだ。
自転車を漕ぎつつ、ヨーロッパの街々を観光しつつ、そして幸せなキャンプ生活を過ごす。
これこそ、僕ら的なゆるゆるヨーロッパの楽しみ方なのです。
木漏れ日、ひらひら風に泳ぐ洗濯物、小さなすストーブで作るままごとみたいな食事。これぞ幸せキャンプ生活。