Apr,25,2013

タジンやクスクスを擁するモロッコ料理は、日本でも名が売れた料理のひとつかもしれない。
でも残念ながらモロッコ料理は、ネームバリューの割にはレパートリーに乏しいシンプルな料理だ。
タジン、クスクス、炭火焼とスープ。これで全部といっても過言ではない。
それをおかずにパンでひたすら空腹を満すのは、余りエキサイティングな日々ではない。


一番上の写真が典型的なタジン料理。こちらはチキンのタジン。

日本でも一時期ブームになったタジン。
独特の形をしたタジン鍋の真ん中に羊・牛・チキンなどの肉塊をいれ、それを野菜で取り囲み、スパイスをかけ、後はひたすら炭火の上に置いて煮込むというシンプルな料理。レストランでは圧力鍋で下準備をしているようです。
モロッコ全土どこに行っても同じような食材と同じスパイスで作るので、基本的にはいつどこで食べても味は一緒(地域スペシャリティは一応あるようです)。
ほろりと崩れるほど柔らかい野菜はすごくおいしいのだけど、最初から最後まで延々と同じ味が続くし、見た目以上に油多めの料理なので、一人で一皿食べきるには少し気合が必要。
素材の味をたっぷり引き出せる素晴らしい調理法なので、工夫次第でもっとバリエーションに富んだタジンを作れる気がするのだけど、そういうことを考えるモロッコ人はいないんだろうか。

この料理のポイントは食べる時間帯を間違えないこと、これに尽きる。
時間が早すぎると煮込みが足りなくて全体的に固めだし、遅すぎると野菜がシナシナになっている。基本的にモロッコ人はランチに食べるようで、夕食時まで残っているタジンは“これ半額で売れよー”と文句を言いたくなるほど野菜がしんなりしてしていることが多い。といってもこれはローカル食堂の話で、観光用のレストランならどの時間帯に食べても問題ないのでしょうが。


店の入り口にディスプレイされているタジン鍋が、タジン屋さんのしるし。

クスクスは金曜礼拝の後に食べるのが風習のようで、金曜日以外にローカル食堂でお目にかかることは滅多にない。
クスクス(粗挽小麦)の微妙な食感がいまいち苦手なので、僕ら的には1,2度食べればそれで十分でした。お店によって味がだいぶ違うようなので、一度はおいしいと評判のクスクスを食べてみたかったような、もう食べなくてもいいような。


炭火焼屋の奥に見えるのが肉屋。

炭火焼は串焼きやケフタ(ハンバーグ風)などなど、見た目と味のギャップが全くないので安心のチョイス。炭火で焼くだけで、どうしてこんなにおいしく仕上がるんだろう。
炭火焼屋の隣に肉屋があって、その肉屋で買ってきた肉を炭火焼屋にまるごと渡すと、下味をつけて焼いてくれるというモロッコ独特のシステム。肉屋が炭火焼屋を兼ねる(またはその逆)の方が商売的にはいいと思うんだけど、それはワンストップサービスのスーパーマーケット的な流通に慣れて切ってしまった発想なのでしょうか。


肉は丸ごとつるされていることが多い。頼めばミンチにしてくれる。


BBQされたお肉。美味しい!けど塩味以外の食べ方もしたい。

ハリラと呼ばれるスープはモロッコ人の夕食の定番。というか夜はそれしか食べない人が多いようで、田舎に行くと夕食のチョイスがなくて困ります。
豆やらトマトやらパスタの切れ端やらが申し訳ない程度に入ったスープは、一口食べると「ん?何かが足りない?」と思わせるとてもシンプルな味。けして不味いわけではないのだけれども、これがモロッコ唯一のスープとして定番になったのかが謎、そんな味です。
ハリラに限らず、モロッコ料理は塩分が妙に控えめだし、味付けにもう一工夫ほしいものが多い。まあシンプルなのはいいんですけどね。


マラケシュのフナ広場では羊の脳みそや舌を食べられる。脳みそは白子みたいで意外と美味いと思ったけど、他の旅人には不評だった。

他にもカタツムリ煮や羊の脳みそといったゲテモノもあるけど、基本的にどこに行っても同じものを食べているモロッコ人。あまり食に情熱を注がない民族なんだと感じます。
パストリー類はフランス植民地時代の影響なのか、種類も多いし美味しいものも多いのに、何でメインの食事はもっと影響されなかったのだろうと思います。
食にこだわりを持つ国に住みたい、と思う今日この頃。
やっぱり日本食って素晴らしい。


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