Apr,19,2013

私たちの赤裸々な日常をつづったチャリダー日記、モロッコ編Vol.2。
今回は、トドラ渓谷出発からImilchil、Azrouを経てメクネスに到着するまで日記です。
なお、GoogleMap、標高プロファイル、距離一覧表、簡単なホテル情報をNotesにまとめてありますので、そちらも参照して下さい。→Click Here!

2013.03.28 Gorges du Todra – Toumliline 43km Hotel

今日からしばらくあつし君と3人で走ることになった。他のチャリダーとペアランするのはメキシコ以来2回目で、日本人チャリダーとは初めてだ。朝から強風が吹き荒れていたので出発するふんぎりがなかなかつかず、しかもあつし君の自転車のトラブルも発覚したりして、色々しているうちに出発が12時ころになってしまった。
トドラ渓谷を抜けると少し風はおさまって走りやすくなった。トドラ渓谷は切り立った絶壁が聳え立つ渓谷なのだけど、数百メートルしか続かない意外と短いスポットで、その先にはひたすら荒涼とした山道が続いている。うねうねした地層むき出しの荒涼とした風景は好きなので走っていて楽しい。それにしてもあつし君は速くて全然ついていけない。この先たびたび僕らのことを待ってもらうことになるのかと思うと申し訳ない。
遅いランチ休憩にレストランでコーラを買い、サロンを借りて自前のパンとゆで卵を頬張る。コーラだけで日陰の休憩スポットを使わせてもらえるなんてありがたい。感じのいいレストランの兄ちゃんが話し相手になってくれていたのだけど、「この先ホテルある?」と聞いた途端に「この先にホテルはない。今日はここで泊らないとだめだ」と見え透いた嘘をつき始めた。この変わり身の早さ、これぞモロッコ人。
緩やかに高度を上げていき、本格的な登りに入る直前の小さな村に宿を見つけて今日は終了。見るからにショボそうな宿だったけど予想外にもホットシャワーまで使わせてくれた。ここのオーナーはとても紳士的で素敵だ。レストラン・カフェ・雑貨屋・バス亭を兼ねていて、村一番の(というか唯一の)たまり場になっているようだ。今晩はあつし君のストーブを借りてトマトスパゲティを作る。単調なモロッコ料理にはすでに飽き気味なので、パスタとトマトソースの味が新鮮に感じられて大満足。(ひろ)
2013.03.29 Toumliline – Imilchil 61km Hotel

村を出たら峠が始まった。前半は結構傾斜がきつかったけど、道幅が広くてアスファルトは新しく、ほとんど車が通らないので走りやすい。あつし君は相変わらず速くて、あっという間に視界から消えてしまった。標高2700mの今日の峠は、すっかり標高の高いところに慣れ親しんだこの4年半からしてみると今まで沢山登った峠のひとつくらにしか感じないのだけれども、この先こんなに高い峠に上ることはもうしばらくないのかもなと思うと、何だか急に旅の終わりを感じて寂しくなる。
最近は色々なところで旅の終わりを意識するようになった。すっかり日常になった自転車走行が非日常になる日が来る。宿に数日連泊してちょっとした「家ゴッコ」として楽しんでいた時間が日常に戻ってくる日がもうすぐやってくる。
下りは寒い。お日様もサンサンと照っているけど、空気がピリッと冷たい。寒ーいと震えながら下っていたら、目の前に緑眩しい畑が現れた。緑って美しい色だと改めて思う。シャッターを切っては進み、また止まりシャッターを切る。乾ききった大地にこんなにも瑞々しい緑が生えてくるということが驚きで感動する。畑は大自然ではないけれども、人の作り出した緑にも心を動かされた。
緑の畑が続いた先には土で作られた家々が密集していて、さながらミニチュアな大都市(?)のような雰囲気を醸し出していた。ちっちゃい村なんだけど、高い建物はないんだけど、高層ビルが立て込んでいる大都市のようにちょっと見える、不思議な村だった。
その村のはずれでランチタイム。今日は金曜日で村の食堂は休みのようで、観光客用のレストランしか開いていなかったのでやたら高い。タジンやクスクスが6,70DHと普通の倍以上。とはいえ食べないとこの先イミルシルまで何もなさそうなので食べることに。結局ご飯が出てくるまでに1時間以上かかり、3人ともすっかりと集中力切れ。休みすぎはよくないのです。
休憩後は向かい風が強くなり、通りがかる村々の子供たちは「金クレー、飴くれー」と本気で追いかけてくるし、物色する目つきもゾッとするくらい怖くてテンションが下がる。
イミルシルはいい宿を発見。夜は鶏肉と牛肉を肉屋で買ってレストランで炭火焼きにしてもらう。モロッコの牛肉はかなり美味しいと思う。(ようこ)

2013.03.30 Imilchil – Aghbala 73km Hotel

5kmほど行くとちょっとした湖があり、その先を少し登るとアトラス山脈の反対側に出た。山脈を越えて下りに入った途端、今まで荒涼として乾いた風景だったのが、新緑とアーモンドの花に囲まれた湿度のある風景に一変した。視界いっぱいに広がる草原や畑の風景を見ているとまるで初夏のアルプスを走っているようだ。そしてアーモンドの花は桜にそっくりなので日本人的にはとても心がなごむ。このルートは毎日のように風景が変わっていくし村々の感じもかわいらしいので走っていてとても気持ちがいい。
山脈の反対側にはほとんど商店がなく、30km過ぎにあったお店でオムレツサンドを食べたきり。先にあつし君を待たせていると思うとなかなかゆっくり休憩しておやつを食べる気にもならずにほとんど食べずに走り続けていたら、60km先の分岐を過ぎたあたりからがくんとスピードが落ち、Aghbalaの村に到着する頃には完全にハンガーノック状態になってしまった。最後の登りは乗り合いタクシーの後ろにこっそりつかまって何とか登りきる。
村の入り口にあった新築ホテルにチェックイン。なぜかオーナーはスペイン語がぺらぺらで手続きが楽ちん。言葉が通じるって素晴らしい。2階がカフェ、3階が宿になっていて、2階のカフェにはソニー製のどでかい液晶テレビが置いてあって地元民がサッカー中継に熱中していた。照明も妙に凝っていてお金をかけた風の作りだし、ここのオーナーは金持ちか?そういえばこの街は今までのモロッコ風の土壁むき出しの家々から、三角屋根やコーティングされた壁の建物が増えて、ヨーロッパっぽさすら感じさせる。アトラス山脈を越えたら一気にヨーロッパの影響が大きくなるようだ。
ようこたちがお菓子を買いにいく間ベッドに転がってノックアウトしていたら、「いやーこの街の子供たちが可愛くて最高だよ」とにこにこしながら二人が帰ってきた。子供が怖い目でお金やコーラをせびってくるモロッコ風の村、子供たちがニコニコ手を振ってくれるヨーロッパテイストが入った村、山脈を隔てて反対側にあるだけで直線距離にすれば何十キロも離れていない村なのに、どうしてこんなに街や人の雰囲気が変わるのだろう。
夜は村の中心まで出てご飯を食べる。チキン蒸し、レバー炒め、内臓煮込みと今まで見たことがないメニューに大興奮。宿も快適だし、町の雰囲気もいいし、体も疲れているし、この街にもう一泊したかったけど、数日中に雨が降りだす予報なので先に進まないと。なかなかハードだなー。(ひろ)
2013.03.31 Aghbala – Khenifra – M’rirt 100km Hotel

今日はかなり快適な下りが続く。北海道の美瑛を広くしたような景色が続いて気持ちがいい。気付けば辺りは新緑色でいっぱいでかなり景色が変化してきた。今日は半日休憩にしようと早朝に出たおかげで午前中にケニフラに到着。ケニフラに泊まろうと宿探しを始めたものの、カフェに飛んでたwifiをキャッチして天気予報をチェックしたら明日の午後は雨ということなので、もう少し進んで明日午後休憩できるようにしようということに。ケニフラに近づいた辺りから自転車の調子がおかしいなとケニフラでちゃんと確認したらリムがヒビ割れていることが発覚。今朝下っているときに今までにない変な感覚を感じ、突然転んでしまったのはきっとリムが割れたせいだったのだろう。かなりの衝撃で転んだので体中が結構痛い。
ケニフラからミリルトへの道は単調なものの野の花が咲き乱れていて花の香りが甘い「春」な道だった。ミリルトへの最後の登りでとうとうリムがパックリと大きく割れてしまって最後の7kmはブレーキを外して走行。この先どうしようかと悩むまもなくミリルトのチャリ屋で40DH(400円)のリムに変えてもらうことに。チャリ屋というか車輪関係の修理屋といったところで、ちゃんと仕事をしてくれるのだか心配で、ひろとあつし君はずっと付きっきりだった。私はというとミリルトの7km手前のところにひろがニップル回しを忘れたというので必死に7km爆走して戻る。結局翌日ひろのカバンからそのニップル回しが出てきた。みんなグッタリ。あつし君は疲れているのに寒い中一緒にチャリの調子を見てもらっていたのでかなり具合が悪くなってしまって申し訳なかった。
見習い職人の練習台になったせいもあって3時間かかってようやく完成。これで工賃が30DH(300円)って、なかなか割に合わない仕事だ。修理の間、チャリ屋の友人でスペイン語を話すおじさんがいたのだけど、最後に通訳を手伝ったからタバコでも買ってくれと言われる。何もしてないおじさんだけどまあしょうがないかと思って承諾したら、32DHするマルボロを買ってきた。しかも夕食を食べたいから後20DH欲しいとまで言い出す。このおじさんは友人チャリ屋の仕事代が30DHだったって知っているのに。長い一日で疲れていた心に痛くて、とても悲しい気持ちになった。
ミリルトの町はなんだか肌に合わない。気分の問題もあるのかもしれないけれども、特に女一人で歩いていると心地が悪い。明日は雨が降る前になんとかこの町を脱出したい。(ようこ)
2013.04.01 M’rirt – Azrou 50km Hotel

午後から雨という予報だったので、早起きして午前中に走りきり午後は休憩するという作戦にしていた。ところが天気予報は悪いほうに外れ、朝から外は雨でかなり寒い。がっかりしつつ、この町はあまり好きではなくて早く離れたかったので、無理やり出発することにした。
前半は降ったり晴れたりだったけど、後半からは強い雨が降り続く。しかも気温が低く風も冷たくて辛い。止まって休憩すると余計寒いので結局3時間弱ノンストップで走り続けてアズルーに到着。先に到着していたあつし君は2時間で走りきったそうだ。アツアツのシャワーをたっぷり浴びてようやく生き返る。ああ寒かった。
今日の宿は部屋も広いし、バルコニーが大きくて開放的だし、WiFiもあるし、それでいて値段も高くないという大当たりの快適宿。午後も強い雨が降ったり太陽がさしたりと不安定な天気が続く中、室内でのんびりだらりとしているだけでだいぶ心身の疲れが取れてきた。休憩するには完璧な環境のこの宿で明日こそ休みたいのに、天気予報を見ると明日は晴れでその後4日間は雨続きという予報だ。メクネスやフェズといった観光地を目の前に4日間もこの街で缶詰めになるのは余りにもったいない。明日には余裕でメクネスに到着できる距離にいるし、やっぱり明日も走らないとだめかー。
景気付けにピザでも食おうとカフェに入ったら、料理が出てくるまでに1時間以上かかった。しかもやっと出てきたピザが冷めているってどういうこと?(ひろ)
2013.04.02 Azrou – Meknes 68km Hotel

アズルーの宿は心地いいし、こじんまりとした雰囲気がいい街なので連泊したかった。だけど今日の晴れを逃すとあと4、5日雨が続くと天気予報はいっていて、さすがにこの町に4,5日スタックするのは困る。それにフェズでは日本からの荷物をピックアップしたりするので何日かいなくてはならないというわけで、色々とアズルーに連泊できる方法を考えたけど、結局今日の晴れを有効利用するしかないと涙を呑んで出発。青空のもとのアズルーは益々魅力的で、可愛らしい町を走りぬけながら残念な気持ちでいっぱいになる。特に何か特別なものがあるわけではないので、バックパッカーにお勧めしても「何で?」と思われるだけだと思うけど、自転車で旅していると時々こういう心地いい街に巡り合う。そういうめぐり合いが好き。
フェズへ向かう予定だったけど、フェズの宿環境が良くなさそうなのと遠回りになるので、急遽メクネスへ。あつし君はもともとメクネス方向へ向かう予定だったので一緒に走る。景色のよいイトウ峠を越えそのあとは快適な下り坂で快調。
メクネスではちょっと奮発していい宿に。wifi付きのビジネスホテル風の宿で近くにカルフール(フランス系のスーパー)まであって、なんか都会。メクネスは街にビールの看板があったり、バーが並んでいたり、今までのモロッコとはなんか違う感じ。さっそくビール、メクネス産のワインで乾杯。2週間ぶり以上のお酒だった。モロッコは全然お酒を飲んでいない。(ようこ)

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