Apr,16,2013

巨大迷路のようなメディナ(旧市街)で有名な、世界に冠たる観光都市フェズ。
これだけ有名な観光地なんだから客引きや土産物屋がしつこくて面倒くさいんだろうとおっかなびっくりで乗り込んだフェズは、拍子抜けするほど静かで、そしてそれほど迷路でもなかった。

フェズのメディナは巨大なので、一見さんが奥深くまで入っていくにはさすがに敷居が高い。
でも観光スポットは入り口から一直線に延びている2本のメインストリートを中心に広がっていて、それを目印に歩く分にはガイドはおろか地図すらいらないくらいだ。脇道に一歩入ると狭い路地が広がっているのだけど、それも訳が分からなくなるほど複雑怪奇という感じでもない。
マラケシュのメディナは路地が微妙に湾曲していて気がついたら東西南北が分からなくなっていたことが何度かあったけど、フェズのメディナは基本的に一直線なのでそんな心配もない。
目印となるスポットも点在しているし、自分から「よし、あえて迷ってやろう」という意気込みがなければそんなに大きく迷うこともない。
巨大迷宮都市というイメージが先行していただけに、拍子抜けしてしまう。

そしてもっと拍子抜けしたのは、全然声をかけられなかったことだ。
土産物屋の数も驚くほど少ないし、マラケシュのように目の前に立ちふさいだり腕を掴んだりして「ビンボープライス」「ミルダケ」と面倒くさい感じで声をかけられることもない。
さすがにタンネリ(なめし皮職人地区)が近づいてくると自称ガイドが声をかけてきて、こちらが断ると聞くに堪えない捨て台詞を吐かれたりするのだけど(勝手に声をかけてきて勝手に罵声を浴びせるのはやめてほしい)、そんな輩もごく少数で、どちらかというと地元色丸出しの落ち着いたマーケットという雰囲気だった。

おっかなびっくりで乗り込んだだけに、最初はふーんという拍子抜けした印象しか持てず、こんなものかと思いながら一度メディナから出てきた。
自分がイメージしていたフェズがマラケシュみたいに超がつく観光地で、嫌だ嫌だと言いながらもそのうっとおしさにどっぷり浸ることを少し楽しみにしていて、だからこそ全く声をかけられないという予期せぬ事態に拍子抜けして物足りなさを感じているのかもしれない。
そんな自分に気がつき、我ながら身勝手だなあと苦笑いしてしまう。

でもそれって自分のイメージと合わなかったから面白くないと言っているようなもので、せっかく自分の目で見に来ているのにそんな埋め込まれた予備知識で判断するなんてもったいない。
一度自分が持っていたイメージを捨て、改めてメディナに入って歩いてみると、少しづつ見え方が変わってきた。
観光客そっちのけで遊んでいる子供たち、昔から変わらずこの場所で続いてきたであろう野菜市場、カンカンカンと無心で銅を打ち続ける鍛冶屋、自由気ままに生きている猫たち、観光客そっちのけで地元民を相手に商売にいそしむ人。
そのワザとらしくない地元っぽさが逆に楽しい。このメディナはそんな地元的な風景を見に来る場所なのかもしれない。

でも二転三転するようだけれども、いくら地元的な風景が素敵だからって、やっぱりここはフェズなのだ。
地元っぽさ丸出しの場所は自転車で訪れる村々でたっぷり見てきている。やっぱりわざわざ「かの有名なフェズ」にやってきたからには、いい意味でも悪い意味でもいいから、他と違う特別な場所にきたなあという感じが欲しかった、というのが正直な感想でもある。

ううん、やっぱり拍子抜け、かなあ。


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