Apr,10,2013

私たちの赤裸々な日常をつづったチャリダー日記、モロッコ編Vol.1。
今回は、マラケシュ(再)出発から、Tizi n’Test(テスト峠)、ワルザザートを経てトドラ渓谷に到着するまでの日記です。
なお、GoogleMap、標高プロファイル、距離一覧表、簡単なホテル情報をNotesにまとめてありますので、そちらも参照して下さい。→Click Here!

2013.03.15 Marrakech – Asni 53km Hotel

あつし君のお陰でようやく自転車も治った。予想外に寒いマラケシュの日々に残念ながら二人の体調は完璧じゃないのだけど、もうこれ以上待ちたくないので重い腰を上げて出発準備をする。フナ広場でオレンジジュースをぐびりと飲んでさあ出発、と思ったら荷物に猫のフンがべったりくっついているのを発見して悲鳴を上げる。なんか先が思いやられる。マラケシュを出る時に道を間違えてしばらくウロウロ。モロッコ人はみんな丁寧に道を教えてくれるのだけど、マイナーなショートカットを教えてくれたりするのでなかなか幹線に出られずいったりきたり。
ようやく幹線に出た後はずっと緩やかな登りが続く簡単な道。とはいえ2週間ぶりの自転車だし体調もあまり良くないので、野宿はせず宿に泊まろうと早めに終了。Asniには小さくてぼろぼろだけど正規登録のユースホステルがあった。最初はモロッコ人でいっぱいだと断れたのだけど、特別にオーナー宅のサロンに同じ値段で寝かせてもらえることになった。2段ベッドの小汚い部屋よりよっぽど快適なのでありがたく泊まらせてもらう。部屋に入った後、とりあえずお茶でも飲もうと自分たちのストーブを用意していたら、オーナーのおばちゃんがこれ使いなさいってプロパンガスストーブを貸してくれた。自分のガソリンはこの先のために取っておきなさい、だって。こういう親切は嬉しいなあ。(ひろ)
2013.03.16 Asni – Talat n’Yakoub 48km Hotel

今日は一面の曇り空だけど、景色はなかなか良くなってきた。土色の家々と新緑のコントラストが眩しい。道行く人々が素朴でホッとする。大人は優しい笑顔で挨拶してくれるし、子供たちは恥ずかしながらも手を一生懸命に振ってくれる。昼ごはんを食べたいと思っていた村にはレストランはなく、雑貨屋でオムレツを作ってもらうことになった。その小さな村の雑貨店はバス待ちのお客さんたちがいて、アラビア語もフランス語も分からない私たちのためにお客さんたちがつたない英語で一生懸命に雑貨屋の店主との食べ物交渉を手伝ってくれる。とても温かい優しい気持ちがいっぱい詰まったオムレツランチだった。今日は結構なアップダウンと向かい風で距離の割りにグッタリ。峠の手前にある最後の村の宿で泊まることに。小さな村に一軒の小さな宿。こんなところに泊まる人はチャリダーのほかにいるんだろうか。晩御飯に卵おじやにしようと卵を探しに村を散策する。外国人はよほど珍しいのか、いろんなところから「ボンジュール!」と声をかけられる。豆粒くらいにしか見えないような遠いところからも「ボンジュール!」いいね、こういうの。
さて宿に戻ってお湯を沸かそうとガスストーブを取り出してみるとポンプが調子が悪い。ひろが直してくれて「ふー、よかった」と思ったのもつかの間、お米を炊き始めたら再びポンプの調子が余りよくない。食後に落ち着いてひろが修理にかかってみたら、致命的なパーツが壊れていることが発覚。予備パーツは十分に持ち合わせていたのに、肝心なそのパーツの予備パーツはなかった。う、、自転車が直ったと思ったら次はガスストーブが、、。自炊をほとんどしなくてもいいモロッコはなんとかなりそうだけど、スペインに入ったら自炊をメインにしないといけないわけで、何とかスペインまでに新しいポンプを手に入れないと。(ようこ)
2013.03.17 Talat n’Yakoub – Tizi n’Test – Aoulouz 107km Hotel

昨夜のポンプ破損ショックに追い打ちをかけるように朝からどんより雨。テンション劇落ちでトボトボと出発準備をしたのだけど、幸いないことにだんだんと空が晴れてきて走り始めてすぐに雨もやんだ。Tizi n’Test(テスト峠)は傾斜も緩やかだし車もほとんど通らない快適な峠越え。景色も素敵だし遠回りしてこっちの峠を通って良かったと自己満足に浸りながら快調に高度を上げていく。頂上の少し手前に展望ポイントがあったのでお昼休憩をしていたら、近くに住んでいる人が温かいお茶を持ってきてくれた。お茶代を渡そうしたら、お金は要らないよと笑ってくれた。下りに入ると途端に天気が悪くなり曇り空で全く風景が見えなくなる。峠を下りきったところで少し寄り道して村の商店で食糧を補給。下っている途中にはほとんど商店や村がなかったから、この峠を反対側から攻めるのは大変そうだ。
さて、宿がありそうな次の大きな町までは40kmほど。ちょっと遠いので野宿でもしようかと野宿スポットを探しながら走っていたのだけど、塀で囲われた農園が続いていて野宿できそうな場所がない。仕方がないので頑張って次の町まで走ることにした。最初は追い風の平坦な道で快調だったのに、もうすぐ町に到着というところから予想外の登り坂が始まって死にそうだ。なんとか町に到着し、町の入口に宿の看板を見つけたので脇道に逸れて宿を探しに行く。すると脇道に入った途端に周辺の子供たちが興奮して僕らに話しかけてきたり自転車で付いてきたりと大騒ぎ。かなりヘロヘロの状態で到着したのだけど子供たちの可愛さにほっこり癒される。結局その宿は値段が高くて泊まれなかったのだけどとてもいい寄り道だった。
今日は町の中心に安宿を見つけて終了。部屋はまあまあ綺麗だったけど、洗面台やシャワーから水が出なくて現地人の宿泊者たちはトイレで体を洗ったりしていた。それにしてもこんな辺鄙な場所で何の用事で泊まっているんだろう。(ひろ)
2013.03.18 Aoulouz – Taliouine 35km Hotel

今日は33kmだけだったのであっという間に到着して半日休憩。いつもよりちょっと高いけどいい宿がみつかって嬉しい。さっそくチェックインを済ませてTaliouineの町に食事に出かける。レストランやカフェも数件あって、雑貨店も十分にあって、パティセリーもある。モロッコはかなり小さな町にもパティセリーがあって、パステリーやパンオショコラ、小さなケーキが手に入って味も悪くない。大きな町になるほど洗練されたパティセリーが増えるから無論大きな町のほうがそういう点では楽しみなんだけど、チョイスがあるけどありすぎない、全てが目に付く範囲にちんまりとまとまっているサイズの町は何せ楽で心地いい。それに加えてここTaliouineはどこの店にいっても人はいいし、町ゆく子供たちも元気良く可愛く挨拶をくれて気持ちがいい。「どこから来たんだい?」「ようこそ、モロッコへ」「よい旅を」と、そんなシンプルな会話だったりするけど、一言一言が温くて嬉しい。
昼ごはんはビーフチシューのようなものを食べる。タジン、バーベキュー以外のものがあるなんて珍しいし、美味しかった。午後はたっぷりと休憩。(ようこ)
2013.03.19 Taliouine 0km Hotel

朝起きたら思った以上に体が疲れていた。少し高いけれど部屋は快適だし、インターネットもあるし、町の雰囲気はいいし、急ぐ旅でもないし、ということで今日は急遽休憩にする。朝の二度寝が最高だ。宿には快適なサロンも付いていたので、そこでネットをしたり地図を広げて今後のルートを検討したりしてのんびり過ごす。1階のレストランでしか使えないと聞いていたWIFIも普通に3階の部屋で使えたし(それを宿の人に言ったら驚いていた)、昨日は微妙なぬるさだったシャワーも今日は何かを修理したようで絶好調の熱さになっていて、ますます快適度アップ。
この先は未舗装の峠を越えてトドラ渓谷に至るルートを予定したのだけど、実はマラケシュであつし君にホイールを組んでもらった時にリムが割れているのを発見してしまった。ダブルウォールリムの外側の壁(チューブに面した壁)が数か所バキバキに割れていて、今のところは走行に支障はないけどいつ崩壊するか分からないという状況。こんな状況で未舗装路を走るのはあまりに危険なので、ルートを変更してワルザザート経由の幹線道路でトドラ渓谷に向かうことにした。モロッコ走行はまだまだ続くけど、最後まで持ってくれるんだろうか。
破損したポンプはアマゾンで購入して実家に送り、EMSで実家からフェズの郵便局止めに送ってもらうことにした。前回マラケシュに送った自転車部品(ハブ)はイギリスの通販会社からDHLで送ってもらったので関税がめちゃくちゃ高くてショックだったのだけど、(4500円の商品に1万円の関税ってありえない)、今回は大丈夫だろうか。(ひろ)
2013.03.20 Taliouine – Tazenakht 82km Hotel

まる一日休んだっていうのに何だか調子が悪い。でもさすがにもう一日休むのは気が引けたので出発。今日もシトシト寒い雨が降っている。天気予報どおり午前の後半から青空が見えてきて晴れてきてくれた。今日は結構登るつもりでいたのだけれども、意外とあっという間に登りきって楽々の82kmだった。寒くて凍えそうだった朝がウソみたいに、昼からは日射病になりそうなくらい暑かった。Tazenakhtは昨日より小さなジャンクションの村なのだけれども、やたらカーペット屋が沢山あった。外国人用なのか、モロッコ人ようなのか分からないけれども、ここはカーペットの名産地なのかな。この村でもいい宿に泊まる。シャワーも熱々で大量に出るし、部屋は綺麗でベッドもよい硬さ。宿のスタッフたちも気持ちがいい人たち。モロッコの宿は平均的にクオリティーがよくていい。夜は干からびたタジンを食べる。夜のタジンは昼の残りものってことを覚えておかなくちゃね。干からびタジンはまずかったけど、帰り道に買った焼きたてパンは美味しくて、明日の朝用に買ったのに半分食べちゃった。(ようこ)
2013.03.21 Tazenakht – Ouarzazate 87km Hotel

ホテル併設のカフェでコーヒーを飲んでから出発。モロッコのカフェオレは泡がクリーミーでなかなか美味しい(たまにはずれもあるけれど)。僕らが使っているミシュラン地図にはお勧めシーニックルートに緑色が塗られているのだけど、今日走るルートには緑色がなかったので全然期待していなかったのだけど、なかなかどうして素敵な風景が続く。遠くに見えるうっすら雪をたたえたアトラス山脈と荒涼とした風景とのコンビネーションが美しい。最初に少し登った後は下り基調の簡単快適な道だったので気分よく快調に飛ばす。
マラケシュからの幹線道路に合流した後は一気に車通りも多くなり、しかも向かい風が吹いていたので走りにくい。ワルザザートは思っていた以上に大きな街で、町の入口(無意味に立派な街灯が並んでいる)から町の中心に到着するまでが長くてくたびれる。本日のホテルはガイドブックに安宿として載っていたのだけど、外観がやけに立派だったので入るのに躊躇する。でも入ってみれば中は至って普通の安宿だった。ホテルの目の前にお酒を売っているスーパーがあったので、ポテトチップスをつまみにビールを立て続けに3本空ける。ついでにしばらく都会はないからと言い訳をして夕食はピザ。ピザの味は微妙だったけど、久しぶりに都会を満喫してなんだか満足だ。(ひろ)
2013.03.22 Ouarzazate – Boumalne Dades 113km Hotel

ワルザザートは雰囲気のある街で、もう一泊くらいしてもよかったかなと思えたところだった。砂漠へバスで行ったときも往復で2回通りかかった街だったけど、バスから見た街の印象とは全然違っていた。やっぱりバスで通りかかるくらいじゃその場所の雰囲気っていうのは分からないものだなと思う。
今日は強烈に暑い。3月ですでにこんなに暑いのだものこの国は絶対に夏には走れないなぁと休憩にコーラ1リットルをグビッと飲み干しながら思う。お昼にお腹がすいてきたものの、日陰もない、レストランもないで、クラクラしていたら一軒の建設中のガススタが現れたので、影を借りる。工事のおじちゃんたちは何故か英語が喋れて、「暑いから建物の影で休ませてね」っていうと、「はははー、これで暑いって?モロッコではこんなのまだまださ、50度くらいになるからねぇ。これは涼しいというのだよ」と大笑いされた。影に入るとジャケットが必要なくらい涼しい。1時間くらい休憩させてもらって再出発した。
後半は可愛らしい村々が点在していた。村が何十キロもずっと続いている場所って世の中そんなにない。たとえば東京から埼玉の実家に自転車で帰るときなんて4,50kmひたすら住宅や商店が続いていて、どこからどこまでが何区でというのは看板を見落とすと分からなかったりする。そういう場所は世界中でそんなになくて、密集度は桁違いだけれども、思わず日本を思い出す道だった。
今日は距離の割りに楽だった。Boumelne Dadesは思っていた以上に小さな町で手頃な宿が2軒しかみつからず、町に入って一軒目のインド風のうざいおじさんが宿主の宿に仕方なく泊まることに。シャワーは予想外にちゃんと熱いシャワーだったけど、ベッドのスプリングが最低で、寝心地が最悪だった。モロッコの町というのはカフェだらけで、夕方にもなるとおじさんたちが一杯のコーヒー、もしくは小さなポットのお茶を何人かでチビチビと分け合って何時間もカフェで喋り続けている。カフェに行けない人たちは、もしくはカフェですでに何時間もお喋りを続けて、さあ帰ろうかと店を出たものの帰らず喋りつづけている人たちは、広場の階段などに座り込んでお喋りに花を咲かせている。何をそんなに喋ることがあるんだろうかと思うほど、男たちがグループになってたむろっている。モロッコ人はかなり噂好きらしい。モロッコには住めないなぁと思う。(ようこ)
2013.03.23 Boumalne Dades -Gorges du Todra 22km+64km Hotel

朝6時に起きて空荷でダデス渓谷に観光に出かける。ガイドブックには6kmほど先にビューポイントがあると書いてあったのだけど、10kmくらい進んでも全くそれらしき場所がない。近くにいた地元民に聞いたらあと10kmは先だよと言われてしまい、二人してシュンとなってしまった。結局途中であきらめて宿に引き返す。
朝食にオムレツとチャイを食べた後、気を取り直して再出発。今日は立っているのも大変なくらい強い追い風が吹いていて、しかも舗装状態は完璧で、さらに緩やかな下り坂が続くという最高のコンディション。一番重いギアで快調に飛ばす。普通に漕いでいるだけなのに時速は40kmから50kmくらい。これは笑いが止まらない。結局50kmを1時間半もかからずに走り切ってTinerhirの町に到着。
町でお昼を食べようと目に付いたタジン屋で値段を聞く。小さなタジンが400円(ふつうは200~250円)とボッタクリ価格だったので断って別の店を探しに行ったら、店の人に「ちょっと待て。安くしてやるから」とずっとしつこく追いまわされた。モロッコは観光地か否かにかかわらず、どの町にもこういう面倒くさい輩がいるので面倒くさい。
正直そうなおじさんがいるお店を見つけて昼ご飯を食べてからトドラ渓谷に向けて走る。少し急な坂道を登った後は、緩やかで快適な道が続いていて気持ちがいい。渓谷を流れる小川がとてもきれい。今まで見てきたモロッコの川はほとんど濁っていたので、こういう清流をみるのが新鮮だ。トドラ渓谷にある日本人宿に到着したら、先にあつし君が到着していて出迎えてくれた。あつし君がここからメルズーガの砂漠にバスで往復してくるというので、帰ってきたらしばらく一緒に走ることにした。それまでトドラ渓谷でのんびり休憩だ。(ひろ)


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