Mar,26,2013

マラケシュ観光を終え、いよいよモロッコ自転車旅がスタートする。
残り数か月に迫った旅の期間を考えれば、このモロッコが交通機関を利用しないで最初から最後まで自走できる最後の国になりそうだ。
といっても実際はカサブランカ空港からマラケシュまでバスに乗って移動してきたのだけど、まあそれは大目に見よう。モロッコはあくまでマラケシュからスタートということにしようじゃないか。

自転車旅の楽しさは、何もため息が出るような美しいルートを走り続けることばかりじゃない。
雨が降ったり風が吹いたり、暑かったり寒かったり、何も見えなかったり風景が単調だったり、そういう楽しくない道を延々と走る日々も、後から思い返せばその国のハイライトを走ったことよりも強烈なインパクトを残すことがある。そこに思いがけない素敵な出会いでも加わればなおさらだ。
そんな楽しい時も楽しくない時も全部ひっくるめて、はじめて旅と呼べるのだと思う。
きっとこういう考え方を男性陣はロマンと呼び、女性陣は意地とかミエと呼ぶのだろう。


毎日何杯も飲んだマラケシュの絶品オレンジジュース。出発前にも立ち寄って最後の一杯を楽しむ。

今は旅ブログに宿情報にGPS情報と掃いて捨てるほど情報が溢れていて、走行ルートすら決めかねてしまうほどエンドレスに情報を集めることが出来る。
とはいえ「ここが楽しい」「ここはつまらない」という他人の感想を読み漁り、それを鵜呑みにして自分のルートを設定するのも何か違う気がする。
素敵だとか感動したとか美味しかったというのはあくまでも個人的な感覚なのであって、それと出会った時のタイミングや精神状態や一緒にいた人や天候などで大きく変わってくるものだし、
「あの街に似てる」「あそこの方が素敵じゃない?」などと、その人のこれまでの体験や経験のフィルターを通した上でそうした感想が湧いてくるのだから、誰もが同じ場所で同じ感情を持つ事はありえない。

だからといって情報収集なんて無用だ突っ張るつもりはさらさらなく、むしろ何も調べずただ何となく走り続けて素敵な場所を知らず知らずのうちに見逃してしまうのは勿体無いと思う訳だし、せっかく情報があるならそれを有効活用してより楽しい旅にしたいと思う訳であって、
何だかんだと言いながら結局はネットに釘付けになってあれこれ調べ物をしては、ますます頭でっかちになっていく。
溢れる情報と付かず離れずの絶妙な距離を保つというのはなかなか難しいのだ。


のんびりーを絵に描いた風景

話が変な方向に飛んでしまったけれども、何が言いたいのかというと、
「どの道を走ろう、ここはバスで飛ばす?などとあれこれ調べたり悩んだりせず、“ここからあそこまでひたすら走る”というシンプルな旅がしたい!」と叫びたいのだ。
バスどころか飛行機を駆使して大胆に移動し続けてきた最近の反動なのか、そんな地べたを這う自転車旅本来の地味な姿に戻るのが楽しみでしょうがない。

つまらない意地?単なるミエ?いやいやこれこそ溢れるロマンなのだ。


モロッコのBIO製品といえばアルガンオイル。アルガンの木によじ登ってアルガンの実を食べるヤギたち。かなり異常な光景に最初はビックリ!

もうバスに乗らなくていいのだー!
それだけでたまらなく開放された気持ちになり、意気揚々と始まったモロッコの自転車旅。
颯爽と自転車にまたがり、マラケシュの街を駆け抜けて、まず目指すは海岸沿いの街エッサウィラ。

颯爽と、自転車を、漕ぎながら、・・・んっ?
あれ、何かおかしい。何となく自転車がバラバラな感じがする。
どこが悪いとすぐ特定できないけど、4年半乗ってきた相棒からは今まで感じたことのない嫌な感触が伝わってくる。なんだこの自転車の悲痛な叫びは?

自転車との一体感を取り戻せないまま1日目の走行を終え自転車を改めてチェックしてみたら、なんと後輪のハブ(車軸)がガタガタで後輪がまっすぐ回っていない。
これはどうやら調整が甘いというレベルじゃなく、交換が必要な緊急事態だ。


モロッコの子供たちはみんなフレンドリー。こういうひと時がたまらなく楽しい。

タイヤの軸といえば自転車の心臓部。ローカルのチャリ屋で適当な安パーツに交換するような箇所じゃない。これはキチンとした部品を手に入れなければ。
いつ自転車がバラバラになるかビクビクしながら何とか2日目も走り切ってエッサウィラに到着し、観光もそこそこにパソコンに向かって(はあ、またネットに釘付けだ)、バイクショップを探す。
ところが奇妙なことにネットで懸命に探しても、チャリダーの先輩たちに聞いても、欧米スタンダードのパーツを扱うバイクショップが全く見つからない。
ううむ、こんなにヨーロッパに近い国なのに、この国にはローカルチャリ屋しかないようだ。
どんな国にも首都に行けばバイクショップの一つや二つはあるというのに、何だこの国は!

ローカルチャリ屋で数百円の安物を装着して当座を凌ぐことも考えたけど、それではこの先ずっと、いつ壊れるかとびくびく心配しながら走り続けることになる。そんなの全然楽しくない。
色々悩んだ結果、ネットショッピング&DHLを利用して交換パーツを発注することにした。
送料は少し高いけど最短お届けのDHLだ。きっとすぐに手元に届くに違いない。


モロッコの食事といえばタジン。モロッコ人はランチに食べるようで、昼時にはタジン鍋が店先に並ぶ。

ところがそんな淡い期待もむなしく、週末を挟んだり通関に手間取ったりした結果、結局パーツを手に入れるまで約2週間かかることになってしまった。
2週間は長い。走る気モード満々だった二人にとって、2週間は気が遠くなりそうなほど長い。
こんな出端の折られ方があるなんて思っても見なかった。

実はモロッコに来る直前、ニュージーランドで自転車をメンテナンスしてもらっていた。
その時スポーク(車輪の骨組み)をチェックしてもらっておきながら、ハブ(車軸)の異常には気付かなかった。もしあの時気付いていれば、その場であっという間に交換してもらって、今頃は地べたを這う幸せな自転車旅をしていられたのに。
そんな自己嫌悪が頭の中でグルグルと渦を巻き、ぐうの音も出ないほどテンションが下がって落ち込んでしまう。落ち込みすぎて自分が学校でいじめられる夢を見て目覚めたほどだ。

そんなこんなで地べたを這う旅はわずか2日間で終わりを告げた。
しばらくエッサウィラに滞在した後、再びバスに揺られてマラケシュまで引き返す。
バス・・・再び自転車ごとバスに乗るなんて、僕のロマンはどこまで儚いのだろう。
せめてパーツが無事に届きますように。

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