Mar,11,2013

私たちの赤裸々な日常をつづったチャリダー日記、ニュージーランド南島編Vol.3。
今回は、ピクトンから南下、モーレスワースに至る直前で急遽クライストチャーチに戻るまでの日記です。
なお、GoogleMap、標高プロファイル、距離一覧表、簡単なホテル情報をNotesにまとめてありますので、そちらも参照して下さい。→Click Here!

2013.01.24 Picton – Queen Charlotte Track 25km CampSite

両親が来るまであと8日。NZの最後は南島の北端ピクトンから未舗装路モーレスワース(Molesworth)を通ってクライストチャーチまで走って戻るルートに決定。でもその前にピクトン周辺にあるクイーン・シャルロットというトレッキング&バイキングルートを少しだけ走ることにした。入り組んだ海岸線が美しいと評判のルートだ。でもあいにくというかやっぱりというか、今日は朝から曇り空。前後1週間ずっと快晴だったのに、ピンポイントで今日だけ曇り空。これじゃ折角の美しさが半減じゃないか。NZの天気には徹底的に嫌われ続けている。
それでも今日は無理やりテンションをあげていくことに決めた。冷えた白ワインを買い込み(天気が悪いから冷えたままだ)、名物のムール貝を買い、途中で景色のよい場所を見つけてはワインをちびり、ムール貝をパクリとしながらのんびり進む。天気が悪いとはいえ、このあたりの風景は確かに美しい。海岸沿いは切り立った崖になっているので、海岸ぎりぎりまで木々がもりもりと茂っている。それに青い(はずの)海と複雑な海岸線とが重なり合って素晴らしい風景だ。
これで天気が良ければ・・・と下がり気味になるテンションを必死にひきとめつつ、晴予報の明日に備えて今日はさっさと終わらせようじゃないかと、クイーン・シャルロットの入り口にあるDOCキャンプサイトで終了することに。明日こそ、快晴の中でクイーン・シャルロットを満喫するのだ。
キャンプサイトは道路から急勾配の階段を下った海岸沿いにあった。歩行者用の急な階段をフルパックの自転車を押しながら降りるのは想像以上に大変で腕がプルプルする。キャンプ場にはちょうど干潮時に到着したので海岸にはムール貝が無数に落ちていた。小雨と強風の中、ウハウハ気分で貝を拾っては蒸し焼きにする。白ワインがないので水で蒸しただけだけど、それでもなかなかうまい。モリモリと食べ続け、そろそろ貝も飽きてきたのでご飯とチキンで夕食を作ろうと準備をしながら、ふとガソリンボトルに触ってみるとめちゃくちゃ軽い。しまった、貝を蒸すのに使いすぎて夕飯を作るだけの燃料が残っていない・・・。なんてこった、心配性の僕らはこの4年間で燃料を切らせたことなんてただの一度もないのに、よりによってここで燃料切れですか。はあ、なんかもう嫌になっちゃうなー。せめて米だけは食べようとガソリンボトルを傾け、ポンピングをしまくり、瀕死の火力ながらも白米だけは炊き上げた。結局夕飯は白飯+フリカケといういつものヒモジイ組み合わせだ。
夜、ようこが突然ガバッと起きて「息が苦しい・・・」ともがきだした。あれ、貝にでも当たったのか?(ひろ)
2013.01.25 Queen Charlotte Track – Picton 25km CampSite

昨日は息苦しくて起きた。どんな体勢を取っても苦しくて、必死でもがいているうちに眠りについた。朝再び息苦しくて起きる。起き上がってみると胸の奥が痛い。貝に当たると胸が痛くなったりするっけ?それに吐き気もなければ食欲もあるし、貝は関係ない気がする。
朝はどんよりと曇っていた空もみるみるうちに晴れてきて、クイーン・シャルロットを回って帰りたい気持ちでいっぱいだったけれども、胸の痛みは明らかに異常で、とりあえず早く町に戻らなくてはいけない気がしてクイーン・シャルロット行きを諦める。なんとか走れるものの、呼吸が荒くなると特に痛みが増して辛い。でも胸の辛さに反してすっかり空は快晴。昨日通ってきた道も今日はもっと美しく見える。「ああ、クイーン・シャルロット、、、」
ピクトンに戻ってインターネットで症状から病気を探してみる。心筋梗塞、狭心症、、、でも何か違うような気がするし、違っていてほしい。夜になると椅子に座っていればあまり痛みを感じなくなったけど、体を曲げると痛みがある。結局寝付くまで痛みつづけた。
晩御飯、ひろはせっかくムール貝で有名なところにいるからとムール貝のパスタに。私は昨日からの胸痛はムール貝のせいじゃないとは分かっているけど何となく貝は避けたい気分だったので遠慮しておいた。プリプリしていて美味しそうなムール貝が沢山盛られたお皿が目の前にあって、思わず手が伸びそうだったけど、「貝の味が薄くて旨みがない」と不満げなひろの一言にだいぶ救われて我慢できた。(ようこ)
2013.01.26 Picton – Seddon 53km CampSite

今日は全く痛みがないようなので、モーレスワースの入り口Seddom(セダン)まで走って再び様子を見ることにした。最初は疲れやすそうな感じだったけど、そのうちいつもと同じ調子に戻ってきたので少し安心だ。セダンのキャンプサイトはただの空き地といった風の殺風景な場所。生活臭がたっぷりと漂い、長居していそうな地元民で溢れていた。ここにはいろいろ人間ドラマが詰まっていそうだ。
夜になっても調子は悪くなさそうだったけど、この先は3日間ほど交通量の少ない未舗装路に入る。そんな僻地を走っていて万が一再発でもしたらシャレにならない。ただの体調不良や筋肉痛なら心配ないけど、場所が場所だけにひょっとしたら何か心臓系の疾患かもしれないし、早めに病院でチェックしてもらうに越したことはない。夜、テントの中でいろいろ話した結果、モーレスワースは諦めてバスでクライストチャーチに戻って病院にかかることにした。
こんなことだったら一昨日のうちにしっかり話し合って一刻も早く病院にかかるべきだったのだ。今さらながらこの甘い判断が致命的な結果にならないかと俄かに不安になって、なかなか寝付けなかった。でも当の本人は隣で爆睡している。大物だ。(ひろ)
2013.01.27 Bus to Christchurch 0km CampSite

無事朝を迎えられてホッとしたというと、ひろは呆れた顔で「よく寝てたよ、ようこ」と言った。
快晴で絶好の自転車日和の中、バスで来た道を再びバスに揺られてクライストチャーチに戻る。不幸中の幸いといえば目的の病院がバス停の目の前だったということ。荷物がたっぷり載った自転車で救急病院(あいにく日曜日のため救急病院しか開いてない)に乗りつける人もあまりいないだろう。慌てて入ってきた私に職員は「事故ですか」と聞いた。そうよね、そう思うよね、普通。
それにしても病院に入るなり、その「事故ですか」と聞かれる前に、「まずは基本料をお支払いください。」と会計カウンターを指さされたのにはびっくりした。確かに合理的だけど、若干頭がパニックになっているところに「基本料1万6000円になりますがよろしいでしょうか」と言われて心臓がバクっとした。支払いが済んだらやっと、「今日はいかがしましたか」という普通の質問をされ、ようやく落ち着いた。
びっくりのスタートだったけれど、まずはナースによる丁寧な質問とメディカルチェック、そしてドクターによる検診と丁寧な聞き込み&解説は、病院嫌いの私もすっかり満足のいくものだった。病院に行くとつい緊張して思うように症状が伝えられなかったり、ちゃんと質問できなかったりして、家に帰ってから後悔したりすることが多い。でも今回はまずナースがゆっくりと症状を聞いてくれ、その内容をドクターが読んだ上で、再び私が症状を伝え、ドクターが鋭く伝え足りないところを聞いてくれる。助け舟を沢山出してくれながら、私が伝えたいことを伝え終わるまでゆっくり話を聞いてくれる。そして検診し、状態を丁寧に解説してくれた。結果が問題なしということもあったけれど、ナース、ドクターの対応のよさに、なんだかとても満足した病院体験だった。日本で病院に行くと、「そんなことで病院に来たんですか?」というような態度でろくに説明もせずに「大丈夫、問題なし。」と突き放されることが多かった。医者にとっては「そんなこと」でも一般人にとっては心配だから医者にかかっているわけで、その辺を世の中のお医者さんは理解してほしいと思う。
ともあれ、結果としては筋をひどく違えただけで内臓系は全く問題がないということが分かってホッとした。一過性のもので痛みが引いた今では何の支障もないそうだ。どうやらクイーン・シャルロット初日のキャンプ場に降りる急な階段で痛めたみたい。今まで4年間そんな筋違いをしたことがなかったのにこのタイミングで痛めてしまうなんて、つくづくNZでは運が悪いとしか言いようがない。
今日は病院から一番近い市内のキャンプ場に泊って、明日からどうするかを考えることにする。快気祝い&やけくそ祝いにワインと肉を買い込む。今日のキャンプ場は雑然としていて居心地の悪いキャンプ場だった。(ようこ)
2013.01.28 Around Bank Peninsula 59km Bushcamp

ちょっと大げさだったねー、と笑って済ませられる結果で良かった。さて、これから両親が合流するまでの4日間をどうしようか。今からモーレスワースに戻る時間はない。他に長距離バスに乗ってまで行ってみたい場所もない。でもクライストチャーチで4日間もぼーっとするのはもったいない。のんびりボーっとするにはこの国は物価が高すぎるのだ。いろいろ検討した結果、クライストチャーチ近くのバンクス半島をくるくるっと2,3日かけて回ろうか、ということになった。
70kmほど走るとキャンプ場があるという情報と観光案内所でもらった簡易マップだけで、特に下調べもしないで気軽に走り出す。クライストチャーチ郊外でバンクス半島に出る道を地元民に尋ねたら、「あそこに丘が見えるでしょ、その向こう側よ」と軽く言われてしまう。丘って、あれは丘じゃなくて峠じゃないですか。実はバンクス半島は火山の爆発でできたもので、マドレーヌの入れ物を逆さにしたみたいにヒダヒダな地形なのだ。目指すキャンプサイトはそのヒダヒダを数回越えたところにあって、しかもヒダの一つ一つが300-400mアップの激坂続き。それに気が付いたのは2度目のヒダヒダを登っている時で、すでに進むも地獄・戻るも地獄という状況に陥っていた。しかも途中で地元のおじさんが「この先は未舗装路だけど、大丈夫か?」と心配そうに声をかけてくれた。え、未舗装路なの?そんなの知らないっす。やっぱり情報不足で走りだすのは危険だ。さらにお気軽サイクリングの予定だった僕ら、今日はカレーでも作ろうとジャガイモや人参といった重い野菜をたくさん持ち歩き、昨日の残りのワインを1L持ち、しかも他の旅人からもらったビールも3本持っている。無駄な荷物ばかり持っているので重くてしょうがない。
結局4つ目か5つ目のヒダヒダに取り掛かり、半分くらい登ったところで「そこまでしてそのキャンプ場に行く意味はあるのか?」と、二人のやる気の糸はプツンと切れてしまった。その場でくるっと反転してもと来た道を戻り、再びヒダヒダを数個越えたところで野宿する。いったい何をしているんだ?やっぱり無駄にあがいたりしないでクライストチャーチで大人しくしていればよかったのだとネガティブな思いに満たされつつ、野宿なのにカレー&ワインという豪華な組み合わせの夕食を堪能するのでした。(ひろ)
2013.01.29 Goveners Bay – Christchurch 16km CampSite

昨日越えた大きな峠を再び越えてクライストチャーチに戻る。それにしても昨日は進むのを諦めてよかった。坂の途中で「もうだめだー」と足が止まった。すぐにまたクライストチャーチに戻るつもりだったし、別にどうしても進まなくちゃいけない道な訳ではないという気持ちがあったというのもあるけど、「参った参った、もう駄目だ登れん。」と思ったのはこの旅で初めてだ。でもこれ以上私の事情でひろを止めてしまうのは申し訳ないという一心でなんとか登っていた。だいぶ先を登っていたひろがクネクネコーナーの一角で待っていて、「もう先に進むのはやめる?」って声をかけてくれた時、ひろの後ろに後光が差し、ひろが神に見えた。ありがたいお言葉、ははー、その通りにします。来た道を下りながら、ブレーキを引く手がつりそうになるくらい急な坂だったことに気が付く。「なにやってるんだかね。」と可笑しくなって笑ってしまった。
前回泊ったクライストチャーチのキャンプ場は雑然として落ち着かない所だったので、別の場所をトライすることに。街外れの一番安いキャンプ場に向かっている途中に、最安ではないけど両親が来ている間荷物を無料で預かってくれる&空港までフリーで送迎してくれるというなかなかいい条件のキャンプ場を見つけて、様子見がてら1日泊ってみることに。もう無駄なあがきはせず、後の数日はクライストチャーチでだらだらするのだ。スーパーに自転車で買い物に行ったら、自転車が倒されて調子が悪くなった。こんな時に限ってハンドルバッグの中にカメラが入っていた。ううん、何だかカメラの調子が悪いぞ。(ようこ)
2013.01.30 Christchurch 0km CampSite

今日は朝から気持ちの良い快晴。でももう天気に一喜一憂する日々は終わり、今日こそ大人しくキャンプ場で過ごすのだ。そして今日は一大イベントが待っている。ダウン用洗剤を買ってきて寝袋とダウンジャケットを洗うのだ。-5℃まで対応するはずの寝袋も、気が付けば2年以上洗っていないのでダウンがペッチャンコになっていて保温が効かず、寒くてしょうがない。ダウン用品を洗うには大型乾燥機が必要なので、乾燥機がある場所で時間に余裕ができたら洗おうとのんびり構えていたら、気が付いたら2年間も放置してしまったのだ。
丁寧に丁寧に手洗いし、真っ黒な洗い水をすすいでやったらシャワーを浴びたマルチーズ犬のようにペシャンコでみじめな姿になってしまった寝袋君たちも、快晴の乾燥した気候のお陰でみるみると毛並みが回復し、最後に乾燥機にたっぷりかけてあげたら感動するほどフカフカに戻ってくれた。すごい、まるで新品に戻ったみたいだ。今晩から寒い思いをせずに眠れるぞ。(ひろ)
2013.01.31 Christchurch 0km CampSite

スーパーは遠いけど自転車があれば15分くらいで行けるし、フリーwifiの空港までも10分もかからないし、キャンプサイトはのんびりしているしで、もう何もしないで連泊することに。このキャンプ場は空港送迎無料というサービスがあるからか、ここで旅を終わらせる人が多いようで、旅人たちがフリーボックスに色々と置いていく。すでに小麦粉やらスパイスやらボウルやらをゲットしていたのだけど、今朝はなんとフリーワインを発見。キッチンを掃除しているスタッフが「ラッキーだね、ワインがあるよ。早くもらっていかないとすぐになくなっちゃうよ」と後押ししてくれたので、遠慮なくいただきー。
ひろの自転車をチェックしていたら、締め直したはずのスポークが再び緩んでいることに気が付く。やっぱり一昨日倒れされたのが悪かったようだ。ちゃんと整備してもらおうと自転車屋を巡る。数時間で見てもらえるかと思っていたのだけど、真夏のハイシーズンのせいでどこの自転車屋も時間がかかりそうだったので、いっそのこと両親が来ている2週間預けてしまうことに。ついでに私の自転車もスーパーで倒れてからめっきり調子が悪いし、ネパールの不安なメカニックにホイールを組んでもらっていたので、不安解消のため全体をチェックしてもらうことにした。
自転車屋からバス&徒歩でキャンプ場に戻る。自転車がないと街中の移動が不便でしょうがない。キャンプ場でキャロットケーキを焼いたらお腹いっぱいになってしまい、せっかく買ってきたラム肉が食べられなかった。明日は一人300gのラム肉ステーキが朝食になりそうだ。明日はいよいよひろの両親が来る。なんだか遠足前のようにそわそわする。(ようこ)

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