Mar,02,2013

NZ走行の最後は運に見放された日々だった。
一旦クライストチャーチまで走って戻った後は、バスに乗って南島北端のピクトンに移動した。
そこでクイーン・シャルロットという海岸沿いルートをくるりと周った後、モーレスワースという未舗装路を通ってクライストチャーチに再び戻ってくる事にしたのだ。

ところが楽しみにしていたクイーン・シャルロット、その日だけピンポイントで雨が降った。
海岸線が美しいと評判のルート、海は晴れてナンボだというのに、その日だけ見事に雨。
その前1週間もその後1週間も、ずっと晴れていたというのに、その日だけ見事に雨。
はあ、もう嫌になっちゃう。

そして雨の中テントで寝ていたら、突然ようこが「心臓が痛い、呼吸が苦しい」ともがきだした。
経験したことのない種類の痛みだし、場所が場所だけにもしや狭心症?心筋梗塞?心臓や肺の病気?命にかかわる?と不安は募り、そしてそんな視点で調べれば調べるほど過激な情報ばかりが目に入って、ますます不安になる。
痛みは翌日にはひいたものの、このまま未舗装路の僻地に突入して再発したらシャレにならないし、無事にクライストチャーチに到着したとしてもこの先ずっと不安を抱えたまま旅をすることになってしまう。二人で話し合った結果、再びバスに揺られてクライストチャーチで病院にかかることにした。
結局、筋を違えたせいで肋骨付近が炎症したための痛みで、痛みが治まれば何の問題もない一過性のものだと判明した。
問題がなくて何よりだったし、実際その後は何事もなかったかのようにケロリとしているのだけど、結局そのために時間が足りなくなってモーレスワースも走れずじまいで終わってしまった。

それで僕の両親が来るまでに数日余ったので、クライストチャーチ近郊を適当に走ることにしたものの、すでに気持ちが切れていたのか何となく気分が乗らずにすぐとんぼ返りしてしまい、残りの日々はクライストチャーチのキャンプ場でのんびり過ごして終わってしまった。


NZで一番ヒットした看板。「左側通行ですよ」とこんなに分かりやすく表現した看板も珍しい。

雨だらけの前半戦に続き、NZ後半戦はタイヤ破裂に始まって、スポーク切れ、ひどい向かい風、当たらない天気予報、テントが川に流されかけ、そして狭心症疑惑と、ハプニングの連続だった。
なんか僕らは今回NZに呼ばれていなかったなあと思う。
でも決してNZが悪いんじゃない。
バラエティに富んだ美しい自然に溢れているし、NZ人は衝撃的にフレンドリーだし、天気は運次第だしそれに物価高は円安と重なったタイミングが悪かったせいもある(そうでなくても物価が半端なく高いのだけど)。
とはいえ、そうと頭で分かっていても、それでもやっぱり完全燃焼できなかった感が否めない。



上の写真は同じ場所で曇り空の昨日。天気がいいと海の色も輝いて見える。やっぱり晴れてナンボなのだ。

きっとこの国が島国だというのが、僕らの期待値のハードルを上げていたのだと思う。
例えばアジア横断とかアフリカ縦断とか、そういう陸続きルートの中にNZが存在していたらお得感たっぷりな気持ちになって「いやあNZって素晴らしい!」と絶賛していただろうし、天気が悪くてもまあ仕方ないと思っていたに違いない。
またNZやオーストラリアに住んでいる人がちょっとした休暇を利用して旅行するのだったら、こんなに気軽に素晴らしい風景が楽しめる場所なのだから、たまらないに違いない。

でも僕らは、少なからぬお金と時間をかけて、わざわざNZにやって来た。僕らの場合は両親が来るという別の(しかもメインの)理由があったのだけど、それをひとまず置いておけば、やっぱり「遠くまでわざわざやってきました」という位置付けになってしまうのはやむを得ない。
しかも北欧やスイスもびっくりの物価高も重なって、「これだけ時間とお金をかけてわざわざやってきたんだから頼むよ、NZさん。」と嫌が上でもハードルが上がってしまうのだ。
まあ普通の短期旅行だったらどの国を旅行するのも「わざわざやってきました。」という位置付けになるのは同じ事なのだから、これは僕らみたいな長期旅行者の贅沢なタワゴトにすぎないのだけど。


クイーン・シャルロット入り口のキャンプ場。

そして肝心の楽しみにしていたNZの風景、どこものどかで平和で素敵だったのだけど、天気が悪かったせいもあってか、“これだ!”という心震える絶景に巡り合えた訳ではなかった。
これで独自の文化や美味しい食事、深い歴史でもあればまた違う楽しみ方もあるのだけど、それらは全く期待できない、NZはあくまで自然一本勝負の国なのだ。
最後まで僕らが勝手に上げてしまったハードルを乗り越えてくれるサプライズはないままだった。


貝取り放題!ちゃんと「食べれる分だけしか取らないでください」という親切な看板もあった。

でもこれから僕の両親が来る。
これまでの自転車&テントというスタイルから一変、レンタカー&宿という全く違う旅のスタイルで、旅行慣れしていない両親を通じた全く違う視線で、そして何より両親とようこと4人で過ごす幸せな時間を通じて、全く違うNZが見れるに違いない。
NZが素敵な国なのは間違いないのだから。


大振りで美味しいけど、正直ホタテや牡蠣の方が味は一枚上手。


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