Jan,19,2013

ゴーキョ・リから降りる時、あまりの満足感に「ああトレッキングはもう終わったー」という気持ちになった。
でも家に帰るまでが遠足、カトマンズに帰るまでがトレッキングなのだ。
トレッキングの最中、二人の暗黙の了解になっていたのが、
「帰りはルクラから飛行機でカトマンズに飛んでしまおう。」だった。
ゴーキョからルクラは2日の距離だから、順調なら3日後には飛行機でカトマンズに戻れる。
もう十分歩いたから飛行機のチケットを買ってワープしてしまおう、そう思っていた。

でも世の中はそんなに甘くない。
ここから果てしない帰り道が始まった。

ルクラ・カトマンズ便は、少しでも風が吹いたり曇ったりするとすぐキャンセルされてしまうことで有名だ。
しかもここはネパール、フライトキャンセルになった場合は翌朝の便に優先的に乗れる、なんて甘いものではない。
翌日はもともとその日に飛ぶ予定の人が優先で、前日キャンセル組は空席があれば滑り込めるだけ。
しかも団体様は常に最優先、有力旅行会社や有力ガイドがついている人も優先というスペシャルルール(要するにコネ)もあるようだ。
そうこうしているうちに悪天候で翌日フライトもキャンセルになり、翌々日はキャンセル組が倍に増え、でももともと翌々日に飛ぶ予定の人が優先的に飛んで、次はコネのある人が先で・・・・
そうなると無間地獄、最悪の場合いつ飛行機に乗れるのかとイライラしながら何日も飛行場で待つなんてことになりかねない。
しかもそんなコネの世界で、個人かつ飛び込みでチケットを購入する僕らの優先順位なんて、限りなくゼロに等しい。


大量の荷物を人力で運ぶポーターたち。すさまじいハードワークだ。

結構なお金を出して「いったいいつ飛べるの?」なんてストレスをためるくらいなら、歩いて帰った方がいい。フライトの実情について情報を集めるほどに憂鬱な気分になり、結局はフライトで帰ることは諦め、脳みそじゃなくて筋肉を使おうと、バスが拾えるシバラヤというジリの少し手前にある村まで歩くことにした。


Wicked Cloud!


11月下旬にもなると川が凍り始める。

飛脚か修行僧かポーターかというくらい、ただひたすら歩き続ける。
長年自転車をこぎ続けて体力だけは無駄にあるので、体力に任せてひたすら歩く。
快晴の中で飛行機がルクラ空港から順調に飛び立っていくのを恨めしく眺めながら、ひたすら歩く。

毎日のように1000m級の峠があって、一日合計1500mアップは下らないという道のりだ。
そんな激しい高低差も手伝って、昨日まで雪山を見ていたのに今日はバナナの木を横目に歩く、なんていう変化に満ちた道のりだ。
山を降りるほどに緑がもりもりと増えていって、ダルバート(定食)に入っている野菜の種類もどんどん増えて行く。みかんなどのフレッシュフルーツも食べられるようになった。


エベレスト・ベースキャンプへの道中。。

でもトレッキング前半でも思ったけど、やっぱり僕らにとってネパールトレックはヒマラヤの雪山たちが見えてナンボなのだ。
緑深いネパールは自転車旅で既に堪能しているし、トレッキング前半でも十二分に歩いた。
別に急いでカトマンズに着いたところで何があるという訳でもないのだけど、「今回のトレッキングは終わり」という気分は変えらない。ひたすら黙々と山を越え、峠を越え、シバラヤに向けて歩き続ける。
ようこなんて途中で靴が崩壊して靴ずれが痛そうだったけど、それでも気合いで歩き続けていた。
何日も洗えずにガビガビのゴワゴワ、この世のモノとは思えない臭いがする靴下にもすっかり慣れた。
こうなると、もはや何かの修行のようだ。


建築資材だって人力で運ばれる。

結局、ゴーキョからシバラヤまで4日半、ナムチェからは3日半で歩きとおした。
地元民には普通のペースだけど、トレッカーとしてはなかなか驚異的なペースだ。
なんだかよくわからないけどやってやったぜ、という無意味な満足感に浸る僕ら。
セーブした飛行機代はカトマンズでの食い倒れに充てられるねと喜んでいる僕ら。
なんか筋肉バカだよなーと呆れながら、24日間に及ぶトレッキングは幕を閉じたのでした。


See you again,Himalayan Mountains!


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