Nov,30,2012

約2週間滞在したリシュケシュを出発して、一路ネパールを目指す。
リシュケシュからネパール国境までの約320kmは、デンマークもびっくり、スーパーフラットな大地がずっと続いていた。
そんなフラットな舗装路を、時速20km前後で快調に、そして無心でかっと飛ばす。
ガタガタ未舗装の山道を走ってきた今までとは全然違う感覚、別のスポーツでもしているみたいだ。

リシュケシュの街を出る時は、車とリキシャーで渋滞しているし排気ガスとクラクションは凄いしで大変だった。
こんな調子だったら幹線道路はものすごい交通量で死にそうになるんじゃないかと心配したけど、幹線道路といってもこのあたりはまだまだ田舎。心配したほどの交通量もなかったし、一歩幹線道路を離れれば畑に囲まれた静かな一本道を水牛タクシーが行き交う、そんなのどかな風景が広がっていた。


インドの平地では自転車に溢れている。それにしても人を載せたり荷物を載せたり、活躍しすぎ。

インドは似たような感じの町並みが続く。でも、地域にもよるのだろうけど、意外とインドもヒンドゥ一色でもなくて、よく見てみると実はイスラム教の村だったりするのが面白い。
カースト制度が根深いヒンドゥ圏では、下位カーストの人たちがカースト脱却のために集団でイスラム教に改宗するケースも多いのだそうだ。
そういえば、リシュケシュの宿のオーナーが「あの地域はイスラム教徒が多いから治安が良くない」と言っていた。その時は別の宗教に偏見があるのだろうと軽く聞き流していたけど、そんな何気ない発言もカースト制度と根深く関係していたのだ。
そんな生々しい現実を目の当たりにできるのも、超ローカルな場所を通る自転車旅ならでだ。


街を脱出するのは一苦労

それにしても人が多い。どこに行っても人、人、人、そして人。
ようこなんて、ちょっとその辺でトイレという訳に行かなくて大変そうだ。
そしてインド人の僕らチャリダーに対する反応は、世界に類を見ない。

まず1割の人は、僕らのことを全く気にしない。
まあこれはどこの国でも同じような割合だから、あまり気にならない。

そして3割の人が声をかけてくる。その声のかけ方が、なかなかインドだ。
子供のころ、外国人を見ると白目をむいて近づいて「ハロー、ディスイズアペン」とかいって茶化すガキ大将的な子がクラスに一人くらいはいたと思う。
その子たちが大集合し、大人の気ぐるみを着て集団で次々と立ち向かってくる、そんな感じだ。
要するに、幼稚でうっとおしい絡み方なのだ。
道路に立ちふさがって、「ヘイ、ストップ」を僕らを止めようとする大人、
おもむろに「うわぁ」と大きな声を出して僕らを驚かして一人で喜んでいる大人、
バイクに乗ってウヘーとか叫びながら延々並走してくる大人、
僕らの前でバイクの蛇行を始めて得意気な表情を浮かべる大人、
キコキコいう自転車で僕らにずーっと付いてくるリキシャーマン(これが意外と速くて振り切れない)、
僕らが休憩しているとどこからか集まってきて無断で自転車を触ろうとする大人に子供。
うう、もうやめてーと叫びたくなる。


どこを走っていも人、人、人。

これだけでも強烈な訳だけど、残り6割の人たち、これがさらに強烈なインド特有の反応をする。
「凝視」、なのだ。

道行くインド人は一様に表情が硬い。
顔立ちが濃いとかそういう問題じゃなくて、警戒心を丸出しにしたような厳しく硬い表情のままで、じっとこちらを凝視する。ただただ、ひたすら、とにかく凝視するのだ。
すれ違う人たち、追い越していくバイクの後ろに乗っている人たち、すれ違う車やバスの乗客。
みんな一様に、こわばった硬い表情で凝視。
こちらが挨拶をしても、にっこり笑って見せても、全くその硬い表情はピクリとも動かず、じーっとこちらを凝視し続ける。
こんな国は初めてなので、こちらも戸惑いを隠せない。


インド・ネパールの国境。掘っ立て小屋がぽつんとあるだけののどかな場所だった。

朱に交われば赤くなるとはよく言ったものだ。
人々が手を振ってくれる国では僕も手を振りながら走っているし、
笑顔を返してくれる国ではいつも笑顔でいられるし、
みんなが親切な国では、人から話しかけられるのが嬉しく感じる。

逆に相手の反応が「絡み」か「凝視」しかないと思ってしまうと、
次第に僕らも挨拶をしなくなってくるし、たまに話しかけてくる人を無視するようになる。
どの国にいっても選挙活動みたいに手を振ってあいさつをし続けるようこですら、今や無言で走り続けている。


こちらはネパール側。こんなのどかな国境も珍しい。

でもこれではいけない、と途中で反省した。
道を聞けば親切に答えてくれる人も沢山いるのに、
あいさつすれば笑顔で返してくれる人もいるのに、
「どこから来たんだ?どこ行くんだ?」とフランクに話しかけてくれる人もいるのに、
自分から「あいつもこいつもうざい」と決めつけて心を閉ざしてしまっていては、何もはじまらない。自分自身の表情まで強張っていくだけだ。
世界中どこの国でも、本当に困った人たちはほんの一握りで、圧倒的大多数は優しくて親切な人たち。
それがこの旅で得た確かな感触なのに。

いかんいかんと、せめて話しかけてくる人には応じようとするのだけど、
かなりの確率でただの「絡み」なので、しゅんと萎えてしまう。
いや、いかんいかんと、凝視してくる人たちににっこり笑って「ナマステ」と声をかけてみても、
かなりの確率でただの「凝視」なので、再びしゅんと萎えてしまう。

いやいや、と自分を奮い立たせては、またしゅんと萎える、そんなことを繰り返す。
ううん、この国を自転車で走るのは、ある意味いい修行になるのかもしれない。

 
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