Nov,03,2012

標高差800mの峠を越えて到着したナコの村。
目に飛び込んできた瞬間に一目惚れした、まるでおとぎ話から飛び出してきたような素敵な村だ。


村のいたるところにマニ車が。

360度ぐるりと山に囲まれた美しいロケーション。
山頂はフレッシュスノーで化粧が施されていて、夏の終わりを告げていた。
村の入り口に扇状に広がる段々畑には薄いピンク色をしたジャガイモの花が咲き乱れている。その中でおばあちゃんたちがせっせとジャガイモを掘り出していた。
こぢんまりとした村の中は、白いチベット様式の家々が所狭しと並んでいて迷路のようだ。こういう村は歩いているだけでも楽しくて幸せな気持ちにさせてくれる。
その狭い道を、キナール地方独特の帽子をかぶった村人たちが牛やヤギを追いながら歩いている。
挨拶するとみんな優しい笑顔で挨拶を返してくれるので、とても気持ちいい。かなり観光客の多い村なのに、全然すれた感じがないのがいい。


村の裏山からナコを望む。

そして交差点ごとに積み重ねられたマニ石、あちらこちらに置かれた手作り感満載のマニ車。家の軒先には小さなチョルテン(仏塔)が飾られている。2か月以上チベット圏にいるけど、こんなにたくさんのマニ石やマニ車、チョルテンが置かれている村は他になかった。
緑あふれるネパールの村にいるような、祈りあふれるチベットの村にいるような、それでいて日本の古き良き田舎の村にいるような、不思議なオーラに包まれた村だ。


迷路のような町並みで、散歩するだけで楽しい。

そんな美しい村の風景に惚れ込んで、そしてこれが最後のチベット圏の村になるという名残惜しさも手伝って、ついつい延泊することになった。
今までは4,5日走り続けた後で体の休憩を兼ねて延泊するというのが普通の流れだったけど、
最近は1、2日走っては「この村好き!」という理由で延泊するという日々が続いている。
スピティ・バレーの村々は、それくらい素敵で去りがたい場所なのだ。


キナール地方独特の帽子。緑のフェルトがアクセント。

翌日、裏山へ散歩に行き、素晴らしい風景を堪能して村に帰ってくると、なんだか村が騒がしい。
今日は結婚式があるそうだ。
なんてタイミングがいいんだろう。これぞこの村に呼ばれていた証拠じゃないかと、意味もなく得意気な気持ちになる。
夕方、太鼓の音とともに登場したチベットの伝統的な衣装を着た踊り子たちが、村の小さな広場(といっても単なる交差点だ)で祈りのダンスをささげ始めた。
その周りには村中の人たちが集まってきて、その様子を楽しそうに眺めている。
ただでさえ素敵な村に、さらに幸せな空気が満ち溢れ始めた。


街中で突如始まった祈りのダンス。周りで見ている村人たちの姿も微笑ましい。

結婚式は2日間続き、初日は20分ほど離れた花嫁出身地の隣村、2日目は花婿出身地のナコ村でパーティーが行われるという。
僕らツーリストも大歓迎だというので、喜んで出席させてもらうことにした。
このパーティーのために両村は朝から大忙し。パーティーが開かれる村では、朝から村人総出でご馳走の準備や会場の設営をしていて、てんやわんやだ。
そしてパーティー会場は、この村のどこにこんな大勢が潜んでいたのか?と首をひねりたくなるくらい人で溢れていた。3、400人はいようかという大規模パーティー、これは出血覚悟の一大イベントだ。この結婚式のために両家は何年くらい準備をしてきたのだろうかと想像すると、気が遠くなりそうだ。
ちなみに出席者はお金でできた首飾りや、鍋や毛布といった日用品をプレゼントしていた。
まるで日本の披露宴とご祝儀みたい。こういうのはどの国でも変わらないものだと妙に感心する。
しかも司会者が「○○さんから金一封、△△さんからは鍋セットの贈呈・・・」といちいちマイクで読み上げていた。小さな村だけに、主催者も出席者もいろいろ気を使って大変そうだ。
夕暮れ時から始まったパーティーは、出席者全員に夕食やお酒を振る舞い、祈りのダンスをささげ、その後村人も一緒に踊りだし、そのまま明け方まで続いた。

村の素敵な雰囲気と結婚式が重なったせいもあって、この村に結局3泊した。チベット圏の最後を飾るのにふさわしい、素晴らしい滞在になった。
ここからは一気に標高を下げ、ヒンドゥ圏のキナール・バレーに入っていく。
2か月半におよんだチベット圏の旅、楽しかったなあ。
バイバイ、チベット圏。

***お知らせ***
PHOTOSのページに、スイス編19枚をアップしました。
インド・ラダック地方の力強い風景とはまた違った、スイスアルプスの絵に書いたような美しい風景をお楽しみください。
CLICK HERE!


© yokoandhiro All rights Reserved. | 管理者ページ