ダンカル村はメインロードから10km離れていて標高500mアップしたところにある。
近いといえば近いのだけれども、自転車だと楽な道のりとはいえないし、同じ道を単純往復しなくてはならないというのも面倒くさい。
ちょうど麓の村に宿があるというので、荷物を置いて自転車だけで登ろうということに前々から決めていた。
ところがダンカルへ行く前日に他のダンカルへ向かう道が2つあるらしいぞと聞き、当日の朝は車でダンカルから来た人が麓の村より手前で曲がると違う道を使ってダンカルへ行けると教えてくれた。
どうやら同じ道を単純往復しなくても着けるみたい。
「これは何かの縁」と、急遽荷物を付けたままの自転車でダンカルへ寄ってみることにしてみた。
「ご縁ご縁♪」と陽気に登り始めたのもつかの間、壁のような山に落書きのよう描かれたジグザグが果てしなく見え、足元の道は石ころでガタガタなことにすっかりと意気消沈してしまった。
「はぁ、やっぱり素直に荷物を置いて登るほうがよかったわ。」
でも登ってきた道を振り返ってみるとなんとも美しい谷が広がっていることに気がついて、この景色が見れただけでもメインの道ではなくてここを登ってきてよかったと思うことができた。
途中ほんの1,2kmほどだけだけど、乗るのはおろか自転車を押すのも足が攣りそうなくらい辛い悪路の坂があって、ハエが止まるようなスピードでノロノロしか進めなかった。チビチビとしか進めない私を見た私をひろが助けに来てくれる。
後ろから押してくれると驚くほどグーンと進めた。
ハードな登りだったけど、水彩画のように淡くて優しい景色に和む。
やっとの思いで着いたダンカル村のゴンパ(お寺)、相変わらずチベット仏教のゴンパは絶妙なロケーションにあった。
自然地形の神秘さを巧みにつかったチベット仏教のお寺には毎度感心させられてしまう。
ゴンパ周辺を少し歩いてみただけですっかりこの村が気に入ってしまった。
ゴンパそのものは大して印象的でもなかったのだけれども、ゴンパを含むこの小さなダンカル村そのものがまるでおとぎ話にでも出てきそうな、かわいらしくバランスよくまとまった村で、かといってうそ臭くない。
そして何より、この村の景色にスーッと心が引き込まれて、何だかとっても心地がいい。
翌朝、朝日が昇ってくるタイミングに合わせて1時間ほどさらに登ったところにあるダンカル・ツォ(湖)に出かけた。残念ながら天気がよくなくて肝心の朝日を望むことはできなかったのだけれども、静かで心洗われるようなダンカルツォの朝にすっかりと魅せられてしまって、「よし、明日の朝もここに来たい!!」と延泊決定。
帰り道、山の上からダンカル村を望む。
いかついのに優しい色をして柔らかい雰囲気を出している山々の中にぽつりと置かれたダンカル村の可愛さにハートをぎゅっと捕まれた。
散歩をしたり、宿のテラスから可愛らしい村をぼーっと眺めていただけれども、心が満たされた滞在になった。
どうやらこの村とはご縁があったようだ。
北インド・チベット圏でいまのところ一番気に入った村になった。
目の前の白い雲の向こうには雪山が隠れている