Oct,10,2012

レーからツォ・モリリ湖へ向かう途中に素敵な村に出会うことができた。
自転車旅の好きなところは、ガイドブックには載っていない、時には地図にすら載っていないような場所に泊まらざるを得ないことが多々あって、そんな何も期待していなかったところに素敵な出会いがあったりするところ。


自転車に乗せてあげると大はしゃぎ!

今回出会った村はスムド(プガ・スムド)というチベット難民村。
インドのラダック地方に古くから住むチベット人の子孫のラダック人と、中国のチベット侵略後にチベットから逃げてきたチベット難民のチベット人を区別するのだということを、ラダックを旅するまでよく理解していなかった。
チベット文化圏の人は全てチベット人だと思っていたのだけれども、ふたを開けてみれば書き言葉は同じでも話し言葉だとラダック語とチベット語ではだいぶ違うようだし、文化にも違いが見られる。
それに何よりも、「私はチベット人、あの人はラダック人」とはっきりと区別したがる傾向が見られるのに興味を持った。


スムドにはS.O.S.(Save Our Soul)スクールというチベット亡命政府が全面的にサポートしているチベット人のための学校がある。
こんな田舎の小さな村でも子供全員に教育を無料で提供し、子供たちの衣食住から文房具にいたるまで全てサポートしている上に、教員陣も全員ダラムシャーラやレーから来ているチベット人と徹底している。

子供たちは全員が寮生活で、週末だけ学校の許可を得て家に帰る。
みな近くに家があるのになぜ寮生活なのだろうかと思ったのだけど、平日は寮で生活することで家の畑仕事や放牧に駆り出されたる心配なく、学校生活に専念できるのだ。
家庭の経済状況にかかわらず、ご飯を食べ、勉強し、遊ぶといった子供としての権利を享受できる。
純粋に、そしてのびのびと育っている子供たちからは幸せな様子がビンビンと伝わってきた。
スムドの学校は小学校3年生までのクラスしか用意されていなかったのだけど、
小学校4年生以上から高等教育までは別の場所で、これも全て無料で教育環境が提供されるそうだ。



ヤギの搾乳タイム

チベット難民はインド政府からの援助は受けられないようで、村の学校、井戸、電気等は全てチベット亡命政府からの援助によって賄われていた。
チベット亡命政府の経済状況は知らないけれど、何よりも教育に力を入れているのは本当に素晴らしいことだと思う。
母国をなくしてしまった彼らは、チベット人としての文化、思想を教育して残していくことが何よりも大切だということを知っているのだろう。


限られた食材で美味しいものをつくってくれるシェフ。

この小さなスムドの学校の子供たちから、教育を受けることの大切さ、教育を受けられることのありがたさを切実に感じることができた。
チベット本土からの避難を余儀なくされたチベット難民たちには計り知れない苦労があるのだろうけれども、夏は家の仕事に駆り出されて学校に行けないラダック人の子供も沢山いると聞くし、こうやって満足に教育を受けられるチベット難民の子供たちは、ある面で幸運なのだと思う。


お世話になった先生ヤンゾム。授業はチベットの伝統的な衣装で行う。

私たちは縁あってスムドに3泊も滞在し、英語が喋れる先生ヤンゾムには何から何までお世話になった。
チベット難民について知れるいい機会になったことはもちろん、顔といい、シャイなところといい日本人のにそっくりな子供たちはどこの国の子供たちと比べてもダントツに親しみが持てて、子供たちのピュアな心に癒された3日間になった。


かわいい顔がつぶれちゃうよー


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