Oct,07,2012

5日間の予定だったレーでの休憩も、気がつけば9日目。
よっこらしょの掛け声とともに重い腰をあげて、ようやくレーを再出発する日がやってきた。
しばらくレー・マナリ間の主要国道を走った後は、脇道にそれて標高4560mのツォモリリ湖を目指す。
ツォモリリ湖まではインダス川沿いの狭い谷間をくねくねと上がっていき、標高4850mのナムシャン峠(Namshang La)を越え、最後は20kmほど未舗装路区間を走りぬけて辿り着く約4日間の行程だ。

ナムシャン峠を越えて一つ目の小さな湖キャガル・ツォが見えた辺りでは、見渡す限り人工物が一切ない無限大な空間の中で、蒼く静かな湖とその背後に雪山が聳える素晴らしい風景を心ゆくまで二人占めできたのだけど、
天気が悪かったのもあって、全体的には単調で、期待したほどの風景には巡り合えなかった。

でも嬉しい出会いが沢山会った。


キャガル・ツォ。道中で一番テンションがあがった素晴らしい風景だった。

脇道にそれて1日目、宿も店も食堂もない村で時間切れになったので、村でテントを張らせてもらおうと、畑で牛を追っていたおばあさんに「この辺でテント張ってもいいですか?」と聞いてみた。
いきなり妙な格好の外国人に話しかけられて最初は少し驚いていたおばあさんだけど、すぐに自分の家まで連れて行ってくれて、「テントなら玄関前に張ってもいいわよ。でも家の中で寝た方が暖かいからそうしなさい。」と一生懸命身振り手振りで勧めてくれる。
結局テントを張らせてもらう事になったのだけど、おばあさんはすぐにチャイを用意してくれて、地面に座るためにカーペットを持ってきてくれて、そしてテントを張るのをテキパキと手伝ってくれた。

夕暮れ前に帰ってきたおじいさんは、玄関前にテントが張られているという意味不明なシチュエーションにも全く動じることなく、「こんばんはー、ここに泊まるの?家の中で寝ればいいのに。」とにこやかに挨拶をくれた。

翌朝、僕らの目覚めを待って、早速温かいチャイを持ってきてくれたおばあさん。
僕らの差し出したお礼を頑として受け取ることなく、逆に「ツォモリリから帰ってきたらまた泊まりに来なさい。」と、数少ない英単語と身振り手振りで一生懸命に伝えてくれた。


この不思議なシチュエーションに全く動じないおじいさん、あっぱれだ。

2日目に泊めてもらった村は、偶然にもチベット難民の村だった。
ここでも「テント?いいよ、ここに張りなさい。」とあっさり承諾をもらい、大人から子供までみんなが「タシデレ」(チベット語でこんにちは)と笑顔で迎えてくれた。
さらに村の小学校の先生がチャイやお菓子で歓迎してくれ、「学校に泊まることもできるわよ」と勧めてくれる。雰囲気の素敵な村だったし、ツォモリリからの帰り道に再び通る村だし(ツォモリリは道の行き止まりにあるので、同じ道を帰って来ないといけない)、なによりも学校の子供たちが可愛いくてたまらなかったので、ツォモリリから帰ってきたら学校に泊まらせてもらう約束をして、後ろ髪引かれる思いで村を出発した。


ツォ・カルのテントレストランにて。北インドにはこういう簡易食堂がたくさんあって自炊をしなくていいので大助かりだ。


チベット難民村にて。ピュアという言葉がぴったりと当てはまる素敵な子供たちだった。

ラダックやザンスカールでも素敵な出会いがたくさんあったけど、ちょうどダライラマ14世のザンスカール訪問と重なり、途中で通る村々はどこも村中総出でダライラマに会いに出かけて空っぽだった事が多かったので、もう少し村人たちと絡みたかったなあという思いがあった。
それだけに、毎日現地の人たちに親切にしてもらえる旅になったのが、嬉しくてたまらない。

シリアやイランといったイスラム諸国でも感激し、そして驚いたことなのだけど、
どうして赤の他人をこんなにも素直に受け入れてくれるのだろうか。
そして、どうしてこんなに赤の他人に親切にできるんだろうか。
自分に同じことができるのだろうかと考え、「やっぱりできないよなー」という結論に達してしまう自分の器の小ささに、恥ずかしい気持ちになる。


つぶらな瞳のナキウサギ。どこに隠れているか分かりますか?

ちなみに肝心のツォモリリは雨だった。
いかに綺麗な湖でも、やっぱり青空がないと湖面が濁って見えてしまう。
どんな風景でもそうだけど、特に湖の場合は晴れてなんぼなのだ。

それでも夕方になるとにわかに晴れてきて、湖面が一気に輝きを放ち始めた。
本当はツォモリリ湖畔の町コルゾックで1日休憩しようと思っていたのだけど、
町の高台に登って、青空を反射した湖の美しい色と対岸の山々の繊細な表情を堪能できた夕方の風景で、何だか満足してしまった。
それよりもチベット難民村の方が気になる。
さあ子供たちに会いに戻ろうか。


見渡す限り建物や電線のない幸せな風景。キャガル・ツォ


やった、ついに舗装路の登場だ!

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