Sep,24,2012

フォトクサル10km手前のキャンプサイトでホースマンのタシとスタンジンと別れ、5日ぶりに自分たちで晩御飯の用意をしていたら、「自由ダー!!」と無性に大声をだして喜びを表したくなってしまった。

トレッキングは素晴らしく楽しかった。
心配していた自転車を馬に載せるのも問題なかったし、タシとスタンジンは期待以上にまじめに仕事をしてくれたし、朝起きるとテントにチャイが運ばれてきて、ご飯は全部用意してもらえて、私たちは身軽に楽しんで歩くことができた。
それでもやっぱり自分のペースでは旅ができないのだ。
たった5日間なのに、限りなくプライベートな旅なのに、どこか窮屈に感じていた自分に気づいて、日本に帰って普通に日常生活を送れるんだろうかと心配になる。


幻想的なシシル峠の下り道

久しぶりの自転車旅は、早朝の冷たい川渡りから始まり、フォトクサル村を過ぎた後は標高4850mのシシル峠が待っていた。
シシル峠は苦労して登ってきた者を喜ばせる、スペクタクラーでドラマチックな景色が360度に広がる思い出に残る峠だった。
フォトクサルでトレッキングを終えてラマユルまで一気に車で移動するトレッカーが多いのだけど、このシシル峠はぜひ歩いて登るのがお勧めだ。


自転車で旅に出るようになって、いつしか峠が好きになっていた。
峠と聞くと厳しいイメージがあるかもしれないけれど、
小さな丘を何度もアップダウンするより体も心も楽だと私は思う。
登り始めはきつく感じるけれども、ある一定のリズムで登り続けられるので、しばらくするときついのもよく分からなくなってくる。
それに貯金が少しずつ貯まってくるかのように、標高をあげてきているのを景色やGPSで確実に知り感じることができて、満足感はばっちりだ。

そして辿り着く頂上。
峠の上には素晴らしい眺望と、そして気持ちいいダウンヒルが待っていて、やり遂げたという清々しい気持ちで下るのは最高に気持ちがいい。
地味に貯めた貯金をぱぁーっと使っちゃうような豪快さも好き。
お金では真似できないからせめて標高ぐらいね。
世の中で一番簡単に手にいれらる達成感のひとつじゃないかと思う。


正面に見える尾根の一番低いあたりがシシル峠。近いようで遠い。

シシル峠を下った先にあるハヌパタ村のキャンプサイトは、「ここに泊まろう」と二人の意見が一瞬で合致したくらい景色が素晴らしいサイトだった。
景色だけで言えばパドゥム・ラマユル間で一番好きな場所で、幸せなシシル峠を走った一日を締めくくるのに最適なところだった。
標高も4000mを切り、今日は日差しが強かく暖かいのもあって、久々に流水で頭を洗ってさっぱりする。
水ってなんて気持ちいいんだろ。


毎日酷い砂埃で肌に砂が擦り込まれていて、体中どこもかしこも薄黒い。
水浴びできると期待していたパドゥムが断水だったのもあって、かれこれ2週間以上まともに体を洗えていない。シャワーなんて3週間前に浴びたっきりだ。
結構な僻地を走ることが多い私たちでも、ここまで体が洗えていないのはさすがに初めてで、
今一番したいことは体を洗うこと、服を洗うこと。
あともう数日でレーに戻る。久々に都会に戻るのに、食べたい欲求よりも綺麗にしたい欲求のほうが勝るなんてよっぽどのことなのだ。


ハヌパタ村からワンラ村への道もまた迫力のある美しさだった。
迫り来る岩に挟まれた峡谷は荒涼としているのだけれども、ところどころパステルカラーの岩々が華を添えていて、なんとも美しい。
最終日は移動とくらいしか考えていなかった私たちは、こんなところにまで心ときめく道が用意されていたなんて思いもよらず感激する。


この夏にはリンシェ村まで道路が繋がる予定らしく、いずれはパドゥムまでの道が完全につながるのだろう。
そうなればこのルートは世界でも有数のサイクリストが憧れるルートになることは間違いないと思う。


ラマユルに着いて3週間ぶりにシャワーを浴びた。しかも待望のホットシャワーだ。
体を洗うタオルが真っ黒に染まってしまうほど私たちの体は汚くて、タオルのあまりの汚さに二人でクククと笑ってしまった。
夜中に自分の髪からいい匂いがして起きた。
髪を触るとサラサラする。
嬉しくて何度も触っては、ふわっと香る匂いに満足して再び眠りについた。
綺麗になるって嬉しいね!!


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