4、5000mの間を行ったり来たりするこのトレッキング。
有名なトレッキングルートだけあって毎日沢山のトレッカーとすれ違うのだけど、
その年齢層は驚くほど高い。
団体ツアーもいれば個人トレッカーもいたけど、控えめに見積もっても60歳は下らなさそうなトレッカーたちが、元気に「ジュレー」(こんにちは)と挨拶しながら通り過ぎていく。
ザングラ村から旧王宮へ向かう。
ヨーロッパのおじさん・おばさんは本当に元気だ。
レーでも60代のサイクリストに会った。彼は毎年のようにチベット圏を走っているのだという。
今までも1か月近くトレッキングをしている70代のおばあちゃん、自分の親と同じ年のバックパッカーなど、そのパワーに驚かされるような人と沢山出会ってきた。
もちろんヨーロッパの恵まれたライフ・ワークバランスの中で暮らしてきた人たちだから、若いころから旅へ山へとコンスタントに体を動かしてきたのだろうし、
もともとヨーロッパ人の方が体が丈夫というのもあるかもしれない。
でも一番違うなあと思うのは、その心だ。
30代の僕らですらしんどい高地トレッキングに挑む冒険心。
新しいことを始めようとするアクティブな気持ち。
好きなことをしている生き生きした顔をしていて、とてもリタイア生活者なんて呼べない。
ロケーション抜群のザングラ旧王宮。ザングラは今でも小さな王国を構成していて、政治的な力は全くないとはいえ王様だって健在だ。
ザングラ旧王宮で奮闘するボランティアたち。その心の若さに勇気付けられる。
ザングラで友人が立ちあげた旧王宮修復プロジェクトには、若者たちに交じって、50代の夫婦もボランティアとして参加していた。
頭皮が燃えそうなほどの炎天下で体力仕事をこなし、宿に帰ってもシャワーもなくバケツを使って水浴びするだけ、トイレはハエだらけのボットン便所、電気は夜の数時間、楽しみといえば夕方から開く小さな雑貨屋でコカコーラを買うくらい、そして食べ慣れない地元料理でお腹を膨らませる日々。
そんな中で、お小遣いがたまる訳でもない完全なボランティアとして、目を輝かせながら日々奮闘していた。
「この歳になって今更こんな大変な思いをしなくても。」という気持ちだって絶対あるはずなのに、
それ以上に新しいことや新しい出会いを求める気持ちをより強く思っているのだろう。
旧王宮からの眺め。レンガは泥とわらで作って天日で乾かす昔ながらの方法で一つ一つ準備していく。
そんな人たちを見ていると、勇気がわいてくる。
体が元気なのに「もうこんな年齢だから」なんて言うのは、ただの言い訳に過ぎない。
自分の選択肢を狭めさせるものは、「私はここまで」とリミッターを掛けているのは、他でもない自分自身の心なのだと気づかせてくれる。
ザングラ村に2つしかない商店のひとつ。野菜が手に入るのはこのお店だけで、夕方の開店と同時に人だかりができる。
今日も、ハエが止まるようなスピードで、でも一歩ずつ確実に、苦しそうだけど楽しそうに歩いてくるトレッカーとすれ違う。
僕も負けてられない、そんな気持ちを込めて、「ジュレー!」