パキッとした空気、蒼い空の色、乾燥した匂い、川の流れる音。
高地の空気感は格別だ。
どれだけ素敵な写真を並べても、どれだけ上手に映像を取っても、どれだけ詳しく文章で説明しても、
この体全体で感じられる空気感だけは、実際にその場所へ行った者にしか分からない。
この気持ちよさに、理屈も説明もいらない。
トレッキングも久しぶりだ。
毎日自転車を漕いで筋肉と体力は十分付いているはずなのに、どうやらトレッキングに使う筋肉は全く別なようで、2日目から早くも筋肉痛だし、峠なんてひいひい言いながら歩いている。
でも大量の荷物は馬が持ってくれるし、毎日素晴らしい風景が広がっているので、全然苦にならない。
蒼い空に包まれながら歩いていると、体の芯のあたりで「ああ幸せだ」という温かな塊が生まれては、それが指の先までジュワーッと広がっていくのを感じて、何度も鳥肌が立つ。
有名なパドゥム・ラマユル間のトレッキングルート。
毎日峠越えがある大変なルートだけど、その分峠を越える時のワクワクした気持ちを毎日味わえるお得なルートでもある。
チベット圏の峠にはタルチョという祈りの旗がはためいているのも、ワクワク感をさらに加速させる。
あのタルチョの先には、どんな風景が待っているのか。
ハアハアゼイゼイ言いながら、そればかりを考えて一歩一歩先に進む。
そしてどの峠の先にも、そんな僕らの期待を裏切らない素晴らしい絶景が待っている。
自然の風景だけじゃない。
荒涼とした峠から遥か下の方に見える、緑のフィールドに囲まれた村々も美しい。
フレンドリーなお坊さんたちが出迎えてくれるゴンパ(チベット仏教の寺)には、美しい仏像や壁画が残っていて見応え充分だ。
キャンプサイトも景色が良いところが多くて、そこでのんびりする午後の時間も幸せだ。
高地の荒涼とした風景が好きな僕らにはたまらない、文句なしに素晴らしいルートだ。
さすがはラダック、世界的にも有名なトレッキングエリアだけはある。
トレッキング4日目から道路に合流したのだけど、翌日は5000mの峠越えがあったので5日目も自転車を馬に乗せて歩くことにした。
そして5日目のキャンプサイトで、馬使いのタシ&スタンジン、そして荷物を運んでくれた馬たちに別れを告げる。
自転車は大した傷もつかず、ちょっといじればすぐに走りだせそうだ。
ここからは一転、チャリダーモード復活。
歩いてもこんなに素晴らしい風景、チャリで走ったらどんな風に見えるのか。
ああさらに楽しみだ!