Sep,12,2012

ザンスカール地方を奥に進むと、やがて道路が尽きてしまう。
ここから帰るには、元来た道を戻るか、歩いて山道を越えるしかない。
これが世界的に有名なトレッキングルートになっているのだから、当然歩いて帰る事を選ぶ。
楽しみにしていた5日間のトレッキングの始まりだ。

「トレッキングって、あなたたち自転車はどうするのよ?」と思ったあなた、心配はご無用。
ここはインド、Everything is possibleなのだ。


はじめて自転車を馬に乗せた瞬間。とにかく心配でたまらない。

ザングラの村で馬使いのタシ君を紹介してもらい、馬を3頭を借りることになった。
一頭に自転車2台を乗せ、もう一頭に僕らの荷物を乗せ、最後の一頭に食料とタシの荷物を乗せる。
ついでにタシの親戚の青年スタンジンも付いてきて、さらには仔馬2頭までひょっこりついてきた。
僕たち2人だけのために、馬5頭、ホースマン2名という大所帯。
あっという間に大名行列の出来上がりだ。


初日は自転車が気になってしょうがないので、風景どころじゃない。

飛行機にバスに電車にと色々な乗り物に乗ってきた自転車君たちも、まさか馬に乗せられる日がやって来るとは思っていなかったに違いない。
自転車を馬に乗せるなんて、自転車がめちゃくちゃ&ボロボロになるんじゃないかと不安でしょうがなかったけれども、実際にやってみると拍子抜けするほど簡単に乗せられるものだ。
ペダルとかスタンドとかの突起物を外した後は、ホイッと馬に乗せて紐で縛るだけ。特に手間取ることもない。


スノーブリッジをわたる。下はゴウゴウと川が流れていて空洞になっているのだけど落ちないでね。

でも哀れ不運なお馬さん。
荷物を持っている馬の方が重量的にはキツイのだけろうけど、自転車2台はビジュアル的にかなり可哀そうなことになっている。
ヨーロッパやアメリカだったら、動物愛護団体あたりがすっ飛んできそうな光景だ。
さすがにすれ違うトレッカーたちは、みんな目を丸くして写真を取りまくっていた。


荷物の入ったずた袋を運んでくれているのがチョットゥ、自転車を運んでくれているのがナキュン。どちらも13歳前後の働き盛り。

ちなみにこの大名行列のお値段は、
馬1頭につき1日500ルピー(750円)×3頭=1日2250円。
しかも特に追加料金なしでホースマンが食事を作ってくれるのがこの地域のトレッキングの特徴だ。
毎朝チャイを片手に起こしに来てくれて、朝からチャパティを焼いてくれ、夜は限られた食材のなかで少しずつバリエーションをつけた美味しい食事を作ってくれるのだから、至れり尽くせりだ。
食材は事前に自分たちで購入してあるので(食材といっても米と豆と粉くらいなものだけど)、トレッキング中はキャンプ代1日100ルピー(150円)が追加でかかるだけ。
馬使いとの直接交渉なのでもっと安くすることも可能だったと思うけど(地元民には500ルピーは高い!と言われた)、希望通りの日時に出発できたし、ご飯も真面目にキチンと作ってくれたし、酒好きだけどいい人だったし、自転車もほぼ無傷だったし、僕らとしては満足な値段だ。


荷物なしの2頭はまだ1歳の子馬。茶色い方は途中で別の村人に買い取られたようで、突然のお別れとなった。

自転車もテントも全てお馬さんに預けて、
僕らは防寒着と水と菓子だけ持って身軽なトレッキングを楽しむ。
荷物が軽いトレッキングって、なんて楽チンでしょう。
こんなパッケージツアー並みの豪華大名行列が、二人で1日2500円もかからず出来るインド、
いやはや恐るべしだ。


大名行列の先頭に立つのは、シャイでピュアなスタンジン少年。あまりにピュアなので中学生くらいかと思っていたら意外にも19歳。ずっとそのままでいてね。


ありがとう、お馬さん!


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