Sep,06,2012

チベット系住民が多いラダックでは、中国から圧力を受けているチベット本土よりもチベットっぽいと聞いていた。
10年前にチベットへ行ったきりで、チベットの現状がどうなのか分からないのだけれども、
ラダックがチベットよりもチベットぽいという感じは私にはしない。
少なくとも10年前のチベットにはもっとセンセーショナルなチベットさが残っていた。


バスゴゴンパは寺院の中の美しさもさることながらロケーションも素晴らしい。

10年前にチベットへ行ったときは、ジョカンの前でひたすら五体投地を続ける人々の姿や、何をしていても片手でマニ車や数珠を回し続ける人々の、祈ることが生活のような姿に衝撃を受けた。
荒野にポツンとたたずむノマドのテント、わずかばかりの草を求めるヤクの姿、貧しい村々も強く印象に残っている。
印象的なことが多かった半面、ゴンパに関しては新しくド派手な色使いのあまり繊細でもない曼荼羅が描いてあったりと、あまり雰囲気の良かったものは記憶にない。
中国政府に潰されて、古くから残っているものがほとんどないから仕方がなかったのかもしれないけれども。


岩壁にへばりつくように建てられているカルシャゴンパ

ラダックはどちらかというとインド文化と上手く融合しているチベットの姿が印象的だ。
女性の多くはインド風のパンジャビードレスを着ているし、食事もチベット・インドミックスで、チベットと違って英語をしゃべる人も多く、言動がちょっぴりインド人ぽいところも多い。
高地特有の荒涼とした景色が続くところはチベットと似ているけれども、ラダックの村々には緑豊かな畑が広がり、立派な家々が多い。
五体投地をしている人やマニ車を回している人も少なくて、タルチョやマニ石やルンタで溢れたチベットの峠に比べて、ラダックの峠はタルチョは少々はためいているものの少しあっさり気味で物足りないところもある。
ディープチベットを期待してラダックに来ると、少し肩透かしなところがあったのだけど、ゴンパ(寺)に関してはチベットのものよりも遥かに素晴らしいものが多かった。


ストンデゴンパからの見晴らし。

ラダックやザンスカールのゴンパはどこも古く、素晴らしいものが多い。
崖っぷちにへばりつくように造られていたり、岩を掘って造られていたりとロケーションの素晴らしさもさることながら、
寺院の中そのものの雰囲気も良いし、古く美しい壁画が残っていることが多くて、すっかり魅せられてしまった。
仏教画、仏像などは今まで特に興味がなかったのだけれども、
線や色遣いの繊細さ、表情の豊かさなどは、宗教云々を越えてアートだと感じた。



美しく丁寧に伝統的手法で修復されたバスゴのゴンパ。

初めはゴンパもいくつか見れば飽きてくるのではないかと思ったのだけれども、
どこのゴンパも雰囲気が違うし、壁画も全然違ったもので、飽きるどころか数を見るうちにどんどん興味深くなってきた。
それに日本の寺のように寂びがあって、心落ち着く空間なことが多い。
フレンドリーなお坊さんが多いのは印象がいいし、
真摯に修行するお坊さんの姿を多く目にするのは、別に私がチベット仏教徒でなくてもこの宗教に対しての神聖感、信頼感が増して益々印象がいい。
ゴンパにハマってラダックのリピーターになる旅人が多いというのも頷ける。

辺鄙な場所にあるゴンパも多くて、気軽に訪れられないところもあるけれども、
自転車や歩きではるばる訪れたゴンパがこれだけ見応えがあるというのもご褒美のようで嬉しい。
改めてラダックは楽しみの多い場所だ。


外見はぱっとしなかったラングダムゴンパ。内部は趣があって素敵だった。


僧たちのお祈り&お茶タイムに招待してもらった。真剣にお祈りしているのだけれども、居眠りしている僧をみつけて大笑いする僧。写真を撮れ撮れとせかされて慌てて撮ってみた。


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