Aug,31,2012

レーからカルギルまでの国道沿いは、トラックも多いし景色もぼちぼちといった感じだったけど、
カルギルを過ぎてスルバレーに入っていくと、車通りも少なくなり、村々の間隔がどんどん広くなって、雄大な風景が開けてきた。

すでに標高は4000mに迫ろうとしているのに、驚くほど水が豊富で、村々の周囲には緑が広がり、広大な湿原まである。
そして大地のうねりを感じる立体的な山の断層。大陸同士が衝突してこの山々ができたんだなあと一目でわかる。プレートテクトニクスをここまでビジュアル的に見せてくれる風景もすごい。

高地特有の乾いた空気、見え隠れする雪山、迫ってくるような立体的な山々、そして眩しい緑。
この地域も地球の他のどの場所とも違う素晴らしい風景が広がっている。


この辺りは7000m級のヌン・クン山やダラン・ドゥルン氷河などが有名だけど、そんなスターアトラクションよりも、むしろ何気ないカーブを曲がった先に見える何気ない風景の美しさに、より心が奪われる。
できれば綺麗な舗装路をルンルン走りながらこの素晴らしい風景をじっくり堪能したいのだけど、あいにく河原でも走っているかのようなガタガタの悪路で、時間がかかってしょうがない。
でもどんなに大変でも、この美しさ、この気持ち良さには替えられない。


立体的でうねうねした山肌が、地球のダイナミズムを伝えてくれる。


標高4000mの高地にもかかわらず、夏のラダック地方は緑が豊富。

1年前、友人に見せてもらった一枚の写真。
このラダック地方を自転車で走るその写真を見て以来、この場所にあこがれ続けていた。
そして今、その風景の中で、実際に自転車を走らせている自分たちがいる。

ただ暇と時間さえあればいいってものではない。
二人とも体が健康で、日本の家族も無事で、二人とも相変わらず旅を楽しむ心を持ち続けている。
そして自転車という二人が一番望んでいた形で、この憧れていた素晴らしい風景の中に、二人一緒に元気にいることができる。
それがどれだけ幸運で、どれだけ幸せなことなのだろう。
そんな思いが体を包み、大量の汗と一緒に、涙がジワリと滲んでくる。


きびしい坂道を登るとタルチョとチョルテンが出迎えてくれる。


川原じゃありません。これでもれっきとしたメインウェーです。

スルバレーを抜けてペンジ・ラ峠を越えると、いよいよザンスカールバレーに入る。
峠越えに時間がかかったので次の村まで辿り着けず、峠を越えたところでキャンプをすることにした。
道路から見えない絶妙なスポットにテントを張り、近くの川で手や顔を綺麗に洗い、川の水を沸かして温かい夕食を作る。
今日も素晴らしかったという充実感を噛みしめながら、大自然のど真ん中で人知れず静かで穏やかな夜を過ごす。


自転車を漕いでいる間のちょっとした休憩時間。幸せを噛みしめるひと時だ。

どれだけお金を積んでも絶対に買うことのできない、この幸せ。
ああ、僕たちって本当に贅沢だ。


ドゥランドゥラン氷河。


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