Aug,16,2012

スイスからインドへの飛行機は、悪名高きロシアのアエロフロート航空。
ダントツの安さに負けてチケットを購入したものの、フライトが近づくにつれて不安は募るばかりだ。
しかも出発直前になってエクセス(荷物の追加料金)が物凄く高くつくことに気が付いた。
なにせ二人で100kgを超える荷物を持っているのだからエクセスを払うのはしょうがない。
でも、チケット購入時には、何を勘違いしたのか一人50ユーロくらいと理解していたエクセスが、
きちんと計算されてしまうと一人300ユーロにもなってしまうのだ。
500ユーロのチケットに300ユーロの追加は痛すぎる。

出発前日に少しでも追加料金がかからないように色々工夫しながらパッキングをし、そして挑んだ恐怖のチェックイン。
いの一番にカウンターに並び、満面の作り笑いを浮かべ、一番優しそうなお姉さんのところへ。
ロシア航空なのに妙にフレンドリーなお姉さんは、あら自転車ねーと軽い感じで預かってくれた。
そして、「はい、これがチケットね。じゃあ、Have a nice flight!」

え、、、いいの?追加料金払わなくていいの??
ガッツポーズを必死にこらえ、お姉さんがエクセスに気がつく前にそそくさとその場を立ち去る。
その後もアナウンスが流れるたびに僕らの名前が呼ばれないかびくびくし続けたけど、結局最後まで名前を呼ばれることはなかった。

イヤッホー!
何せ二人で600ユーロ(約6万円)も払わなくて済んだのだ。こんなにラッキーなことはない。
そしてスイスから乗り換え地点のモスクワまでは、普通の飛行機だし、フライトアテンダントも普通に感じがいいし、機内食もおいしかった。
あれ、アエロフロートって大当たり?


自転車が・・・こない・・・

でもその浮かれ気分は、モスクワからデリーへの機内で見事に打ち砕かれた。
まず飛行機。最新機種があてがわれるはずだった機体は、ふたを開けてみれば80年代?90年代?というオールドファッションな機体。もちろん映画や音楽なんて存在しない。妙に開放感があると思ったら、中央列頭上にあるはずの荷物収納ボックスがなかった。
乗客の半分以上はインド人で、離陸前からもう収拾がつかない騒ぎっぷりだ。
そして乗客に交じって乗り込んできたフライトアテンダントたち。普通は最初から乗り込んでいるでしょ、と突っ込む気にもならなくなるほど、既に体全体でやる気のなさをアピールしている。
旧ソ連圏の中央アジア諸国にいた役人たちの表情とそっくりだ。さすがロシア・・・

騒がしいインド人とやる気のないロシア人の組み合わせは、鰻と梅干くらい相性が悪い。
インド人たちは、勝手に席を交換しはじめたり、離陸中なのに歩きまわったり、対岸の人と大声で話したり、飲み物ワゴンから勝手に飲み物をを継ぎ始めたり。
そしてフライトアテンダントたちは、私には関係ないわと言わんばかりに、一切注意をしない。
いや、離陸時に歩きまわっているのはさすがに良くないんじゃない・・・

そんなフライトアテンダントたちも、食事を配る時になるとさすがに機嫌が悪くなってきた。
なにせ事前にオーダーしていないのにみんながベジタリアン食を要求するのだ。インド人だからベジ食が必要なのは分かるけど、やっぱり事前オーダーなしでは厳しい。それにきちんと事前オーダーしている人も勝手に座席を変わっていたりするので、もう訳が分からない状態だ。
完全にやる気をなくし、そのうち「肉?魚?」とすら聞かずに適当に食事をポンポン投げるフライトアテンダント。
それにお構いなく「ベジ食くれ」と大合唱のインド人。
無視を決め込むロシア人。
いよいよ騒がしいインド人。
いよいよ職場放棄のロシア人。

今は飛行機の中だよね?と疑いたくなる光景。
これをカオスと呼ばずして何と呼ぼう。
ヨーロッパではありえなかった事態に、ようこと顔を見合わせて苦笑いするしかない。
そうだ、最近は南米やヨーロッパといったキチンとした国々ばかり回っていたのですっかり忘れていた。これからはカオスの世界が待っているのだ。
久しぶりのアジア的な光景に圧倒されてほとんど眠れないまま、真夜中の3時にデリーに到着。

そしてやっぱりアエロフロートはやってくれた。
預け荷物のピックアップ場所で待つこと1時間。ターンテーブルが止まって全ての荷物が出つくされたというのに、僕らの自転車2台は姿を現さない。
人生初のロストバゲッジだ。


後日、自転車が戻ってきた時の風景。自転車をタクシーに載せてホテルまで。

最近本当に飛行機についていない。
これまで何十回も飛行機に乗って一度も大きなトラブルはなかったのに、最近のフライトだけで、
ガラパゴス島行きで飛行機に乗れず(悲しみの顛末はこちら)、
ヨーロッパ行きでテントなどの荷物がなくなり、
そしてインド行きでは自転車が届かない。
何か空の神様の機嫌を損ねる事でもしたんだろうか。

寝不足の頭に、自転車が届かないという事実がずしりとのしかかる。
クレームカウンターに行くと(もちろん他のロスバゲ乗客で溢れかえっていた)、むこうは手慣れたもんで、「ああ、モスクワにあるよ。明日には届くから」とろくに確認もせずに気軽に言いはなつけれど、こちらは不安でしょうがない。
自転車のないチャリダーなんて、翼の折れたエンジェルよりたちが悪い。
「このまま自転車がこのまま届かなかったら日本に帰るしかないのか?」とついつい最悪の事態まで考えてしまう。

そんなわけで、全く泊まる予定のなかったデリーで自転車の到着を待っています。
混沌とした街並みが新鮮で、カレーはびっくりするほど美味しくて少し機嫌は直ってきたけど、
ちゃんと自転車が届くのか、不安は尽きません。
なにせ相手はロシア、なにせここはインドですからね・・・


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