Jul,20,2012

とうとう「アルプスといえばスイス!」のスイスにやってきた。
スイスに来たかったというよりは、アルプスの本場を確認しなくてはヨーロッパをあとにすることはできないという気持ちのほうが大きかったかもしれない。
度々ブログにも書いてきたけれども、イタリアンアルプス、スロベニアンアルプス、フレンチアルプスを楽しむ度に、スイスアルプスへの期待と、スイスアルプスはこれ以上に、いやこれらと同等に素晴らしいのだろうかという不安で複雑な気持ちになった。


ミシュランの3つ星のレストランになんて行ったことはないのだけれども、
スイスをレストランに例えればこれに当たると思う。
世の中から素晴らしい景色だと認められていて、多くの人々が一生に一度は自分の目で確かめにいきたいと思うのだ。山が格別好きでなくても、トレッキングや登山をするわけでなくても、
有名だし、みんなが素晴らしいというのであれば行きたいと思うわけなのだ。


ミシュラン3つ星のレストランに行くためにずいぶんと前から予約して、
3つ星レストランのなかでもどこが一番素敵そうかを十分にリサーチして、
期待度200%で挑む。
これらのレストランにサプライズはいらない。美味しくて当たり前なのだ。
美味しくなくっちゃならないのだ。
だから少しでも気に入らないことがあると
「あれれ、これがミシュラン3つ星のレストランなのか」って評価がぐぐっと下がる。


人々が死ぬ前にどこで食べた料理が美味しかったのかと思い出す時に、必ずしもミシュラン3つ星級のレストランの味をあげるわけではないと思う。
通勤帰りに見つけた小さいお店が予想外に美味しくて、秘密の隠れ家のごとく通ったそこのことを思い出すかもしれない。
大好きなパートナーと、友人たちと、楽しんで食べた普通のご飯のことが一番思いだされるのかもしれないし、お母さんがにぎってくれたおにぎりの味を懐かしむのかもしれない。


スイスってまさにそれだよなって思う。
綺麗なのだ。
雪が美しく被さった山々、見ているだけで心が浄化されそうな澄んだ湖、青々とした木々に華やかな野花たち。どこを切り取ってもポストカードになりそうな美しさ。
世界中の人々がその美しさについて否定することはできないパーフェクトさ。
でも、スイスは美しくて当たり前なのだ。
アルプスっていったらスイスなのだから、
世界中の美しい場所は「○○のスイス」と形容されるくらいなのだから。


正直なところスイスは物足りなかった。
それは今まで山ほどスイスの美しい写真を見てきて、
「あ、この景色ね、知ってる知ってる」と確認しに来た気分ということもあったし、
素晴らしそうなところへ行きたければかなり高額のお金を支払って乗り物に乗らなきゃならないという現実的な問題でもあったし、
その素晴らしいところはいつも人、人、人でいっぱいでげんなりするというところでもあった。
そしてきっと、自分たちなりのプラスアルファーを私たちは得ることができなかったことにがっかりしてしまったのだと思う。
勿体ないと言えば勿体ない。
でもそれが大きな期待を背負ったミシュラン三ツ星レストランの宿命なのではないかとも思う。

でもやっぱり経験として、一度はミシュラン三ツ星のレストランにも行ってみたいなぁと思ってしまうのだけど。



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