Jul,17,2012

シャモニーはヨーロッパ最高峰モンブランを間近に望む有名な観光地。
久しぶりに日本人の団体ツアー客とわんさかすれ違い、穴だらけのTシャツで街を歩くのが小恥ずかしくなる。といってもどの服も穴だらけだから仕方がないのだけど。
シャモニーまでの道のりは坂は多いし天気は悪いし膝は痛いしで意外と大変だったけど、シャモニーでは朝から雲ひとつないハイキング日和が続いた。

街からゴンドラに乗って一気に標高を稼ぐ。そしてゴンドラを降りれば目の前にはモンブランを筆頭とする雪山や氷河が作り出すパノラマビューが広がっている。
ううん、これは美しい。
完璧な調和のとれた、非の付けどころのない美しさだ。

ゴンドラ駅から近くの湖までハイキングをした後、再びゴンドラで街まで下る。
そしてキャンプ場に戻り、ワインを飲みながら夕日に染まっていくモンブランを眺める。
これを贅沢と言わずして何と言おう。

でも正直、なにか違和感がある。
皮肉でも何でもなく本当に素晴らしい景色だと思うのだけど、でも心は震えない。
自分はこの風景には属していないのだという思いが、どうしてもぬぐい去れない。
これまで自転車で越えてきたフレンチアルプスの峠の方が美しいとすら思う。
写真にすればシャモニーの風景の方が美しいに違いないのだけど、峠から見た無名の山々の方が自分の心に強く響いている。

ゴンドラに乗って絶景を見に行くという行為に、どこを切りとっても人工物が目に入ってくる風景に、うんざりするくらいすれ違う観光客の群れに、どこか気持ちが覚めてしまっているのかもしれない。
きっと人々はモンブランを拝みにシャモニーへ来るのだろうけど、残念ながら女性的で緩やかな曲線を描くモンブランのシェイプは、あまり僕の心に響くものではなかった。
そうなると、せっかくシャモニーにいるんだし明日も歩いてやるぞーと気合を入れてみても、なかなか気持ちが乗ってこない。
でもまあ、いくら有名な観光地だからって無理に感動しないといけない訳じゃない。
自分が感じている素直な気持ちを大切にしようか。


メッシュテントにカーテンをつける。これでヒマラヤ対策もバッチリ?

というわけで、翌日はキャンプ場で過ごすことにした。テントの改良、自転車の整備、壊れたカバンの修復、その他いつかやらなくちゃと思っていた雑用を次々にこなしていく。
見上げればモンブランが見える絶景キャンプ場でノンビリと過ごす一日、
僕にとって、こんな時間こそが贅沢そのものだ。


フランス最後の晩餐は、バゲット、ワイン、チーズに生ハムの黄金カルテット。

夕方、街へ買い出しに行ったら、偶然にもスペイン人の友人カップルと再会した。ベネズエラのロライマ山で一緒だった彼らとこんなところで再会できるなんて物凄い偶然だ。
山が大好きな彼らは数日後からモンブラン登頂に挑戦するらしい。
偶然の再会を喜び、お互いに頑張ってね!とエールを交換して彼らと別れた後、モンブランの姿がいままでとは全く違って見えてきた。
友人があそこへ登りに行くのだと思うだけで、今まではただの風景の一部だったモンブランが、僕にとっても特別な山、親近感を持てる山に見えてきた。
僕にはモンブランを登る知識も技術も経験もないけれど、いつか登ってみたい。
その時には、きっと僕もこの風景に属することができるんだろう。

それにしても、“人の手が入り込んだ完璧な風景”が好みじゃないなんて、
これからスイスに行くというのに大丈夫か?


キャンプ場からの風景。右側の丸いっこい山がモンブラン。

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