フレンチアルプスの締めはガリビエール峠。
標高2645mのこの峠は、フランスの中でも一番最後にオープンする峠だ。
事前の情報ではまだ雪で閉鎖しているとのことだったけど、峠に近付くにつれて「ガリビエール峠オープン」のサインを発見できたので、せっかくだからと峠に取りついた。
路面はツールドフランスの選手を応援する落書きで溢れている。
実はこの峠、ツール・ド・フランス定番の難所として有名な峠。
ツール・ド・フランスに興味も憧れもない僕らとしては別に感慨もないのだけど、有名な峠にふさわしく、ロードレーサーにまたがった数多くのサイクリストたちが、颯爽と僕らを追い抜かしていく。
それにしても寒かった。
開通したばかりの峠はまだまだ道路脇に残雪が残っていて、ただでさえ強い風が、雪の上を通ることで一層冷たくなり、容赦なく僕らに吹きつける。
長い峠なので途中で休憩したかったのだけど、体を動かさないと寒すぎて辛いのでほとんど休憩を入れることができない。
そんな極寒の峠だったけれど、その寒さも吹き飛ぶほどの素晴らしい景色が迎えてくれる、美しくて気持ちのいい峠だった。
フレンチアルプスの峠は、豪華絢爛な風景という訳じゃないけれども、雄大で、優しくて、静かで、走っているだけで心が洗われるような景色が続くので大好きだ。
峠はもう少し。最後のひと踏ん張りだ。
ゆっくりと地味に登り続け、ようやく頂上まで到達したものの、下り側はまだ雪で閉ざされていた。
仕方がないので、一旦頂上で一息ついた後は同じ道を少しだけ戻り、途中にあるトンネルを利用して峠の反対側に出た。
さあここからは下りだ。
ダウンジャケットを着てもぶるぶる震えるほど寒い下り道だったけど、これぞアルプス!という美しい草原と高山植物が咲き乱れる素敵な景色が続く。
そして一気に2000m近く下ると、さっきまでの寒さがうそみたいに、太陽が燦々と降り注ぐ低地に降りたった。
なんかフレンチアルプスをやり切ったぞ!という爽快な気持ちだ。
峠の反対側はまだまだ雪で閉ざされていた。
フレンチアルプス、想像していたよりも何百倍も楽しかったなあ。
さあ低地に戻ってきたことだし、ちょっとかっ飛ばして、エクスレバンに住む友人に会いに行こう。
下れば下るほど緑が濃くなっていき、かじかんだ手も緩んでくる。