Mar,31,2012

「え?こんなところに降りちゃうの?」
桟橋もない川岸ぎりぎりに私たちの小さな船は停まって、お兄さんが川の浅瀬に木の梯子を立て掛けた。
「そうさ、ここがアチンス終点だよ。」
私たちとフランス人のセドリックは言われるがままに降りた。

500mくらい奥に建物が見えるものの、目の前は笑っちゃうほどなーんにもない。
バックパックを背負った3人が妙に浮く。
僕たち探検隊にでもなった気分。
ホッホウ、これは面白いところに来ちゃったのかもね。


とりあえずテクテクと建物の方へ向かう。
どうやらここは間違いなくアチンス村のよう。
村といってもメインロードは小さな砂山だらけの砂道で、その両端に数軒家が連なっているだけだ。
午後1時、真っ白な砂は絶好調に温まっていて、ビーサンから入り込んでくる砂があまりに暑くて火傷しそうだった。あっちい砂と格闘しながらやっとの思いで一軒目の食堂に辿りついた。
「まぁまぁとりあえず何か飲もうか。」

4時間のどんぶらどんぶら船の旅もなかなか楽しかった。
ローカルの人たちも乗る定期船かと思っていたら、船員2人のほかは物資だけしか載っていなくて、
私たちとセドリックだけがお客だった。4時間も乗って一人10ヘアイス(約500円)なのだからかなりお得とも感じるし、50kmもない距離を4時間もかかるなんて時間の無駄よとも思えるかもしれない。
ただ、どんぶらどんぶらマングローブやヤシの木、砂丘を眺めながら下っていくのはゆったりとしていて気持ちがいいものだった。

私たちが今目指そうとしているところはレンソイス・マニャランセス国立公園といって、
白い砂漠に雨期と雨期の直後はエメラルドグリーンともクリスタルともいわれる水が張って、それはそれは美しい場所らしいところで、
多くの人たちはバヘイリーニャスという街からジープでツアーに行く。
私たちは友人のチャリダーよしさんからアチンス村からは歩いて国立公園に入れて、静かで美しくていいからと聞いていて、とりあえず何の下調べもせずアチンスまでやってきた。
アチンスにくれば詳細は分かるさとタカをくくってやってきたのだけれど、
本当にこの村でよかったのだろうかと来てみて心配になるほどちっちゃい村だった。

一方セドリックは行きたい宿があった。
「Luziaという宿に行きたいんだけど」と、食堂のおじちゃんに尋ねる。
「それは6km先にあるよ。バスなどの乗り物はないし、歩けば2時間かかるよ」とおじさんは言う。
6kmに2時間はないよねと3人して顔を見合わせたけど、メインロードでこの状態の砂道だったらこの先の道はもっと酷いだろうし、この暑さなら6km2時間で到着すれば恩の字だよなぁと納得する。

食堂の壁に貼ってある適当に描かれた地図によると、Canto do Atinsという別の村にあるそのLuziaという宿は、どうやらレンソイス国立公園の砂丘群のすぐ隣にあるようで、
いまいるアチンスよりも砂丘に近そうに書いてある。


梯子をかけてくれるだけありがたいと思わなくちゃね


アチンスに着いて一番最初の人工物。

ふむふむ、せっかくセドリックと出会えたのもなんかの縁だし、私たちもそこに行ってみようか?
でも、歩きは無理よね。この道がずっと6kmも続くのであれば足がもげちゃうわ。
色々と交渉して一人10へアイスで、食堂のおじさんに連れて行ってもらえることになった。
初めは3人で60へアイスと言われたところを半額に値切ったものだからおじさんは相当不機嫌だったけど、私たちはかなりご機嫌でLuziaへ向かった。

ボッコンボコンの砂道を車の後で飛びはねながら、車で行けたことに感謝した。
ぽつんぽつんとあった家々もとうとうなくなって、しばらくしてレンソイスの白い砂丘が近づいてきた。
今にも雨が降り出しそうなグレーな空だったけど、延々と続く白い砂丘は強烈に眩しかった。
そして「え、こんなところに?」というところにLuziaはあった。
Luziaという宿がいったいどんなところだかまだ中は見ていないけど、目の前に広がる砂丘に期待の水が張っているのか知らないけど、でもなんかぽっつんとたたずむ宿Luziaに来れたことが嬉しかった。


荒野にぽつんと3軒の家が並んでいた。もちろん電気はない。


目の前は砂丘

このLuziaもセドリックが調べてやってこれたわけなんだけど、
こんなに適当な流れで何にもないところにやってこれたのが嬉しかった。
インターネットで調べればたくさんの情報が出てきて、それはそれで便利でありがたいし、
それに慣れてきてしまって、色々なことをちゃんと下調べしておかないと不安にもなったりするようになってしまったのだけど、
そうそう旅の醍醐味ってこういう感じだったよなぁって新鮮な気分になった。

さぁ目の前の砂丘に登りに行こうじゃないか。
どんな世界が待っている?


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