Mar,25,2012

毎日気持ちよく汗を流し、自分で作った穀物や野菜を食べ、音楽を奏で、自分の好きな芸術に心の安らぎを求める日々。しかも独りではなく、仲間や家族に囲まれた温かくて楽しい生活。
弓場農場にいると、そんな晴耕雨読を絵に描いたような悠々自適の生活も可能なんじゃなかろうかと思えてくる。

もちろん対外関係とか人間関係とかお金とか将来といったややこしい事を考えなくていい無責任な立場だからそんな妄想を抱ける訳で、実際に農場で暮らすとなればそんなに単純なものじゃないのは重々承知だ。
でも思わずそんなことを考えてしまうほど、弓場農場での日々はフワフワと心地が良い。

朝起きれば、仕事から帰ってくれば、農場のお母さんたちが温かい食事を用意して待っていてくれる。
食事からベッドからお風呂まで、何一つとして不自由を感じることがない。
僕が体調を崩した時なんて、みんなが無理しちゃ駄目よと本気で心配したり怒ったりしてくれた。
誰も彼もが優しくて、穏やかな顔をしていて、農場全体が温かい空気に満ちている。
何かに悩まされることもなければ、責任を背負う事もなく、お金を使うこともなく、頭を使う必要すらない。

マンガ版「風の谷のナウシカ」の終盤に、ナウシカがヒドラの館を訪れるエピソードがある。
音楽と緑と安らぎに溢れた館の中で、お風呂につかりながらナウシカが自分の使命を忘れかけるというシーンだ。
弓場農場では、あのエピソードを繰り返し思い出していた。
ここは旅人にとって、あの館のように完璧な調和に満ちた世界。
子供時代に舞い戻ったかのような錯覚にすら陥る、心地の良いモラトリアム空間なのだ。


弓場の人たちと旅人がコラボしたライブ。みんなノリノリで踊りだすあたりがさすがブラジル育ち!

弓場農場も高齢化が進み、次第に今の形を変えていくことになるのだろう。
でもここで経験した温かさは、ずっと僕の憧れや目標であり続けるに違いない。
形態こそ変われども、この農場のような温かい空間を、自分たちの大好きな人たちと何かしらの形で作り上げることができたら、どんなに幸せだろう。

予定2週間がたち、安らぎに満ちたモラトリアムの世界を発つときが来た。
次の予定が詰まっていなかったら、もっともっと長い間ここで過ごしたかった。
お世話になった一人一人にお礼を言いに行くと、逆に「手伝ってくれてありがとう。」「またいつでも来てね。」と口々に優しい言葉をかけてもらった。
お世話になりっぱなしの立場だったのにそんな言葉をかけてもらえるなんて思ってもいなかったから、涙が出そうになる。


釣果はその日の深夜食堂のメニューに反映されるので、意外と責任重大。

農場を出てさらに2週間が経とうとしている今でも、農場のことを思い出すと心が温かくなる。
弓場農場、本当に来てよかった。


釣った魚は深夜食堂で刺身にから揚げに変身。


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