Feb,03,2012

サンフランシスコ峠越えの最終日は、強烈な向かい風の中、走行距離172km、走行時間10時間40分、標高4200mダウンという記録づくめのエクストリームな一日で締めくった。
最終日とはいえさすがにやり過ぎた。疲れすぎてコピアポの街に着いた時は頭の中が真っ白だった。

何事もほどほどに。
それがこの3か月にわたったアンデス三昧で得た教訓だ。
アンデスは想像以上に美しく、そして想像以上にハードだった。
冒険旅行は極力しないタイプの僕たちにとって、1週間分の食料を持って、ひたすら砂道を押して歩くなんて、後にも先にもないことなんだろう。
地球上のものとは思えない素晴らしい風景が続く半面、そのハードさが精神的にこたえる日々だった。
そのお陰で、この3か月で「自分の心が折れるまでのカウントダウン」をする能力が少しアップした気がする。


お正月を一緒に過ごしたスイス人サイクリスト、クラウスと。静かで美しいお正月を3人で楽しんだ。

1回や2回の峠越えなら1週間だろうと2週間だろうとハイテンションで乗り切れるけれど、
それが何回も続くとなると、カウントダウンが佳境に入る前にうまいこと休憩を入れて、適度に自分たちを甘やかしてストレスを解放してあげないと心がもたない。
これはきっと自転車旅でも、バックパック旅でも、社会で働いている時も、全く同じなんだと思う。
せっかくの楽しい旅を、美しい景色を、素晴らしい体験を、「辛い、苦しい、つまらない」って文句ばっかり言いながらやり過ごすのは、余りにもったいない。

日本で働いている時は、睡眠時間を削ってでもキャンプに行ったり山に登ったりと体を動かしまくるのがストレス解消の方法だった。
普段体を動かしまくっている今のストレス解消法は、逆にひたすらダラダラすることだ。
心が折れる前に、少しくらい高くてもいい宿に泊まり、スーパーに行き、欲しいものを「何でも買いねえ、飲みねえ、食いねえ。」とポンポン購入する。
もちろん、宿が高くするといっても一泊あたり数百円ほど高くするのが気持ち的にも財布的にも限界だし(それ以上高い宿に泊ってもかえって居心地が悪いだけだ)、
スーパーといっても日本でいえば田舎町でおばあちゃんが営む「○×商店」くらいの品揃えだし、
ポンポン購入するといっても缶詰とか肉とかワインといったいつもの食糧品を、いつもより1割くらい高いものにグレードアップするだけなのだけど、
それだけのことでも「ああ休みだ!」という気分が盛り上がる。
あとはそれらを片手に丸一日ぼーっとのんびりするだけで、カウントダウンの目盛りはぐーんと元に戻る。
そして気を取り直して、再び苦しくも美しい道のりに戻っていく。
このバランスを程よく取れるようになったのが、この3か月の財産かもしれない。


ここがアンデス越え最後の峠@標高4400m。ここから標高400mまでのスーパーダウンヒル!!は強烈な向かい風の為全く下りの楽しさ&楽さはなかった。

当初の予定ではもう一つ未舗装悪路の峠を越える予定だったのだけど、
もう二人ともアンデスの峠はお腹いっぱい、そして砂道を押すのもお腹いっぱいだ。
このサンフランシスコ峠越えで、アンデス編はおしまい。

3年間で約2万1000km(年間7000kmペース)しか走っていなかった僕らが、このアンデス3か月だけで約5000km(年間2万kmペース)も走った。
せっせと登った総上昇量は5万5848m分。富士山を約15回、エベレストなら約6回半も自転車で登ったことになる。
僕らにしては上出来の走りまくりの日々だっだ。

アンデス編を終えた直後の今ですら、あれは夢か幻だったんじゃないかと思ってしまうほど、地球上の風景とは思えない素晴らしい景色の連続だったアンデス。
“どんなに大変だって、この素晴らしい景色を見るためだったら何度でも峠に取りついてやろうじゃないか”、そんな風に思える風景は、地球上にそんなにたくさんあるわけじゃない。

この21世紀に、かくも素晴らしい風景が残されていることに、感謝。


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