Jan,31,2012

何度も諦めかけたサンフランシスコ峠越え。
想像以上に大変なアンデスの日々に二人の心はそろそろキャパシティを越えそうになっている。
でもこの峠は越えたい。何でか分からないけれど、この峠だけは越えたかった。

休憩日を頻繁に入れながら峠の麓フィアンバラの村に到着し、素敵なキャンプ場でのんびりアサード(BBQ)をしながらさらに休憩する。
やる気が満ちてきたところで、8日分の食料を買い込んで、ついでにコーラやビールまで詰め込んで、史上最高の重さになった自転車でよろよろと峠に取りつく。ここまで重くなればさらに数キロ重くなったところで大した差はない。それよりも自分たちを甘やかすご褒美品を持っていくことの方が今は重要なのだ。

登り始めてたった数時間で、諦めなかった自分たちに感謝した。
切り立った奇岩群、七色に輝く渓谷、広大な高原、そして美しい雪山。
標高を上げれば上げるほど、次々に違う風景が目に飛び込んでくる。
そのどれもが本当に素晴らしい。これまで越えてきた数々の峠のハイライトを全部ピックアップして一挙に大公開してくれているかのような美しい道のりだ。
加えてアルゼンチン側は傾斜も緩やかな快適舗装路なので、自転車の重さも大して気にならない。
アンデスの集大成のような充実した走行に、二人とも自然と笑みがこぼれる。
ああ、来てよかった!諦めなくてよかった!


神秘的だった山、インカワシ

2011年の大晦日、峠まであと20km地点にある山小屋で早めに走行を終えてノンビリする。
アルゼンチン側のイミグレに併設されたこの山小屋は、目の前にサンフランシスコ山とインカワシ山が見える絶景スポット。頑張れば今日中に峠の反対側にある湖に到着することもできたけど、まあ急いだってしょうがない。
こんなに美しくて幸せな場所に、次は来れるのか分からないんだから。
そして大晦日の夜は、明日の走行に備えて夜10時前に就寝。
年越しの瞬間夢の中にいるなんて、きっと小学生以来のことだ。
元旦、朝起きてみたら、サンフランシスコ山が真っ白に雪化粧をしていた。昨日まで雪のかけらすらない真っ茶色の山だったのに。


チリ、アルゼンチンの国境、標高4748m。


ご褒美のビール。イエーイと言いたいところだけど、結構寒くて避難小屋の中でチビチビと飲む。

昼前に標高4800mのサンフランシスコ峠を越え、チリ側の未舗装路を20kmほど下ると、目指す湖、ラグーナヴェルデが見えてきた。
この世にこんな色が存在するのかと目を疑ってしまうくらい美しい色をした湖に、二人して「ああ」とか「うへえ」とか「うぉお」とか、思わず奇声を漏らしてしまう。


まるでトロピカルな海のように鮮やかなラグーナ・ヴェルデ。高地にいることを忘れそう。

凄い。なんて素晴らしい風景が続く峠なんだろう。
何度も辞めてしまおうと思ったこの峠。
きっと、この素晴らしい風景たちが、僕たちに諦めるなって叫び続けてくれていたに違いない。
さらに嬉しいことに、強烈な向かい風や横風で有名なこの峠なのに、なぜか毎日追い風が吹いている。
とってもうれしいお年玉だ。


北部チリ、アルゼンチンのアンデスの特徴は、山肌のなんともいえない不思議で美しい色。写真では表現しきれない奥の深い色は、永遠の思い出。

元旦の朝はラグーナヴェルデの沿岸に湧く天然温泉の隣でキャンプをした。
期待していた温泉は思ったよりもぬるくて少し残念だったけれど、
大切に運んできたビールで乾杯し、取って置きのお汁粉(9月にペルーで日本人旅行者からいただいたものだ)を雑煮代わりにいただいて、心はホクホクだ。

素晴らしいアンデスの峠越えで始まった2012年。
これは今年も素晴らしい年になりそうだ。


これが最後のアンデス越え。こんな景色を見れるのも最後になるのかと思うと寂しい。


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