Jan,13,2012

標高4、5000mの世界ハマ峠から一旦チリのサンペドロ・デ・アタカマ(標高2400m)に下って丸2日休憩をして、再びアルゼンチンに帰るべく標高4、5000mのアンデスの世界に戻った。
1週間分近い食料を買い込むのもすっかり慣れた。
でももう少し種類の違うものを買いたいよなぁと思いながらも、食料の重さや少ない量でお腹がどれだけいっぱいになるかを考えると、やっぱりいつもの通りの食料にしかならない。
食いしん坊の私としては、もっと食べ物が華やかになればアンデス越えの走行はもっともっと楽しいものになるのにな、と思ってしまう。
誰かサポートカーで運んで~。


なんとも言えない優しいパステル調の山肌。

ハイテンション絶好調で登ったハマ峠に比べて、シコ峠の走行は登り始めからテンションが低かった。
まず何だか体調が優れなくて、休憩の度に道路にゴロンと寝っころがらないと疲れが取れなかった。
道端にゴロリと転がっているからか、チリ人のドライバーたちは次々と心配そうに車を止めて「大丈夫かい?水は足りてるかい?」と温かい声をかけてくれる。
ある一台の車は、すーっと停まったかと思ったらニコニコした家族が、りんご、バナナ、コカコーラの差し入れをしてくれた。うーん嬉しい、ありがとう!!
前回パタゴニアを走ったときも思ったけど、やっぱりアルゼンチン人に比べてチリ人のほうがホンワカしていて温かくて好き。


次はどこの惑星にやってきたんだろう。自転車で宇宙旅行の気分。

チリ人の優しさにはテンションが上がったけど、何せ2日ほどで人がほとんど通らない道になってしまって特に人との出会いはなく、地味に高地へ上がっていくためにペダルをひたすら漕ぐ日々になった。
ハマ峠のチリ側では台風レベルの爆風向かい風に合ったので、シコ峠のチリ側は今度は相当な追い風になるんだろうと期待して登ってみたら、何故か追い風ばかりではなくて、酷い横風に何度もめげそうになった。
それでもきっと追い風だった時間は長かったのだろうけど、何せ未舗装の悪路だから、追い風が素晴らしくてもそれを最大限に利用できずで、あまり恩恵を受けた記憶として残らないのかもしれない。

自転車の旅はシンプルで、シンプルだからこそ日々の暮らしの教訓になるようなことを感じさせられることが多い。
たとえば風もそう。
向かい風はちょぴりでも吹けば辛い風当たりと感じるのに、追い風は結構気づかないことが多い。
「なんか私スイスイ走ってるけど足の筋肉が立派になったからだわ。」なんて自分のお陰だと過信したりするけど、実際止まってみたらものすごい追い風が後押ししてくれていたことにやっと気づいたりして、「はぁ、もっと謙虚にならなきゃいけないね。」と思う。
人生も一緒。


写真を見て思い出すだけでも溜息が出る。はぁ、本当によく押した。重かった。

それはそうと、シコ峠越えは体力的にも精神的にもハードだった。
どちらかというと精神的にハードだったのかもしれない。
悪路の砂地を押すことが多くて、なかなか思うように進めないこともあったし、
自転車に乗れるような道でも常に足元の石ころや穴や砂などに気を遣わなくてはならないからほぼ地面を見ていたというのもあるし、
風がきつくて乗るのも押すのも大変で、休憩しても心が落ち着かないということもあった。


天女が水浴びでもしてそうな湖。アタカマ高原にはこういう湖がゴロンゴロンとある。

でも景色は本当に素晴らしかった。
別の惑星を旅しているんじゃないかって思うくらい、いやSF映画のセットの中に飛び込んでしまったのではと思ってしまうくらい、不思議な景色を沢山見た。
一日の終わりに、あの景色は夢だったんじゃないかと、思わずデジカメの写真を確認してしまうくらい夢のような時間を過ごした。
でもデジカメの写真には、あの神がかった素敵さの3分の1も映っていない。
やっぱりあの景色は夢だったのかと今でも疑ってしまう。

地図上ではすぐ隣にあるハマ峠とも全く違った風景だったのも印象的。
ハマ峠も美しかったし、シコ峠も美しかった。
どちらが素敵とは決めかねる。
敢えて言うならばハマ峠(チリ側)はずっと美しい景色が広がり続けていたのに対して、シコ峠はすごい景色とどうでもいい景色が交互にやってくる感じで、どうでもいい景色でも道は相当悪いから、そういうときは何でこんなに辛い思いして漕いでる(押してる)んだと思ってしまうことが多かった。


地味な色なんだけど、めちゃくちゃビビッドだった山。この山、生きてると思った。

しかし、サルタで計画した私のグランプランによると大きな峠越えが後3回もある。
まだ2回しかこなしてないのにかなり弱気になってきた。
凄い景色に出会いたいけど、でも想像以上にハードだよなぁ、この旅。
とりあえず次の峠にとりつくパワーすらなくなってきているので、まずはどこかで充電充電。


まるで点描画のよう


写真にするとなんとも薄っぺらい色になってしまうのが悲しい。まるで花で敷き詰められているかのように優しくて、いい香りでもしてきそうな美しい光景。だけど風はゴォーゴォーと唸っています。


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