Jan,10,2012

ハマ峠を越え、一気に2000m以上も下って、標高2400mの下界サン・ペドロ・デ・アタカマに到着した。空気が体中にもわっとまとわりつく感じがして、とにかく暑くてたまらない。

さっそく街の中心に行って宿を探し回っていると、フランス人ツアー客のおじいさんが、ほんの1m足らずの超至近距離から僕らにビデオカメラを向け、片手を小さくまわして”さあ走りなさい”的なサインを送っていた。

一言の挨拶もない。写真を撮っていい?という断りもない。もちろん「ありがとう」もない。
いっぱしのカメラマン気取りなのか、ニヤニヤしながら、遠慮も礼儀も常識もなく、まるで珍しい動物にでも出くわしたかのように、嬉しそうに僕らを撮影していた。
あまりの失礼さに、ようこが自転車を停めて「ちょっと、いくらなんでも失礼すぎない?せめて一言断りなさいよ。」と文句を言ったら、「ノーイングリッシュ」と肩をすくめるだけだった。


早朝は氷点下の冷え込み。指がちぎれそうなほど寒い。

観光客で溢れかえる観光地では、本当にびっくりするくらい数多くの人たちから写真を撮られる。しかも不思議なことにそのほとんどがツアー観光客だ。彼らからしてみれば、こんなに標高が高くて何もない僻地を自転車で走っている僕らの存在が、さぞ物珍しく写るのだろう。
でも、正直いい気分はしない。


美しい湖だって二人占め。


一言でいいから、せめて手を振るくらいでもいいから、挨拶をくれて、そして写真撮っていい?と一言でも聞いてくれれば、僕らだって別に拒否するほどのことでもないし、その後にじゃあ頑張ってね!とでも応援されれば悪い気分もしない。
でも、車の中から無遠慮に写真を撮られたり(本人は隠し撮りのつもりなのだろうけどバレバレだ)、何の挨拶もなしに「ここは標高4000m。なんとこんなところに自転車登場です。」とかナレーションをつけながらビデオカメラを向けたりするのは、本当に本当に失礼だと思う。
僕らは動物じゃないのだ。


美しいシェイプのビクーニャ。このあたりのビクーニャはなぜかシマ模様。

自転車を漕ぎながらそんなことを考えて腹を立てていたら、ふと身震いがした。
僕も同じことをしているじゃないか。

ようこは決して隠し撮りをしない。人を撮るときは必ずその人の承諾を得てから撮っている。
僕もそれを見習って普段は隠し撮りすることはないのだけど、エチオピアやグアテマラなどの少数民族の村に行った時は、ジャーナリスト気取りで隠し取りをして、それをブログにアップしたりして悦に入っていたものだ。

世界各地で写真に撮られるのを嫌う人たち。
それぞれ写真を嫌う個別の理由はあるにせよ、少し珍しいからというだけで、見も知らぬ外国人から毎日のように無遠慮なレンズを向けられ続けるのが心地よいはずがない。
チャリダーというツアー観光客にとって珍しい旅のスタイルだというだけで、あんなにも無遠慮にカメラを向けてくる人たちがいて、そして向けられた僕らはあんなにも腹が立つのだから。


あの無礼なフランス人は、家に帰ってから「ほら自転車で旅をしている人たちと友達になったんだよ」なんて、孫にでもビデオを見せて得意気な顔をしているのだろうか。
でも僕は、その人のことを、失礼な奴だなんて憤慨できる立場じゃない。

そんな反省をしたチリの砂漠での一日だった。


サンペドロまでは2200mのダウンヒル。さいこ~


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