Jan,07,2012

ボリビアを諦めた代わりにチリ&アルゼンチン北部のアンデスをじっくり走ろうと決めた僕たち。
アンデスの峠越え第一弾は、ハマ峠(Paso de Jama)を越えてチリのサンペドロ・デ・アタカマへ向かうルートに決めた。
この辺りでは珍しく、全線舗装路の峠だ。
でも事前に調べたところでは、ハマ峠は「楽勝だけど特に面白くない」というもっぱらの評判だった。


プルママルカの先は、これぞ峠!という九十九折の1900mアップ。

いくら楽勝ルートと呼ばれていても、ここはアンデス。
標高約1200mのサルタからスタートして最大で標高4800mくらいまで登ったり、一日で2000m登ったり2000m下ったり、チリ側は民家も商店も水もない砂漠地帯だったりするのだから、決して鼻歌交じりに走れる道ではない。
とはいえ、きっと砂まみれの悪路に魅了されたサイクリスト達にとっては、舗装路の峠越えなんて退屈すぎて屁でもないのだろう。それとも「大変」という感覚が完全にマヒしてしまうのだろうか。


そんな前評判の低かったハマ峠。
実際、アルゼンチン側はプルママルカ周辺のウマワカ渓谷が七色に輝く美しい谷が広がって素敵だったけれども、そこを除けばまあボチボチかなあという感じの5日間だった。
でもハマ峠を越えてチリ側を走った2日間は、びっくりするくらい素晴らしい風景が続いていた。


別の惑星に舞い込んだかのような錯覚を覚える。

標高4000mの碧い空、何十種類もの赤色を含んだ複雑なシェイプの断層が美しい山々、そして、まるで地球上の生物を一切拒絶しているかのような美しくも荒々しい大地が何処までも続いている。
さらに時折見え隠れする白い塩湖、真っ青な湖、鮮やかなピンク色のフラミンゴ、優雅なシェイプのビクーニャ。
これが地球上の風景とは到底信じられない。
知らない間に別の惑星にワープしてしまったのではないかと思うくらい、忘れがたい風景がどこまでも広がっていた。


「似ている」と思った。
10年前にジープで通ったアタカマ高原にそっくりの風景だ。
チリのサンペドロ・デ・アタカマからボリビアのウユニまで、アタカマ高原(South Lipez)を貫いて走る通称「宝石の道」は、10日分くらいの水と食料を持って、酷いときには深い砂の中を一日中自転車を押して歩かなければなないほどの悪路で有名な道。
あまりの激しさに、サイクリングじゃなくてエンデュランススポーツだ、という感想を書いていたチャリダーもいるくらいだ。

考えてみれば、チリ側のハマ峠ルートは、そのアタカマ高原(South Lipez)の南側を東西に貫いている道なのだから、風景が似て見えるのは当たり前かもしれない。
そしてハマ峠ルートは、ほんの2,3日分の水と食料だけを持って、快適な舗装路の中で、この素晴らしい風景が堪能できるのだ。
もちろん「宝石の道」と同じ風景が見られるとは言わないけれども(苦労のレベルが全然違う分、得られる達成感やそこに広がる風景への感じ方も全然違うのだろう)、ハマ峠ルートでも十分すぎるほど素晴らしく心に残る風景が見られたので、少しだけお得な気分だ。


僕らはやっぱり舗装路が好きだ。
アンデスで美しいと評判の場所は未舗装路しか通っていない場合が多いので、いそいそと未舗装路を通り、深い砂の中で自転車を押してきた。
そうしているうちに、ひょっとして僕らって未舗装路の悪路に魅せられたのかも?と勘違いしたこともあったけれど、どうやらそれは違ったみたいだ。
未舗装路だとどうしても路面状況を気にしながら走らないといけないので下向き目線になってしまうのだけど、舗装路ならずっと周りをきょろきょろしながら上向き目線で走れるのがいい。
それに、何よりも腕や脚にかかる負担が格段に少ない。体が疲れてくれば疲れてくるほど、心も同じように疲れていって弱気かつ無感動になってくるのだけど、舗装路を走っている方が心が疲弊する度合いが全然少ない。
まあ写真を撮った時の「僕たちアドベンチャーしてます度」が減ってしまうのは難点だけど、それを差し引いても、やっぱり軟弱チャリダーの僕らは舗装路の快適さが嬉しいのだ。


空を思いっきり見上げて空の蒼さを堪能。

楽しさ満点でハイテンションのままハマ峠ルートを越え、サンペドロ・デ・アタカマに到着した。
ちなみにサンペドロは10年前にも訪れている。
10年前は典型的なヒッピータウンという感じだったこの村も、今やヒッピーたちは去り、代わりにツアー観光客とレストランの客引きがひしめく飽和した観光地になっていた。
なんだか観光地の趨勢を見せ付けらるようで、こういうのは少し悲しい気持ちになるなあ。


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