Dec,24,2011

素晴らしかったウユニ塩湖の朝。心は朝から最高潮に満たされた。
ようこはもう満足し切ったようで、「もうボリビア旅も終わったね。」なんて冗談を飛ばしている。
そんな満たされた心のまま、100km先のウユニの街を目指して出発だ。
今日中にウユニに到着したら夕食はやっぱりピザだよなあなんて考えながら自転車をスタートさせた矢先、出発からわずか5分後、ようこが後ろでなにか叫んでいる。

「リムが割れたー」


明け方のウユニ塩湖。薄いピンクの大地が美しい。

前輪のリム(車輪の骨組の円周部分)が、パックリと裂けていた。
ブレーキをする度にブレーキシュー(ゴム)と擦れて少しずつ減っていく個所だ。
いつかどこかで駄目になるもので、僕のリムはすでにパタゴニアで割れて交換している。
まあ3年も耐えたのだから、よく頑張ってくれた方だ。

でも、でもだ。
よりによってここで壊れるか?
世界一広いと言われるウユニ塩湖の、文字どおりど真ん中。
元に戻るにも先に進むにも、岸まではたっぷり80kmある。
しかも車を捕まえようにも、車が頻繁に通る道(塩湖の中にも一応道がある)までは20km近く離れている。
どうする?一体全体どうするよ?


とりあえず押してみるけど、いったゴールはどこ??

とりあえずそのまま乗ってみたけど、すぐにパンクした。そりゃそうだ、まあしょうがない。
次に全荷物を片方の自転車に積み込み、僕が壊れた自転車を引きずり、ようこが全荷物搭載の自転車を押して歩いてみる。
広大な塩湖のど真ん中で、自転車を引きずって歩く僕と、行商人みたいな姿で自転車を押すようこ。
お互いにかなり笑える格好だ。
でも、これで80kmも持ちこたえるはずがないので、1キロほどで諦める。

幸いまだ早朝だし、あと丸1日半分の食料と水も持っていた。
それに、この状況でこれだけ楽天的に写真を撮ったりしていられるのも、ウユニ塩湖の上だからだ。
これがベシャベシャ&デコボコのコイパサ塩湖の上だったらパニックになっていたし、深い砂道を押して歩いている時だったら泣き叫んでいた。
自転車を押して歩けるハードな路面状態の、しかもツアージープが頻繁に通るウユニ塩湖の上だったのが、不幸中の幸いだ。


行商に出発するようこ。果てしない・・・

ここで最後の手段。とりあえずパンクを修理した後、ちょっと小細工をして、騙し騙しながらも走れる状態にまでもっていく。
これ以上走ったら裂け目がどんどん広がっていくし、タイヤをはじめとする他のパーツも駄目になっていくけれど、とりあえずあと20kmもってくれればいい。
ツアージープが通る道まで出て、そこでヒッチできる車を探そう。
たとえ車が見つからなくても、まあ2日間押し続ければ塩の上から脱出できるだろう。

数キロ走るたびにリムを確認して、だんだんと裂け目が広がっていくのをなすすべなく見守る。
はたしてあと何キロ持つのだろうか。時限爆弾を抱えている気分だ。
幸いにもまだまだリムは持ちこたえてくれている。あと10kmもってくれ!

途中、南の方から走ってきた陽気なイタリア人チャリダーと合流した。
僕らの自転車を見て、とっても陽気に満面の笑顔で心配してくれたので、なんだか楽しくなってきた。
あと数キロで道の上だ!


ウユニにも一応道路らしきものがある。凸凹が少ないので助かるけど、でも果てしないことには変わらない。まだ自転車は持ちこたえるか?

そして、ついにその時が来た。
隊列を組んで走る2台のジープが静かに止まってくれた。
そして中にいたのは何と日本人のグループだった!
ボリビア在住の日系の方々と日本から観光に来られた方々のグループが、快くヒッチを承諾してくださったお陰で、僕らは塩湖の上で干物にならずに済んだ。本当に助かりました。
それにしても車に乗ってからはあっという間だ。イタリア人チャリダーもあっという間に抜き去り、あっという間に陸地に出て、あっという間にウユニの街に到着。
車って速い乗り物だなあ。


陽気なアルピニスト、ダニーロ。自分たちがトラブルを抱えていることなんてすっかり忘れて笑顔、笑顔。

さて、ウユニの街に到着してホッとしたのもつかの間、次の大きな課題が立ちはだかる。
この先はトゥピザ経由でアルゼンチンまで走るつもりだったのだけど、今のままでは先に進めない。
とにかく自転車を修理しないと。
でもここはボリビア。残念ながらちゃんとした自転車屋を見つけるのは至難の業だ。
大都会ラパスですらツアー会社の修理工房が1件あったくらいで、あとは絶望的な自転車屋しか見当たらなかった。
ためしにウユニの街を回ってみたものの、おっちゃんパンク直せるの??と突っ込みたくなるおじいちゃんの自転車屋くらいしかない。
これはどうしようもない。アルゼンチンまで行くしかないか・・・
さあどうする?

***お知らせ***
NOTEにボリビア・チリ北部をアップしました。
前回のペルー編から、「Cycling Data」として、チャリダー向けのデータ&簡単な宿情報を公開しています。
いつか誰かの参考になれば嬉しいです。

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