Dec,15,2011

チリの美しい国立公園内を走り抜け、ボリビアに再入国して塩湖へ向かう。
今回のルートではコイパサ塩湖とウユニ塩湖を走る。
ウユニ塩湖は多くのサイクリストが走るところで、雨季まっただ中でない限り堅く締まった塩湖は走りやすいという。
一方コイパサ塩湖は乾季でも湿っているところで、雨季の始りの今は通れるか通れないかギリギリのところだ。つい2,3週間前に走った人からかなり湿っていて走りにくいけれど走行は可能だったと聞いた。
コイパサ塩湖を大きく迂回してウユニ塩湖に向かうことも可能だったけれども、コイパサ塩湖を突き抜けたほうが距離ははるかに短いし、せっかく走るのなら塩湖を走りたかった。

まずはチリ・ボリビアの国境から、地図にもはっきり書かれていないような道を通ってコイパサの村へ向かった。国境の小さな村ピシガで、「コイパサへはどの道を通って行けばいいの?」と尋ねると、みな「コイパサはあの山の方向だよ。」とはっきり見える大きな山を指さす。
あの山に続いている道を行けば間違いないからと言われると、迷いようがないのねと自信が持てるような、誰も明確な道を知らないんじゃないかと心配になるような、不安定な気持ちで前に進む。

唯一頼りになるのはGPSでコイパサ村の位置そのものは分かっていることで、
それに向かって走ればいつかはコイパサ村には着くはずになっている。
さぁ前進するのみ。


このハードなルートで出会ったフランス人の女性ソロサイクリスト。60歳を過ぎた小さな女性はスピードは遅かったけれどもたくましかった。ウシュワイアを目指す。

相変わらず深い砂に埋もれたりしながらも、着実に大きな山に一歩一歩近づいて行った。
そしてとうとう塩湖が現れた。
コイパサ村はコイパサ塩湖の中にある大きな島にある村で、本格的な塩湖走行は翌日になるけれども今日も少し塩湖を走ることになる。
塩と砂とが混じった道は堅く締まっていて意外と走りやすかった。
あれ、コイパサ塩湖って湿っているんじゃなかったっけ?と思いながらも、「こんな感じだったら楽勝じゃん。」と二人ともなんだかとっても強気になった。
強気になってくると、わざわざコイパサ村に寄らなくても、塩湖を突き抜けて明日の目的地に行ける気がしてきた。明日の目的地もGPSでちゃんとポイントは分かっているし、このまま塩湖を走り抜けちゃおうかと強気の決定を下す。
行け行けゴーゴーなのだ。


こんな道でいいのかしら。ちょっと不安にもなるけど。


みんながあの山を目指せば大丈夫っていうんだから、きっと大丈夫

道なき道を走りだした私たちは、ものの2,3分で意気消沈。
沈む、沈む、めりめりと塩の中に自転車が埋まっていって、一歩一歩が恐ろしく重い。
重くて大変なのに意地でしばらく頑張って走ってしまったので、塩湖縦断をあきらめた後も、今度はコイパサ村への道がどこにあるのか全く分からなくなってしまった。
足がもつれながらも塩湖から陸地へ戻り、今度は砂地の中をズルズルと自転車を引きずる。小さな丘の上に登って道を探しても道は全く見つからない。
とうとう元来た道上にあった小さな小屋を遠くに見つけて、泣く泣くそこまで戻ることにしたら、ラッキーなことに途中で道に再会することができた。
やっぱり「急がば回れ」か。

コイパサ村までの残りの道も果てしなく遠かった。
距離にしたら残りたった30kmくらいだったけれども、気が遠くなるほど遠く感じた。
塩が近いからか、それとも標高がだいぶ低くなってきたからか(といっても標高3700mほど)、暑くて仕方がないし、めり込む砂道は恐ろしく体力を奪う。

やっとの思いでコイパサ村に辿り着いた。
お腹がペコペコだったけれど、村には食堂はなかった。
それでも小さな商店が2軒あって、野菜やバナナ、卵や缶詰などが買えて、しばらく野菜やフルーツに飢えていたのでトマトや玉ねぎ、卵をたっぷり買って久々に食事らしい食事を作ることができた。
それに今日は商店のおばちゃんが一室あてがってくれて、8日ぶりに室内で寝ることができた。
いつもは夕暮れとともに強制的に就寝なのだけれども、電気があるとなんやかんやで夜更かし。
外では風がビュービューと大きな音を立てていて、「家の中って幸せ!」って感謝する。


リャマさんたちとご対面。彼らの間抜けな行動を見てると疲れもふっとんじゃう。

本日のお宿はトイレ無し。
「おばちゃん、トイレはどこ?」って聞いたら「あっちのほうよ、あっち」って言うもんだから、「????」という顔をしていたら、「何処でもいいから、あっちの方」と少し照れながら言う。
よくよく近所の家々を見てみても確かにトイレらしき場所がない。
まさかこの村にはトイレがないのか?!
さっきも子供たちが広場で堂々とおしっこをしていたしなぁ。

困ったのは翌朝。
マイトイレ場探しの旅に出たものの、村の端っこに近づくにつれてフラフラっと人が物陰から出てきたり、しゃがんでいたりする姿が見えたりで、なかなか場所が見つからない。
どうやら村人はこうやって毎日用を足しているようで、各々バッティングしないように距離を取り合いながら場所取りをしている。

この村の住人が何人いるのかは正確には知らないけれども、少なくとも数百人はいる村でトイレがないというのはどうしたものか。
恐らく想像するに、コイパサ村は塩湖の上にある土地のためにトイレを掘ることができないのではないかと思う。非常に乾燥した土地とはいえ衛生的にも大きな問題になっているはずだ。
トイレ探しをしながら、生きている以上出してしまう自分の排泄物について深く考えてしまった。
いつもはレバーを押せば水が綺麗に目の前から消してくれているけれども、ものすごいエネルギーと労力で処理されていることを忘れてはならない。


この辺りに生息しているウサギのようなビスカチャ。愛らしいポーズに癒される。

コイパサ村では汚物に加えゴミもそこらここらに散乱していて、真っ白な塩湖を目の前に砂地に生える植物にはビニール袋がヒラヒラとひっかかりイソギンチャクのように踊っていた。
思わず目をそむけたくなる光景なのだけれども、無責任度的には「ゴミはゴミ箱へ」の私たちとそう変わらない。
私だってゴミはちゃんとまとめてゴミ箱へ出すけれども、その先は「税金払ってますから、よろしく。」で、どう処理されているとか、どう環境に影響しているかだとか考えすらしない。
目の前がひどいことになっていないだけで、私たちがゴミを出すことで地球のどこかが同じように目をそむけたくなるようなショッキングな光景になっていることは間違いない。

少し暗い気持ちでコイパサの村を出発した。
今日はいよいよ約40km塩湖上を走る。
無事走り抜けられるのか。
cross our fingers!


© yokoandhiro All rights Reserved. | 管理者ページ