Dec,09,2011

「ヨーロッパなんて走ってる場合じゃないよー」
って思わず叫んでしまった。
ヨーロッパだって凄いんだけど、
でも、でも、ここはもっと凄い。
パッキパキに澄んだ空気に碧い碧い空、遠く彼方まで色とりどりの山々が見える。
時折動くものと言えばふわふわの毛に身を包んだビクーニャだったり、活動中の火山がせっせと出している煙だったりで、自転車を停めるとキーンという無音に包まれる。
深呼吸をして、大きな大地をハグしたくなる。
そしてまた叫ぶ、
「ヨーロッパなんて走ってる場合じゃないよー」って。

ひろが大きく頷く。
「来夏のヨーロッパやめちゃおうか」
と言ってニヤっと笑った。
あはは、それもありかもね。

ペルーの山岳地帯の道も幸せな道だったけれども、
ここチリのラウカ国立公園周辺の道は、圧倒的で静かな大自然に優しく抱擁されているようで、毎日幸せエキスが体中を巡って免疫力が相当高い状態が続いた。
世界中の素晴らしいところにこの3年間訪れ続けているのに、まだまだ地球は隠しネタをたくさん持っていることに感心する。ここはパタゴニアともパミール高原ともノルウェーともまた違った、凄いスケールの大自然エリアで、さらに魅力的なことに素晴らしい温泉の数々がある。


ビクーニャは近づくとさささと走って逃げてしまうのだけど、リャマやアルパカたちとは違って優雅に逃げていく

久々にルート上に村がほとんどなく、人と出会わない、物が買えないというところを走れたのもまた自転車旅ならではの良さがあって良かった。
ラパスで約10日分の食糧を用意した。水もたくさん積まなくてはならないから食糧はできるだけ軽量化し、最低限のエネルギー摂取に抑えた。毎日質素な同じ物を食べる。スパイス類でなんとか少しずつ味に変化を持たせるけれども、基本的にはエサ。毎晩4分の一の玉ねぎをご飯に混ぜるのがちょっとした幸せ。たったの4分の一でもフレッシュな野菜が入るだけでエサから料理になる。


そーっと近づいているつもりだけれどもあっという間に逃げられてしまう。当たり前だけれども野生動物は敏感だ。

不思議なものでこういう不自由な食生活をしているときのほうが幸せを感じることが多い。
4分の一の玉ねぎもしかり、特別に買っておいたヌテラ(チョコレートクリーム)をクラッカーにつけて食べるときだったり、とっておきのホットチョコレートをいつ飲もうかと考えているときだとか、それをじっくり味わいながら飲んでいるときだとか、一日一回エスプレッソマシーンで入れる美味しいコーヒーを飲んでいるときだとか、そのお供に貴重なクッキーを一枚食べるときだとか、
「うーん、幸せ」って強く思う。


道は悪いのだけれども、素晴らしい景色に笑顔が絶えない。

それに、何よりのサラウンディング。
氷点下の夜から朝日が昇ってぐーんと気温が上がって力強い光で体が温まって、
よーし活動するぞと自転車にまたがったら、どーんと大自然に抱擁されて心が満たされて、
空が静かにピンク、水色、紫に染まっていくのをゆっくり楽しんで、
温かい寝袋にくるまって眠りにおちる。
プラス温泉!!

南米に戻ってきてよかったと改めて思うのです。


地図にも載っていないような道だったけれども、迷いようがないはっきりとした道だった。


ボリビアとチリの国境。といっても枯れ木が立ってるだけなんですけど、、


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