Dec,06,2011

ラパスからは100kmほど退屈な高速道路を走らないといけない区間があるので、ここはバスでワープ。
2時間のバス移動が一人150円+自転車代100円という格安値段で可能なのだから、気をつけないと癖になりそうだ。
Patacamayaという町で下車した後は、約200km先のチリを目指して西へ、西へ。


はるか遠くに見えるサハマ山。走れば知るほど近付いてくるのでテンションは上がりまくり。

この道はチリのアリカという大きな港町に続く国際道路なので、素晴らしい状態の舗装路が続いていてとても快適だ。
そしてチリ国境付近にはボリビア最高峰、標高6542mのサハマ山(Sajama)が聳えている。
最初は遠くにぽつんと見えているだけなのだけど、走れば走るほどその雄大な姿がどんどん大きく、よりかっこよく見えてくるので、頑張って自転車を走らせる甲斐がある。
さらにはチリ側のパリナコタ山(Parinacota。標高6350m)とポメラペ山(Pomerape。標高6240m)も双子のように寄り添った美しい姿をどどんと見せてくれるし、赤い岩肌が美しい景観を作り出している場所もあったりして、走っていてとても気持ちがいいルートだ。


どんどん近付くサハマ山。単独峰ってかっこいい。


不格好な動物って不思議と癒される。

また、この辺りではリャマやアルパカの群れにとても多く遭遇するのも嬉しい。
リャマやアルパカは本当にかわいい。
僕らに気がつくと一斉に長い首をあげてヌボーとこちらを見る姿、そのくせ僕らが近づいてもなかなか逃げようとしない間抜けさ、長い首と短い脚で一生懸命走る姿、座っている時のアンバランスなシルエット、その存在そのものがなごみ系・いやし系だ。
まじまじと見ると実はあまり可愛い顔はしていないのだけど、とにかくその愛嬌の塊のような存在に、ほっこりと心が和む。

そして久しぶりに野宿をした。
毎日のように野宿をしているチャリダーもたくさんいるけど、僕らはできるだけ宿があれば宿に泊るし、村があれば村に、家があれば家のそばにテントを張るようにしている。
だから何もない所に隠れてテントを張るのはパタゴニア以来約10か月ぶりで、とても新鮮だ。
道路から外れて砂地に入り、完全に見えなくなるまで奥まで行ってそこでテントを張る。
夜になり風が収まった後は、キーンという音のない音がするだけの、静かで平和な夜が待っていた。
3年も旅をしていて今更なんだけど、なんか自転車旅をしているって感じだなあ。


秘密のキャンプ場所。音のない世界。

順調に自転車を走らせて、標高4700mの峠を越えれば、そこはもうチリだ。
ルート的にはチリに入ってすぐに南下を開始するのだけど、その前に少しだけ寄り道をして、チュンガラ湖という美しい湖のほとりにあるキャンプサイトにテントを張ることにした。
今まで見たことがないくらい赤い色をしたフラミンゴが、標高約4500mの真っ青な湖面によく映える。
そして湖の背後にそびえるパリナコタ山がすぐ間近に、昨日のうちに通り越したサハマ山が遠くに控え、それらが静かに湖面に映し出されいる。
ううん、素晴らしい湖だ。


チュンガラ湖からは双子山のうちポメラペ山は背後に隠れ、パリナコタ山だけが見える。

でもこの湖の最高の瞬間は、夕暮れ時だった。
チリのアリカから日帰りでこの湖を訪れる弾丸ツアー客もチラホラいたけれど、この湖の夕暮れを見ずに帰ってしまうなんて勿体なさすぎる。
僕ら二人だけしかいない静かな湖畔。日が沈むにつれて刻々と変わる空の色。淡い青、赤、ピンク、紫のグラデーション。標高が高いところでは夕暮れのゴールデンアワーが長いので、いつまでもその美しさを堪能でいるのがうれしい。
あの可憐で繊細な色をうまく言葉で表現できる人なんているんだろうか。
どこまでも美しい時間が、静かに、静かに流れていた。


チュンガラ湖の夕暮れ。静かで優しい時間

ここまではこの先の未舗装区間に入る前の足慣し程度に考えていたのに、しょっぱなからこんなに素敵だなんて。このルートを選んだことに幸せを感じながら、今日も音のない静かな夜の中、温かい気持ちで眠りについた。


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