自転車でこのルートを通った人々が「今までで一番つらかった道」だとか、
「精神的に強くたくましくなれた自分を誇りに思う」だとか、
「自分の限界に挑戦した」だとかいう道をとうとう走りきった。
もちろん英語っていうのは日本語に比べてちょっとオーバーな表現が多いけれども、
それでもこれだけ標高差のある峠を何度も登ったり下ったりする道は世界広しといえども後にも先にもここしかないのではないだろうか。
まさに自分で移動するジェットコースターのような道。しかも半分以上が未舗装路(数年前までは全部が未舗装路)。
3時間前は後の山のてっぺんくらいのところにいたり。一日後には後の山より高いところにいたり。山を越え、谷を越え♪
きっと少し前までの私だったらこの道を通ることを断固反対していたと思う。
だけど今回は自分でも不思議なほどワクワクした。それにゆっくりかもしれないけど、私にだって走りきれる、そんな自信もあった。
体力がついたというよりは精神的に強くなった。
そんな自分が嬉しい。
へなちょこだった10年前のチベット走行をこのごろ思い出す。
辛くてよく泣いた。なんで自転車でこんなところ走ってるんだってひろに当たったりもしてた。ヒッチハイクしたいってよく地団駄踏んでた。
今回は一度だって泣いてない。一度も辛いからとヒッチハイクをしたいと思ったこともない。
それよりも自転車旅がくれる幸せに感謝することのほうが多い。
旅に出て3年が経ったけれども、自転車旅に飽きることはない。
ジェットコースタールートは確かに凄かった。
2400mから4100mに登って指がちぎれそうなくらい寒い思いをしたかと思ったら1700mくらいまで一気に下って汗だくになって、そしてまた4000m台の峠に取りつく。2日かかって4000m台の峠を登り切って、そしたらまた一気に2000mまで下ってと、標高差2000m以上の峠が5個続いた。
書いてみるとあっさりだけれども、標高2000m分登るのも大変だけど、意外と2000m分下るのも大変。しかも未舗装でガタガタの下りは登りよりも大変。山登りも一緒だけど、下る度に自分の登った量に驚く。どれだけ下るんだー?
雨の後のドロドロ道。泥が詰まって全然進めなくて困った。3時間で10km。歩いた方が早くない?
リマを出て23日。走行距離1120km。登った標高は富士山の約5回分(1万8000m!)。
マチュピチュ観光基点の街クスコに入場したときは思っていた以上に感動した。
しかもクスコを見下ろすように下って入っていくというのがドラマチック。
まずたかが30万人の都市だけれども、その大きさにびっくりし、人々の洗練度、建物や商店の洗練度に目を見張り、そして外国人観光客の多さにも驚いた。
今までは私たちが通る度に「グリンゴ!(日本語で言うガイジンという意味)」「チーニータ!(中国人という意味だけどアジア系全般に使う)」と叫ばれたけど、クスコに入ってしばらくは思わず外国人旅行者を見ては「うわー、外国人だ!」って思ってしまったり。
クスコは10年ぶり2回目なので、今回は都会を満喫してノンビリするのみ。
50km先の街が見えてくる。一度標高1000m分下がってまた同じだけ登ったところにある。空を飛べたらすぐなのに。
ともあれ、このジェットコースターのようなルートは思っていたより大変ではなかった。
これはひとえにペルーの上り坂の傾斜がとても緩くて登りやすいこと、道中に村々が点在し、沢山の嬉しい温かい声援をもらえたこと、美味しくてボリュームがある食事に困らなかったことのおかげだったと思う。
道はエクストリームだったわりには景色的に一生忘れられない絶景というようなものはなかった。
それでも、この道はペルー人の温かくて、のどかな日常生活を垣間見れる素敵なルートで、毎日走っていて幸せな気分になった。
幸せのジェットコースター。
このジェットコースターを楽しめるようになった自分の成長にも乾杯したい。
対岸に舗装路のクスコへのメインルートが見えてきた!もうすぐ合流。舗装路様と拝みたくなった。
都会って住んでると息苦しいとか思うけど、無性に恋しくもなるもんで、都会に来るとやっぱりテンションがあがるのです。