ヨーロッパのキャンプ場にはがっかりする。
何がひどいかといえば、とにかくキャンピングカーだらけで夏フェス並に混んでいるのだ。
ヨーロッパに来る前は、日本のキャンプ場ほど混み合って醜い場所はないんじゃないかと思っていたけど、ヨーロッパのキャンプ場も同じくらいひどい。
どこの国のキャンプ場でも巨大なキャンピングカーが所狭しと並んで駐車場みたいな有様だ。
そしてみんなキャンピングカーの横に巨大なビニールハウス(のようなテント)を張り、その中にはテーブルセットにテレビにガスコンロに冷蔵庫、犬を連れて来ていたり、自分の鉢植えの植物まで持ってきて、ワイングラスを片手にソファに座っているのだから、僕らの考える“キャンプ”の概念をはるかに超えている。
僕らは森に囲まれたワイルドで静かなキャンプ場が好きなので、駐車場状態の見苦しいキャンプ場には文句ばかりを言っている。
それでもトイレもホットシャワーも流し台もあって、やっぱり野宿よりも快適で安全だし、なによりホテルやホステルに比べて圧倒的に安い。
特にアルプスでは荷物を置いてハイキングに出かけることが多いので、どうしても野宿という訳にはいかず、文句を垂れつつもキャンプ場にお世話になりっぱなしだ。
6月、まだまだハイシーズン前のノルウェーのキャンプ場。広い敷地にテントは私たちだけだった。このときはノルウェーのキャンプ場はひどいと思っていたけど、今思えば車間に余裕もあるし最悪ではなかった。
でもドロミティ・アルプスでは、キャンプ場にチェックインするたびにイライラが募っていった。
混んでいるのはいつものことなので我慢できるけど、とにかく法外な値段設定なのだ。
ハイシーズン価格というのもあって、キャンプ場なのに二人で30ユーロ前後する。
30ユーロといえば、ユーロ安の今でも3500円、一昔前なら5000円を余裕で超える値段だ。
ちなみにWIFI使用料は1時間6ユーロ。いやいや、世界で一番高いですから。
だってテント暮らしだ。
2畳ほどのささやかなスペースで、自力で運んできたテントとマットと寝袋を使い、シャワーを浴びている間にトイレでこっそりと充電させてもらい、ヘッドランプの明かりで夕飯を食べ、晴れれば暑さで食べ物が腐らないように気を使い、雨が降れば水漏れと闘う、あのテント暮らしだ。
それが一晩30ユーロもかかるってどういうことだ。
トイレにBGMなんて流さなくていいから、噴水なんてなくていいから、もう少し安くしてもらえないのだろうか。
しかもこじんまりしたテントの僕らと、巨大ビニールハウスで暮すキャンパーが同じ値段設定なことが多いのも、イライラをさらに募らせる。
自分で好んで自転車&小さなテントで旅をしているとはいえ、こっちは2畳、あっちは20畳。
ほんの数ユーロでいいから区別してほしいのですけど。
キャンピングカーの展示場か?ここは。周りの景色は美しいのに勿体無い。ちなみにこれもまだローシーズン。
ドロミティ最終日、ハイキングルートに少しでも近いキャンプ場に泊まろうと、少し本ルートから外れたキャンプ場に泊ることにした。
遠まわりするのは片道10kmほどだったのだけど、本ルートから外れた瞬間に見事な上り坂、というか峠道が始まった。
1時間半かけて600mくらい登り、汗だくをダラダラかいて辿りついたキャンプ場の看板には、星が5つほど付いていた。
そしてレセプションでは大理石のカウンターに制服を着たお姉さんが座っている。
とっても嫌な予感がしたけど、苦労して登ってきたのを無駄にしたくはない。
少しくらい高くても我慢しようと二人で話し合い、恐る恐る、“一泊おいくらでございますか?”と尋ねたら、“フォーティー(40)”という衝撃の答えが返ってきた。
僕は“え、フォーティーン(14)じゃなくて?”と思わず聞き直し、ようこは日本語で“あり得ない!”と叫んでいた。
今の為替レートでも4500円、数年前なら7000円。
キャンプですよ、キャ・ン・プ。
なんて横暴な値段設定だ。
二人して言葉を失って放心状態でレセプションを去り、黙って自転車に乗り込み、やるせない気持ちで元来た道を下り始めた。
ついでに雨まで降ってきて、気分は最悪だ。
結局そこから20km余計に漕いで到着したキャンプ場は、長方形の狭苦しい区画が27ユーロ。
うう、なんだかむなしい。
こんなにすばらしいドロミティの自然をもっとゆっくり満喫したいのに、どうしても財布から聞こえる悲痛な叫びが気になって駆け抜けざるを得ないのが残念だ。
熱々のお湯も出るビューティフルなキッチン。でもここまでいらないから安くして!
日本のアパートより広くて快適そう。でも見かけは醜いキャラバンカー&テラス。
でもきっとあと少し。あと少しで夏休みのハイシーズンも終わる。
夏休みが終わればもっと静かで、もっとリーズナブルなキャンプ場が現れるに違いない。
頼むから現れてください!
ローシーズンのデンマークのキャンプ場。これだけ隣と距離を取れるキャンプ場は珍しい。
アルプスは確かに素晴らしい場所にキャンプ場があるのだけど、キャンプ場とは思えない値段設定に涙涙の日々。一人だと更に割高。