Aug,27,2011

ドロミティ・アルプスはアップダウンが続いて大変だけど、人の手がうまいこと入った広大な箱庭という感じの谷と、自然が作り上げた荒々しくも美しいドロミティの岩山が見事にマッチしていて、どの峠もどの谷も本当に美しかった。
なかでも、最高だったのがガルデーナ峠(Passo di Gardena)だ。
今まで何十もの峠を越えてきたけれど、こんなに登り甲斐のある峠はないんじゃないかというくらい、ものすごく美しい峠だった。

自転車が盛んなイタリアでは、車よりもすれ違う回数が多いくらい峠を攻めているロードレーサーが多い。
みんな荷物も持たず、派手なレーサーシャツ&パンツでばっちり決め込んで、700ccの細いタイヤで、僕らの何倍ものスピードで登って行く。
僕らみたいなフルパッキングで太いタイヤを履いた自転車は全くいないので、すれ違いざまにブラボー!と励まされたり、ちょっぴり苦笑いの呆れ顔をされたり。

峠を登るのは好きだ。
一番軽いギアでペダルをくるくる回し、歩いた方が速いくらいのスピードでちびちびと登って行く。
始めは辛いとか暑いとか、この先の予定をどうしようとか今晩何食べようとか色々考えるのだけど、ペースをつかんでくるとだんだん雑念が消えて無心になっていく。
こうやって一瞬でも無心になれる時間を持てると、その日は頭がすっきりしてとても気持ちがいい。

たまに後ろを振り向くと、今通ってきた道が遥か下の方に見えて、気がついたらこんな高い所まで来たんだと、なんだか無性に感激する。
そして無になった心の中に、峠の素晴らしい風景がドカンと入り込んでくる。
自分の汗臭さも体の疲れも忘れて、心が幸せでいっぱいになる瞬間だ。

ガルデーナ峠は、ドロミティの岩山が右にも左にも広がっていて、圧倒的に素晴らしい風景だった。
進めば進むほど、岩山がより近く、より大きく、より格好良く見えてくるので、まだまだもっと登っていたいと思ってしまうほどだ。
途中、絶景ポイントにあるレストランでジェラート休憩をはさむ。
ハイシーズンのドロミティは理不尽なほど物価が高いのに、ついつい自分たちへのご褒美にとビールやアイスを買ってしまうので、ますます出費がかさんでいくのが困りものだ。

そして幸せいっぱいで辿りついた峠の頂上。
峠の手前の風景でも大満足だったというのに、峠の反対側の景色の素晴らしさに思わず大きなため息が出た。
なんてすばらしい峠なんだ。

そして峠を登りきったご褒美は、快適な下り坂。
何時間もかかって登ってきた峠を、今晩は和風パスタでも食べようかなんて頭の中を煩悩で満たしながら、あっという間に下って行く。
ああ、今日も幸せだ。


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