May,17,2011

バリ島の空港から直行したのは、バリの有名観光地ウブド。
ホテルやレストランや土産物屋が乱立し、道を歩けば日本語で話しかけられる、筋金入りの観光地。
でもこれだけのスーパー観光地なのに、嫌な感じじゃないどころかすぐに大好きになれたのは、きっとバリの人たちがみんな穏やかな笑顔だったからだろうか。

アジアの笑顔は特別だ。
子どもたちは僕らと目が合うと、顔をくしゃくしゃにして笑ってくれたり、うれし恥ずかしの照れ笑いを浮かべながら手を振ってくれたり。
宿を探して回っている時も、散々見せてもらって結局断ったとしても、誰一人いやな顔をせずにっこり笑って送り出してくれる。
道で会う人達は、老いも若きも、男性も女性も、すれ違いざまににっこり笑って挨拶をかけてくれる。
観光地で観光客相手に生計を立てているのに、大多数の人たちがこんなに自然な笑顔のままでいられるなんて、きっとこの穏やかさが本来のバリっ子の気質なんだろう。
東南アジアの笑顔に会うと自然に自分も笑顔になるし、ああ帰ってきたんだなあと強く感じる。

帰ってきたといえば、約1年ぶりに帰った東京では、店員さんたちの親切・丁寧・笑顔の接客にとにかく驚いた。
店員さんに在庫を尋ねたら、安価な商品にも関わらず、一生懸命検索してくれただけじゃなくてわざわざ違うフロアにまで案内してくれた。
居酒屋に行けば威勢のいい歓迎の言葉が店中から響きわたり、とびきりの笑顔で礼儀正しくオーダーを取りに来る。
電気量販店でも、薬局でも、アウトドアショップでも、100円ショップでも、とにかく親切・丁寧・笑顔のオンパレードだった。

さすが日本だなあなんて感心したのだけど、その反面で、お客さんが暗い顔をしているのにも驚いた。
ぶつかっても、割り込んでも、荷物を踏んずけても、みんな謝りもせず、抗議の表情を浮かべている僕を無表情に眺めるだけ。
居酒屋の隣の席では、上司が“とにかくお前はダメだ”と意味不明な小言を繰り返し、部下が無表情で頭を下げ続けていた。
道を歩いているといろんな人がすごい勢いでぶつかってくるし、自分でぶつかっておきながら凄い剣幕でどなり散らす人までいた。

ストレスがたまっているんだろうか。
みんながそうじゃないことは分かっているし、何よりも僕らみたいにストレスもなく日々遊び回っている人に言われたくないんだろうけど、“街ですれ違うだけの名も知らぬ赤の他人”に日頃の鬱憤をぶつけて回っているように思えて、なんか淋しい気持ちになってしまった。
ショックのあまり、“世界中の大都会の中でも東京ほど抑圧された雰囲気の街はなかったなあ”とか、“あの親切・丁寧・笑顔の店員さんたちも、仕事を終えた途端に無表情になって人にぶつかりながら歩いているんだろうか”なんて考え始めてしまったほどだ。

久しぶりの日本でそんなショックを受けていたせいか、バリに来て沢山の笑顔に囲まれてホッとした。
やっぱり笑顔。
大切なものはいつだってシンプルだ。
でも、日本を離れたらホッとしたなんて、少しさみしい。


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