Mar,11,2011

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パタゴニアに強い西風が吹くことは有名だ。
これまで幾多のチャリダーがその風の凄まじさを体験し、色んな形で表現して来た。
でも、この凄さは体験してみないと分からない。

そう。ついに僕らはその凄まじい向かい風とご対面してしまったのだ。


窪みを発見してお昼休憩。何にもないルタ40は休憩場所を探すのも一苦労。

パタゴニア地方を南下するには、大きく分けて僕らの通ったチリ側のカラテラ・アウストラルを通るルートと、アルゼンチン側のルタ・クワレンタ(ルート40)を通るルートがある。
そしてルタ40は風の吹きすさぶ大草原(パンパ)をひた走るルートとして、日本人チャリダーに人気のルートだ。

何もない大平原を貫く一本の未舗装路を、地平線に向かって、パタゴニアの風に吹かれながら黙々と自転車を一人走らせる。
言葉にすると“男のロマン”って感じで悪くないんだけど、あいにく僕らはそこまでのマゾではない。
未舗装路より舗装路の方が好きだし、向かい風より追い風の方が好きだ。
パタゴニアの向かい風もできれば体験しないでやり過ごしたかったのだけど、カレテラ・アウストラルを終えてアルゼンチン側に入ったからには、どうしてもルタ40を通らなければいけない。


地平線に向かって道路が永遠に続く

これまでは追い風だったり無風だったりと、向かい風と対峙せずにやり過ごしてきたのだけど、
ついに、その日がやってきた。
そりゃあもう、その凄さといったら。
アップダウンのない平坦な舗装路なのに、一番軽いギアにしてもペダルすら漕げず、風に押されて自転車ごと転んでしまう。
強風だと思っていたものが、さらに強くなって暴風に変わり、そこから更に強くなって想像を絶する未知の世界に誘われる。
“うへえ”だったものが、“え、まじで?”に変わり、そこからはもう凄すぎて笑いが止まらない。
別に余裕ぶって笑うのではなく、笑う以外にどういうリアクションをしていいのか分からないのだ。
人間って想像を絶する出来事に遭遇すると突然笑い出してしまう生き物なのかもしれない。
時速20kmで快調に走っていたのが、やがて向かい風を受けて時速10kmになり、5kmになり、
ついに自転車を押しだしたところで、今日の走行を諦めて自転車を押し出した。


全体重をかけて自転車を押しても前に進めなかったりする。

でも走るのを諦めたといったって、目の前に見えるのはまっすぐな一本道と地平線。
風をさえぎってくれそうなものは何一つなく、そして自転車を押して歩いているのだから目の前の風景は大平原のまま全く変りようがなく、野宿場所なんてなかなか見つからない。
まさか全てを投げ出して後ろ向きに走り出す訳にもいかず、風を避けれる場所を探してひたすら前に進むしかない。
一歩一歩、踏みしめるように、風に飛ばされないように、とぼとぼと自転車を押して歩く。
そうやって風に遊ばれること数時間、何とか野宿場所を見つけた。ふう。
あとは明日の夜明け前に起きて風が吹く前に走りきるしかない。


やっとみつけた避難場所。ここは風もなく平和で静かでした。

恐るべしパタゴニアの向かい風。
これを体験するのは1日で、1時間で、いや10分で十分です。もう十分すぎるほど体験しました。
次からは追い風でお願いしますね。


風が治まる早朝をねらって夜明け前の出発。


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