Mar,05,2011

ペリト・モレノ氷河に行ったらアイストレッキングをする。
いつからそう決めていたのか自分でもよく覚えていないけど、ペリト・モレノ氷河では氷河の上を歩くんだって決め込んでいた。
嘘みたいに青い氷河、爆音で崩れ落ちる氷河。映像や写真で見たペリト・モレノ氷河は衝撃的だった。
そのインパクトが強すぎたせいか、10年前にカナダでコロンビア大氷原を見た時は正直がっかりした。
あれ、氷河ってこんなもんなんだっけ。

パタゴニアを自転車で走り始めてから、右を見れば氷河、左を見ても氷河という日々が続いて、すっかり氷河のある生活にも慣れた。
美しい青を見るといつだって心が躍るし、山からこぼれ落ちそうな氷河はいつ見てもカッコいい。
だけど、何かが違う。どこか違う。
ずっとずっとモヤモヤしていた気持ちがペリト・モレノ氷河を目の前にして、ついにすっきりした。
そうそう、こういう氷河を見てみたかったんだ。


まずは氷河の奥の方までは横に氷河を眺めながら歩く。これだけでもかなり満足。

あいにく雨で一日が始まった。
展望台から見たペリト・モレノ氷河はねずみ色のどんよりとした雲で覆われていたけれど、
蒼の迫力、鋭いシェイプ、巨大さ、どれをとっても衝撃的だった。
そして、ドーンドドーンと爆音を立てながら氷河の塊が目の前で崩れ落ちていく迫力の凄さ。
国立公園の入場料100ペソ(約2200円)にかなり引き気味だったけど、そんなこともすっかり忘れてしまうほどの大興奮だった。
しかも、これからこのさらに奥へ上陸して氷河の上を歩く。想像するだけでもワクワクしてくる。
このビッグ・アイスツアーは720ペソ(1万5000円)もして、料金的には全然ワクワクしないわけだけど、、、


蒼い隙間にすーっと吸い込まれる。

でも高額なのも仕方ない。
10人程度のグループに3人のガイドが付き、ハーネスやアイゼンを装着してのトレッキング。
私たちのような素人がプロに守ってもらいながら氷の上を歩けることを考えれば、決して高い買い物ではないのだと思う。
そしてこのツアーが高いという気持ちは、氷の上を歩き始めてからあっという間に消え去った。

クレバスの蒼さに吸い込まれそうになる。
こんな蒼、見たことない。
遠目でみる氷河の蒼もこれでもかというほど美しいのだけど、氷の上に立って覗きこむクレバスの中の、混じりけのない澄んだ蒼にすーっと魂を持っていかれる気がした。
ひとつひとつの蒼の色合いが違っていてゆっくり覗きこみたいのに、ガイドはスタスタと進んでいく。
その後ろを10人ぞろぞろと金魚のフンのようにくっついて歩くことを要求されるので、なかなかゆっくりと立ち止まれない。危ないところだから自由に動けないことは分かっているけど、やっぱりツアーってこれだから嫌だよなぁ、とブゥブゥとつぶやく。
「そんなに遠くまで行かなくていいから、ゆっくり見させてよ!!」と思っていたのだけど、
ドンドン先に進んでいくにつれて、より美しい氷河の上に自分たちが立っていることに気が付いた。


こんな蒼は初めて見た。

周りの氷河の色も、クレバスからのぞく澄んだ蒼も益々美しくなってきた。
そして眩しいくらいに強い日差しが照りつけてきて、ぐんぐんと青空が広がってきた。
もはやガイドが何を言おうと、ツアー客の誰もがそれぞれのお気に入りの蒼をじっくり覗きこんでいたり、ポーズを決めて記念写真を撮っていたり、みんながバラバラに散っている。
ガイドももはや急かしてきたりはしない。


皆思い思いに氷の上を楽しみ始める。ひろはすっかり隙間に吸い込まれている様子。

この氷河トレックは森の中を往復1時間半、氷の上だけでも4時間近く歩くツアーだ。
最初は氷の上にそんなに長くいて飽きてしまわないかと思ったのだけど、氷河の上は変化に富んでいて楽しくて仕方がなかった。
慣れないアイゼンによる足の疲れだけが、時間が経っていることを感じさせた。


ひろが吸い込まれていた隙間。

なんて贅沢な時間だったのだろう。
大自然に囲まれたというより、近代美術館へ行って沢山の芸術作に刺激されたような、そんな感覚だった。
蒼をテーマにしたアートを、トータルコーディネイトされた空間で楽しんだ気分。
値段が高くて敬遠されがちなビッグ・アイスツアーだけど、間違いなくいい買い物をしたと思う。


お天気じゃなくても綺麗だったけど、やっぱり晴れたらもっと綺麗だった!!


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